健介が犬の保護施設であるワンワンランドに捨て犬シロを

連れてきて、すぐスタッフの、かおりとみなみに、水とエサをやるように

指示をして収容中の犬を見て回った。

みんな元気そうにしっぽを振って出迎えてくれた。

その内の何匹かを広場に出して、ボール投げや、追いかけっこを

して遊んでやると、みんな嬉々としてついてきた。

健介の至福のひと時である。

この前までしょんぼりしていた、柴犬のタローくんも今日は元気に

仲間たちと本当に楽しげに遊んでいた。

タロー君も3か月前に、捨てられて、保険所で殺処分寸前にここの

施設に来たのだった。

当初、スタッフにも懐かずに、エサも食べず、やせこけてみるからに

哀れな様子だったけれど、かおりの献身的な介護と、愛情で

みるみる体もふっくらして、性格も明るくなっていった。

そのような改善された犬たちを見るのが健介の何よりの

楽しみであり、幸せな気分にさせられる瞬間でもあった。

ビーグルのビリーは、独特の甲高い声で一日中吠えて

近所からの苦情で飼い主が飼えなくなり、当所に身を寄せているが

しつけを施して、思う存分ドッグランを走らせることにより

ストレスがなくなり、ほとんど鳴くこともなくのんびり一日を

過ごしている。

飼い犬のほとんどの問題行動が飼い主の飼い方にあることを

もっともっと知ってほしいと健介は、地元のTVに出演したり、

カルチャー教室の講師をしながら、訴え続けたが

今日に至るも、中々捨て犬は後を絶たない現状である。

健介が犬たちと戯れているとき、青い顔をして、かおるとみなみが

飛んできた。

「所長!! 大変です。」

「シロが逃げ出しておりません。」

健介が急いで犬舎に戻ってみると、扉を壊してシロが脱出していたのだ。

水もエサも食べずに。

みんなで手分けして、必死で探しまわったが、シロの姿は

見つかりませんでした。

夕暮れになり、暗くなってきたので、その日の捜索はいったん

打ち切り、明日は少し範囲を広げて探すことにした。

                          つづく。