①9月下旬

治療はうまくいかず、努力の方向が間違っているのかもわからない。努力してもうまくいかないことは、もう薄々気づいてはいるが、諦めが悪く小さくもがいている。

ここ数年、ずっと海の中に潜っていて海面に浮上できない様な気持ちのままで過ごしている。

気分は常に曇天で、頭上に重たい雲がのっていて、太陽は見えない。

友人たちは、皆治療を卒業し、出産し第一子、第二子の子育てをしている。

私は、相変わらず仕事、病院、家の三角形の上でぐるぐる周り続けている。

スタート地点には、いつまでたってもたてない。

 

仕事は、相変わらず上司の「自己愛に満ちあふれたありがたいお言葉」を毎日いただいている。

孫が幼稚園のかけっこ?で一番だった、やはり血がそうさせている、などといううさんくさい漫画ちっくな話を聞かせていただく日々が続いている。

私立(中学)は、勉強を教えてくれるから塾がいらない、などといっている。中学受験をした息子が行った大学を聞くと、勉強ができなかったんだなあ、という感想だが、本人はいたって真面目に自慢話として話してくれているようだ。

一般的にたいしたことがない話を、すごく素晴らしい話として語ることについての才能は、驚くほどだ。

 

治療の話も、仕事を休ませてもらう関係上しているのだが、先日は孫のお宮参り、お食い初めのありがたい体験談も聞かせていただいた。私が上司だったら、不妊治療をしている人の前で孫の話はしない。

仕事を辞めてストレスがなくなればうまくいくかもしれない、とも思ったが、治療に今後いくらかかるかもわからないため、辞める決断をすることができない。

なんやかんやで、治療のために時間休をとってちょくちょく休ませてもらっているので、ありがたいと思わないといけない。

 

仕事にやりがいなどない。学生の時につきたかった職業には、結局なれなかった。

正義感だけはやたらと強く、常に正論を準備してしまう。

いらない一言をぐっと押し殺しながら仕事をしているが、この年齢になれば正義感など必要ないのだ。

 

会話のキャッチボールのできない上司は、常に戦闘モードで会話の勝ち負けにこだわり続けている。

今までも何度か、自分の思ったことを伝えてしまい、声を震わせながら反論された。

彼はワンマンなのだ。王様なのだ。

反論してはならない。「そうなんですね」「そうなんですか?」「知らなかったです」それを繰り返すのみだ。

自分の意見など伝えてはならない。

ただ、思ったことを些細なことでも言えないのは、非常にストレスのかかることで、同僚も疲弊している。

 

②10月上旬

今年もあと3ヶ月弱。

仕事は相変わらず。担当外の仕事を(異動してきて1年目の人の)よかれと思って少し手伝うと、逆にやった仕事について指摘や質問を受け、それなら自分でやってほしいと思うことが続いている。

担当外の仕事について、真剣に話してもらうことは避けてほしい。

私は私の仕事をしながら、その人の仕事をある程度優先させて仕上げたのに、もうこれ以上求めないでほしい。

その人は、地道にこつこつ考えて、納得した状態でないと先に進まない。ただ、こつこつ考える時間があるのは誰かが仕事をしているからだということを少し考えてほしいとは思う。

 

治療については、あまりにも短い周期でちょくちょく時間単位で休むため、上司以外には一体この人どこが悪いのだろう、と思われていると思う。有給なので、休む理由を同僚に伝える必要はないのだが、これだけ休ませてもらっていると、病院に行くので休ませてもらうということは、最低限伝えないといけないので、伝えている。

この2年間でとらせてもらった有給は、法事以外はほぼ全て不妊治療による通院に使わせてもらっている。

上司以外の同僚は、不妊治療について話せる雰囲気の人たちではない(ような気がする。)。(上司にも伝えたくなかったが、休みをもらうためやむなく伝えた。)

なんとなく、不妊治療が保険適用されたことによって、世の中の認知度も高くなり、私自身も病院に行ってみようという気持ちになった。ただ、職場の同僚については、「不妊治療ってあなたが自分の意思でやってることであって、病気ではないのでしょう?」「なんでそれで、私たちが迷惑をかけられるの?」と思うような価値観の人たちのような気がして、「病院に通院するため、休ませてもらう」ということしか伝えられない。それもそろそろ限界かもしれないけれど。