■顕微授精(移植当日)



○2013年10月6日○




前日からなかなか落ち着いて眠れなかった。


今日から、筋腫以外の誰か見知らぬ者がお腹に住み着いて、自分を犠牲にしても守らなければならない義務が発生する。

うまくお腹のなかで孵化させて着床させてやらなければならない。
慎重に育てなければならない。

私は今日から、吹雪のなか一心不乱に卵をあたためる親鳥にならなければならない。




正直、憂鬱(´д`)


まだ遊びたいし…
全然自覚ないし…




受精卵をお腹に入れるというのは初めての経験。

しかも「今この瞬間から」ってのがハッキリ分かるから、責任重大な気がしてどうも大袈裟に考えてしまっていた…(笑)



家を出る前にひと踊りして、もうしばらく出来ないこと「跳びはねる」を惜しみなく実行して気が済んでから病院に向かった。






移植とは、受精卵を子宮に戻すこと。


その名前からして大がかりな手術のようなイメージがあるけど、実際は採卵よりもずっと簡素な処置で、麻酔も要らないような簡単なものと聞いていた。

一番多く言われてる表現としては「人工授精みたいなもん」てやつ。




人工授精の簡単さといえば、まさに「ピッ」て感じ。一瞬の出来事だったっていう記憶が新しい。


人工授精では精子を「ピッ」と卵管に注入して、移植では受精卵を「ピッ」と 子宮内に置いてくる。
それだけの違いやろうとイメージしてた。



実際、処置室に入るとスタッフもドクター以外に一人しかいなかったし、特に術着に着替えもせずに私服のまま、もちろん点滴も麻酔もなし。

採卵とはうって変わってお手軽感が漂っていた。





ところが、始まってみるとなんか想像と違ってて。



始まってからけっこう長いこと数分間処置に時間がかかっていて、やっと先生が離れたから終わったのかと思ったら、消毒が終わっただけだった。

これから始まるんかい( ̄▽ ̄)
と思った。




そこからがまた長かった。


何か分からないけどかなり奥深くで何やらカチャカチャ?やってるんやけど。


痛い、というより痛くなりそうでこわい!という感じ?

例えるなら他人に耳掃除してもらうとき、すごい奥までくると痛くなりそうで怖いっ!てビクってするやん、あんな感じ。


卵管手術の感覚を覚えてるので、麻酔なしで卵管付近を触られたらかなり痛いはず、と身構えてしまって、自然と体に力が入ってしまう。

実際痛くはないんやけど。



力が入ってた足が疲れてガクガクしかけてきた。
早く終わってほしいんですけどぉ…




5分以上が経過してから、先生が席を外したのでやっと終わったみたいやとホッとした。


すると隣の部屋から別の人間が出てきて、私の隣にやってきた。



「○○さん、はじめまして。培養士の△△と申します。これから移植する受精卵はこちらです。グレードは凍結前と変わらずBCで、凍結融解による破損や劣化はありませんでした。充分に着床の可能性はありますから安心して子宮に戻しましょう」

といって、受精卵(胚盤胞)の写真を見せてくれた。



受精卵の写真を見ただけで涙が…(つД`)という感情豊かな人もネット上にはいらっしゃるようやけど、私にはそこまで感情は湧いてこず…(笑)


自分と愛する人の結晶だ~!赤ちゃんの元だ~!とかいう実感があまりなく、鶏卵を眺めるのと同じ感情で他人事のようにそれを眺めていた。

なんかごめん、て感じ( ̄▽ ̄;)




それより、まだ終わってなかったことと今からやっと移植をするということに驚いた。

どこが人工授精と同じなんだよ??
と思わずにいられない(笑)




一体何に時間がかかってるんやろう。
赤ちゃんの降り立つの一番イイ位置を探してたのとベッドメイキング?

子宮後屈気味なのかな。
筋腫があるからいろいろ場所的にややこしいのかな。

とかいろいろ考えてた。




そしてやっと移植となり、ここで数分くらいかかってやっと終了した。

痛いことはなかったけど、なんか疲れたわ。 あんまり何回もやりたいもんではないな(笑)




まあ、その分慎重に良い位置に戻してくれたんやろうと期待することにする(*´ー`*)







診察室に戻って先生のお話を聞く。



そこでもう一度、着床率が30%くらいだと告げられる。

ネットには20%前後と書いてる情報もあったし、まあ患者を目の前にちょっと上乗せ気味に言ってくれてる感もある(笑)



まあ、一回で当たればラッキーと思っておきます( ̄∇ ̄)って伝えておいた。

ここは私のプライドというかダメだった時に「期待してたのに…(涙)」みたいに悲嘆してると思われたくないし。
悪い結果を受け入れる覚悟は充分ですよ、と何故か無性にアピールしたかった(笑)




これからは着床~妊娠継続に必要なホルモン補充が必要になるとのことで、薬を処方された。


しばらくは運動は避けて普通に生活をしてください。と言われる。

大丈夫っすよ、朝に気が済むまで飛び跳ねてきたんで(笑)





次は10日後に妊娠判定に来てください、との事で診察は終了。







ついに、やるべき事はすべて完了してあとは結果を待つのみという状態になった。


うわーうわー、なんか達成感!



受験で言えば、長い予備校通いと受験勉強を経て試験を受け終わった瞬間みたい。

これまでの努力が報われない可能性も充分にあるし、合格発表の日にはどうせ嫌でも緊張するんやろうけど、とりあえず試験終わった時点では「全力は出しきったから後悔はない!」っていうすがすがしい気持ち。


それにすごい似てた。





あまりのすがすがしさに、お腹のなかの見知らぬ者のことはすっかり頭から消え去っていた(笑)