2016.9.3
殺処分を減らすためには、蛇口を締める活動(引き取り数の削減)と漏れないように受け止める活動(譲渡の促進)の両立が大事――沖縄県動物愛護管理センター取材記事の後編は、譲渡数を増やすための取り組みを紹介します。
サイトリニューアルで情報発信を強化
前編でも紹介した通り、今回の取材では同センターで主任技師を務める獣医師の宮城 国太郎先生にお話を伺いました。譲渡数を増やす取り組みの一つとして宮城先生が力を入れていたことの一つが、沖縄県動物愛護管理センターのサイトリニューアルです。
昨年11月のリニューアルでは、特に「情報量」と「更新性」が改善されました。センターに動物が収容されると、収容場所や毛色、体格などの情報とともに、見た目がすぐに分かる写真が当日中に掲載されます。センターからだけでなく、一般の方も行方不明になったペットや保護した動物の情報を投稿することができます。
以前はもっと簡素な作りだった上に、保護動物の数が多すぎて手が回らず、写真を掲載できないこともありました。しかしリニューアル後は、写真を見た飼い主が行方不明の動物を見つけることができたり、保護された動物を見て「昔飼っていた子に似ているから引き取りたい」と保護につながったりする事例が出ているそうです。
大事なのは、一緒に暮らすイメージができるか
施設として特徴的だったのは、いかに保護された動物たちがリラックスできるかというアニマル・ウェルフェアの観点が重視されている点です。檻やケージに入れる際は、動物同士でケンカが起きないよう1匹ずつ収容したり、妊娠した猫がいれば子どもが生まれた時のことを考え、床に金属など冷たい素材が使われていないケージに入れるようにしています。
引き取られたばかりの動物が収容されるフロアに、クラシック音楽が流れているのも印象的でした。もっとも、殺処分が行われるのも同じフロアで、殺処分される動物たちへの配慮でもあります。
収容された動物たちに名前を付ける工夫をしています。これは、「○○ちゃん体調悪いみたい」と職員同士が愛情を持って接するきっかけづくりにもしているそうです。宮城先生は、「ちょっとした工夫が、とても重要なんです」と話します。
おびえていたり元気がなかったりするより、人に慣れていて元気にしているほうが譲渡されやすくなるのです。犬たちは建物の外にあるドッグランで遊び、猫たちはケージから出て広いスペースで動き回ることができます。引き取りを考えて訪れた人たちが一緒に暮らしているイメージをしやすくなるような工夫が随所に見られました。
動物福祉の観点で、一人ひとり何ができるか
取材をする中で意外に思ったのは、想像より収容数が多くなかったということ。以前に比べれば収容数は減っており、余裕ができたことで譲渡のチャンスも増えています。例えば、以前はサイトでの掲載期限を過ぎて5日がたつと殺処分となっていましたが、今はできる限り掲載期限を延ばして掲載しているそうです(※掲載期限が来たからといってすぐに殺処分されるわけではありません)。
足を悪くした猫も以前なら殺処分の対象になっていたところですが、人に慣れ、骨折しているわけでもなくリハビリすれば治る可能性があるということで収容が続けられていました。目が悪い犬(瞳が緑色っぽいので「みどり」と名付けられていました)もいましたが、性格が良いから譲渡される可能性があると収容が続けられていました。
宮城先生は最後に、建物の外にある殺処分された動物たちの慰霊碑「獣魂碑」を案内してくれました。センターには学生など見学に訪れる人たちもおり、一人ひとりに慰霊碑の近くに咲いている花を摘み、碑に添えることで、自ら考える機会にしてもらっているそうです。
殺処分を減らすためには譲渡を増やすだけではなく、収容される数を減らさなければいけません。見学に訪れた人たちもそれを知り、いますぐできることとして、動物病院に連れて行く機会を増やすことや首輪(迷子札)を付けることを実践したり、それを身近な人に教えたりすると話してくれるそうです。
「保護だけではありません。一人ひとりにできることがあるんです」(宮城先生)