「かーぁごーめーかーぁごーぉめーぇ かーぁごのなーぁかのとーぉりーぃはーぁ いーつぅいーつぅでーぇやーぁるーぅ」
童歌が聞こえてくる。
子どもたちが両手を広げて繋ぎ合い、大きな輪を作っている。
「よーぉあーけーぇのーぉばーぁんーにーぃ つーぅるとかーぁめがすーぅべったーぁ」
ゆっくりと歩きながら、円が回る。
その中央に、ぽつんとある、銀色の塊。
子どもが一人、地面にしゃがみこんでいた。
細い腕が両膝を抱え、顔を伏せて蹲っている。
「うしろのしょーぉめんだーぁれーぇ」
くるくると回っていた籠がピタリ、と止まった。
子ども達は、繋いだ手を放し、中央に向けていた視線を、その真後に立つ子どもへと移す。
その隣に立つ子どもが、側に落ちていた木の枝を拾い、手渡した。
子どもの手には余るほどの大きな棒。
皆の視線を一身に浴びて、握った棒を大きく振りかざす。
すると、それまで身動きひとつとしてしなかった銀色の塊が、突如、ビクンッと跳ね上がった。
背後に棒を構えられた瞬間に、中央にしゃがんでいた子どもが駆け出した。
「あっ!逃げたぞっ!」
「シュウジンが逃げたー!追えー!逃がすなー!」
「オヤクニンサマの後に続けー!シュウジンを逃がすなー」
突然の事に驚き、1テンポ遅れてから、子どもたちが口々に叫ぶ。
逃げ出した子どもを追って、棒を掲げ持つ子どもの後に続いて一斉に駆け出した。
先頭を走る銀色の塊。
ぼろぼろの小さな着物から伸びる細い手足。
地を駆ける足は何も履いていない。
裸足は土に汚れ、小石によって傷付けられる。
それでも、子どもは走り続ける。
泥にまみれながらも隠しきれない、雪の様に白い肌。
その上に落ちる白銀の髪。
誰もが黒髪に太陽に焼けた褐色の肌という似通った容姿の中で、
唯一人だけ、異彩を放っていた。