■体外受精に向けて



○2013年5月~6月


5月初旬、新しい病院に転院した。



初めての病院に行く時はとても緊張する。

先生との相性や施設の雰囲気、そういうものを肌で感じて印象が決まり、これから長引くであろう通院の心持ちが決まる。

ドキドキ、先生優しい感じかな?





そして初対面の日、私はいきなりショックを受けた。



治療前に気になることはないかと聞かれて、乳ガン検査にひっかかったから経過観察中であることを伝えると、
「放置して妊娠中に亡くなった人がいる」と恐怖のエピソード付きでマンモを事前に受けるように強く勧められた。



Σ( ̄□ ̄;)



乳ガンは進行が遅いから気にしすぎなくても大丈夫と思うよ~みたいなアドバイスを期待していたから、ショックやった。



何度も言うけど
ほんとにショックやった。

ハッキリ物を言う先生やと思った。
こわい…( ̄□ ̄;)と思った。




けどそのおかげで私はずっとくすぶっていた不安に立ち向かう決心がついて、6月中旬には勇気を振り絞って検査を受けに行くことが出来た。


そして以前に長々と書いたように、異常なしという結果を頂けて狂喜乱舞した。




数ヵ月間悩み続けた乳ガン疑惑から一旦解放されて、私は生まれ変わった。

なんかもう何にでも立ち向かえるような凄まじいパワーが身体から湧いてきて(笑)体外受精に向かってやる気万全で不安のかけらもなく準備にとりかかった。





まずはオリエンテーション。

矢○さんというベテランの看護師兼カウンセラーさんに、個室でたっぷり2時間、体外受精についてお勉強させてもらう。


体外受精とは、卵子と精子がそもそも出会えないとか出会ってもなかなか受精できない事情がある人が、卵子を身体の外に取り出したあとで受精させ、受精卵を子宮に戻して着床を待つという方法。





私がこの治療で一番気にしてたのは仕事への影響。


ひと月の半分は病院に通うことになると聞いてたから、毎日早退とかしょっちゅう有休や半休になるんやろうかと不安やった。

一人の仕事やからそんな休みまくれないし、会社に不妊治療バレるやん、って。




ところがよく聞けばそうならなくても良い選択肢があるらしくて。



その通院のほとんどは、採卵に向けて卵子をたくさん育てるための排卵誘発の注射を打つために通うのだそうで。

注射を病院で打ってもらわずに、自宅で自己注射にすれば通院は半分以下に減るらしい。



なんや全然いけるやん!
と思った。


そしてさっそくそれをお願いすることにし、オリエンテーションのついでに自己注射のの練習をさせてもらった。





私、この時ばかりは本当に自分が変態かもしらんと思った。



もともと注射は嫌いじゃない。

けどそのときは興奮に近いものが…



自分のお腹に自分で注射針を刺す、という行為にテンションMAX=3
だってこんなの普段絶対にないシチュエーションやんか。


お腹の肉をぎゅってつまむと、刺さる痛みを感じないと言われたから針が刺さるとこをガン見しながらプスっといった。
「躊躇ないね!みんな最初はなかなか刺せないのに、素晴らしい~」って矢○さんに褒められた。


褒められたことも楽しくて、針が刺さったままニヤニヤ照れた。




ほんとに痛くない。
筋肉注射に比べたら全然。


矢○さんに「なんか楽しいんですけど変態ですかね?(笑)」と聞いたら「変態ではないけど少数派かな(笑)」と優しく笑ってくれた。
代わりに横で相方がちょっと引いていた。


あえて難点があるとすれば、注入する薬剤を注射針を使って吸い上げて混合させたりする準備がややこしくて、毎朝出勤前には慣れるまで大変そうかなってとこ。
あとは注射針や薬剤の瓶の保管や廃棄などが面倒なくらいかな。


これで通勤問題はだいたい解決したよね。





あとは高額費用の問題。

これについてはそんなに気にしてなかった。共働きやからね。


一回の挑戦で30~50万が相場と言われていて、独身時代に初めて体外受精の存在を知ったときにはたしかにぶったまげた。
それで失敗したら終わりやん!(;゜Д゜)
と思ったし絶対嫌やわ…どうか不妊じゃありませんように!と思ってた。



けどよく考えてみたらさ。


まずは助成金が出るよね。
一回につき15万、それを年に3回。

30万かかったなら15万、45万かかったなら30万の負担で済むという計算。


旦那の給料はすべて生活費に回ると考えて、つまり私が1~2ヶ月働けば1回の体外受精が可能ということ。
妊娠するまでクソ会社にしがみついていれば治療はいつまでも続けられる。

貯金はあんまり増えないけど、これまでなかなか妊娠しなかった期間の共働き貯金がある。



あとは郊外の中古マンションにしといたのが吉と出た。新築か一戸建て頑張ってたらきつかったかも。

今思えば天の導きだったかと思う(笑)



決して余裕ぶっこけるような収入じゃないし、むしろ夫婦ともに平均年収を下回ってると思うけど。
身の丈に合った生活をしていればこういう治療を受けることもできるんやってこと。

ありがたいことです。






最後に
体外受精のリスクについて。



偏見のある人にはいまだに「試験管ベビー」とか言われちゃうこともある体外受精。

排卵~受精~着床の課程に人為的な医療行為を施すことで、胎児に何か影響が出るんじゃないかという不安が当然つきまとうわけ。



私も一応、本やネットや婦人科の先生の話からデータを集めて自分なりに考えた。


結論として、
体外受精と自然妊娠では、染色体異常または先天異常の発生率は変わらない。顕微授精(受精自体が困難な人のために人の手で針を刺して受精させる)ではわずかに確率が上がる事が指摘されているが、そこまでに至る夫婦の年齢層や父母側の事情が影響しているためと考えられるため、必ずしも人為的行為による異常発生とは言えないとの見方もある。

ただ言えるのは、まだまだ歴史の浅い治療であるため(30年程度)出生胎児の何十年後までの経過データがないため、リスクは一切ないと言い切ることが出来ない。


という感じかな。

私のクリニックの先生もそう書いてたし、だいたいこの理論で間違ってないと信じることにした。



自然妊娠でも先天異常は発生する。
すべての妊娠にその可能性がある。

これを念頭に、私が決断のポイントと考えたのは「もし何かあった時に体外受精をした自分を責めないか」ということ。


それはなんとなく大丈夫って自信あった。


理由はやっぱり今までの治療過程があったから。
卵管が原因ならとそれを廃除するために手術もした。精子が原因ならと人工授精も試した。

それで最後に残ったのが体外受精。
これしか私が授かる方法はない。



その事実が、この先何があっても自分を責めたりしないという納得につながった。
絶対後悔とかしない。大丈夫。


自信をもって治療しよう。
すべてを受け入れよう。



心は決まった。




そういうわけで、体外受精に挑むにあたっての気になる点はすべて自分のなかでクリアとなった!


7月の生理が始まればいよいよ治療スタートすることが決まり、卵巣を休ませるための投薬しつつ、ワクワクしながらその日を待つことになった。