「君のそばにいられたら」が最終章に突入しました。多分、予定では20話くらいで終るはずです。
と言っても計画通りいったためしがないのですが・・・。
ある方のコメントで「ユノの病室が610号というのが受けた」といただきまして・・・
実は書いている本人はまったく意識していなくて、ただ、605号とかパッとしないし、
落ち着きのいい数字が610号だっただけなのですが・・・
完全に刷り込まれていましたね。何気に選んでしまう「610」。
自分でびっくりしました。素敵なご指摘ありがとうございました。
この間JYJのコンサートに行く道すがら、ご一緒したmさんとお話していて、「正直ネタ切れです。」と
愚痴っていました。それに「君知る」が重すぎたのか、なかなか思考の転換ができないです。
だから次に書くとしたら、別に書いていた話を5人トン用にリメイクするかも・・・と話しました。
今日、その話を引っ張り出してきてリメイク作業をしてみました。
とりあえずいけそうかな・・・って言う感じです。どう思われますか?
登場人物はまだ誰がどんなキャラか、JJ以外はわからないと思いますが・・・。
今まで一番大人な(変な意味じゃないですよ、精神年齢とか年齢設定と言う意味です)話かも・・・。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「優しき隣人~君と僕の居場所~」
湿気を帯びた重たい空気が肌にまとわりつく。
南国特有の密度が濃くて、花の香りや香辛料などが入り混じった匂いの空気とでもいうのだろうか。
ジエジュンはもう少しで眠りに落ちていきそうだったが、むせ返るような息苦しさと不快さに引き戻された。
どれくらいたったのだろう、プールサイドの寝椅子は日光浴を楽しんでいた欧米人らしき人たちでいっぱいだったのに、今はその姿もまばらだった。
水平線の上には、灰色がかった雲が急速に広がりながら近づいていて、スコールとなることを知らせている。滞在二週目ともなると、スコールを何度も体験し、今では驚くこともなかった。
ジェジュンは、ひと雨降る前に軽く泳いで部屋に引き上げようと、寝椅子から起き上がりサングラスを外そうとした。その時、不意に後ろから押され、何ら抵抗を試みる間もなく次の瞬間はプールの中へ上半身から落ちていた。
何が起きたのか理解できぬまま、水中で体勢を立て直し、プールサイドを見上げると、濡れた髪の間からさし出された手が見えた。ジエジュンはその手を無視し、大きく息を吸って再び水中に体を沈めると、クロールで二、三かき泳ぎ、体を回転させて背泳ぎでゆっくりと反対側のプールサイドに向かって進み始めた。
そんなジエジュンを追いかけるように、水音がしたかと思うと、誰かがこちらに一直線に近づいてきてやがて並んだ。男は大きくゆっくり腕をかきながら、しかし余裕を感じさせるクロールで近づいてきた。
そして、背泳ぎに変えるとジエジュンの方を見遣りながら、「大丈夫?」と尋ねた。
「わざとじゃなかったんだ。電話をしていて後ろに誰かいたことに気づかなかった。申し訳ない。」
初対面の人間に対し謝っている割には、人なつこく、どこか甘えたような喋り方で、少し鼻についた。
ジエジュンが黙っていると男はジエジュンの泳ぐスピードに合わせながら様子を伺っていた。
「気にしていないから・・・。」
それは本当だった。そして、体を180度回転させると、クロールでプールサイドまで一気に泳ぎ、プールサイドに頭を置いて両手を広げ、目を閉じて体を水に任せた。体に伝わる水の大らかな揺れが心地良かったが、その心地良さもそう長くは続かなかった。
やがて頭上の空が夕暮れを迎えたように暗くなり、大粒の雨がぽつぽつと顔に落ち始めたかと思うと、水面をバチバチと打ち付けるほどの激しい雨に変わった。
ジエジュンが周囲から聞こえてくる悲鳴の混じったざわめきを無視していると、
「避難しないの?みんな中へ入っていくよ。」
と男は言った。
男は、顔にかかる雨を拭いながら正面からジエジュンに近づいて来た。
短目に切り揃えられた髪、少し日に焼けた肌、目鼻立ちのはっきりとした精悍な感じの男は二十代後半位に見えた。
「すぐに行ってしまうでしょう。それに水の中にいれば同じだから。」
ジエジュンは気のない返事で男の関心をそぐ。
「じゃあ、僕もつき合おうか。」
「ご親切にどうも。でも結構です。」
ジエジュンがそう言い終わる前に、男は隣に来て同じようにプールサイドに頭をもたれかけていた。
「ねえ、一人?」
数年来の付き合いのある友達に話しかけるように男は言った。
「ええ。」
「リゾートホテルに一人で珍しいですね。家族連れかカップルであればわかるけれど。」
「君に関係ないだろう。」
ついついつっけんどんになる。
「バカンス?それとも仕事?」
男は、体を反転しプールサイドに置いた手に顎を乗せ、こちらを見ている。
ジエジュンは、まるで雨に濡れた子猫のように、無防備に自分に向けられた視線にたじろぎ、
男を拒絶しようとあえて厳しい口調になった。
「詮索されるのは好きじゃないんです。特に初対面の人は・・・。関係のないことです。」
「僕は結構、詮索するのが好きなんだけど。」
男は二十センチほどジエジュンの方へ体をずらしたが、ジエジュンは目を閉じたまま気づかない振りをした。
「1宝くじがあたり豪遊している。2嫌なことから逃避している。3誰かと待ち合わせしている。
さあ、どれでしょう。」
「あなたのために3であればいいと思うけれど・・・」
「けれど?・・・僕は可愛そうに見えますか?」
ジエジュンはプールサイドに上がり、背を向けたまま手を振りさようならの合図を男に送った。
「答えは?」
プールの中の男が尋ねる。
「ヒ・ミ・ツ。自分で見つけて。」
今日のスコールはいつもより短かった。通り過ぎれば回復も早く、雲間から日差しがさしてきた。