ここ最近、莫大な量の資料作りで退勤時間が酷いものだった。迫る期日に焦りながら、ベテランのオペレーターに協力してもらい、何とか期日内に提出する事が出来たものの、業務と並行して資料を作るというのは、なかなか大変である。手順書やマニュアルといったものは、企業において必要不可欠である。そういったものの作り方としては、誰が見てもその資料に書かれた手順通りにやれば出来る、といったものが完成形となり、少しでも不明点があれば修正が必要になるものである。ある程度知っている人間が作ると、それが意外に難しく、全く知識の無い人間がその資料通りに実行したとしても、意外な場所で不明点が生じたりするのだ。そういった部分を細かく改善し、そして完全な資料が出来上がる。知識を入れてしまった頭では、いくら目線を下げても拾えない部分が多々あるのだ。
何度も資料を見直し、修正し、それでも納得がいかず、そんなこんなで期日はいよいよ明日、というようなときに、私宛に電話が掛かってきた。相手は上司。資料の提出期日が明日に迫っている中、進捗がどうなっているのかを聞くために連絡してきたようであった。
「もう少し見直したいので、ぎりぎりにはなりますが、期日中には提出します」
私が言った言葉に、電話の向こうから聞こえる上司の声は不満げである。
「うーん、もしも遅れるのであれば、前もってそれを報告するべきじゃない?」
上司から言われた言葉に、今度は私が不満になる。期日は明日までであり、私は明日には提出する、と言っているにも関わらず、彼は“遅れる”と言っているのだ。意味が分からない。別段、サボっていた訳でもなく、期日いっぱいまで時間を使ってなるべく分かりやすい資料を作ろうとしており、しかも期日までには間に合わせると言っているのだ。それの、何がいけないのか。期日ぎりぎりに提出する事は、“遅れる”に属するのか。だったら、定められた期日は意味がない。だとしたら、期日を今日にしたらよかったのでは?
「いや、期日は明日ですよね? 明日中には提出しますよ」
そう言った私に、上司はまだ不満そうである。期日が定められている以上、私はその期日内に提出すると言っているし、それを超える事はないと言っている。なのに、上司はその期日に提出したとしても遅れている、と思っている。このすれ違いは一体何なのか、私には分からない。定められた期日よりも日数が過ぎてしまう予定であれば、私だって報告する。その期日よりも早く提出するべきであれば、提出期限にあわせて、早めの提出を促すようなひと言を添えるべきである。何故、その真意を作成側にくみ取れというような事を求めるのか、私には全く理解できない。人にはそれぞれの業務スタイルがある。私は、与えられた期日いっぱいまで時間を使って、より完成形に近い状態で資料を提出する事が自身の美学であり、彼は与えられた業務に対して素早いレスポンスを返すのが美学だと思っている。その考えの違いが、今回のやり取りを生むこととなった。どちらが正しいかは、分からない。仕事が早い事は良い事だと思うし、時間をかけて完璧な仕事をする事も良い事だと思う。人には個人差があり、考え方、行動もまちまちである。どちらにしても、自分の考えだけで咎めるべきではないし、足並みをそろえたいのであれば何らかの対策を講じるべきである。
「すいません。もう少し細かく見直したいので、ぎりぎりの提出になってしまいます。ただし、期日中には必ず提出します」
私は、私の仕事に対する美学があるのだ。その美学に基づき、精いっぱい譲歩した返答をしたつもりである。納得したのかしなかったのかは分からないが、上司は「よろしく」と言って電話を切った。もちろん“期日内”に提出はした。日々のらりくらりと仕事をしている私だが、その考えは意外と真面目なのだ。やる事はやっている。それが上司の意向に沿っているのかは別として。
話は変わって、私事ではあるが昨日、小さな“家族”が短い生涯を閉じた。愛くるしい黒い目が印象的な、真っ白な毛並みのハムスター。毛の色に合わせてヴァイスと名付けた。ドイツ語で“白”というひどく安易な名前だが、仕事で疲弊した私の心を癒す事に関しては、他の家族の誰よりも長けていたと思う。一般的なハムスターの寿命よりは1年ばかり長生きで、人間の年齢に換算すると90歳を超えるおじいちゃんだった。
ペットショップに居た頃から、彼は一匹狼を貫いていた。2月の寒い時期だというのに、他のハムスター達が固まって眠る中で、1匹だけその固まりから離れてせわしなく動いていたのがヴァイスだった。その自由な様子が気に入って、我が家に招き入れる事になったのだが、当初は本当に何もさせてくれなかったものである。与えられた餌を様々なところに隠し、それを掃除しようとすると果敢に私の手に攻撃を仕掛けてくる姿も好きだった。中々に気の強いヤツだった。しかし、数か月もすればその警戒心は薄れ、私が餌を取り換えようとするとその手のひらに乗って、好きな餌だけ物色するようになった。それもまた可愛らしくて好きだった。
生あるものはいつか必ず死をもってその生涯を閉じる事となる。分かってはいた事だが、やはり寂しいものである。手のひらに確かに伝わる柔らかな毛並みや温かさを、もう二度と感じる事が出来ないと思うと、その気持ちはより大きくなる。片手の手のひらに乗るほどに小さな生き物なのに、私に与えてくれた癒しは非常に大きい。ここ2~3日は身体が上手く動かず、ひょこひょこと不格好に、それでも走っていた姿に何とも言えない気持ちになった。心配で様子を見に来る私に気付けば、必ず顔を出してくれた彼は、やはり“家族”と呼ぶにふさわしい存在である。
ここ最近は、殆どの時間を寝て過ごしていた。餌も残っている事が多く、もう長くはないという事は漠然と考えていた。1日でも長く頑張ってほしい、とは正直思わなかった。老いを止める事は出来ないし、頑張るというよりは、自然の流れに逆らう事なく穏やかにその生涯を閉じてくれればいいと思っていた。
そして彼は、私のその思いに応えるように、月並みだが、まるで眠るように最後の時を迎え、穏やかにこの世から去っていった。悲しいよりも先に、お疲れさまでした、という気持ちだった。
12月に入り、世間は師走らしく少しづつ慌ただしくなり始めている。私の職場も、年末年始に向けて準備を整えており、妙にばたばたしている。精神的に疲れて帰る日もしばしばで、そんな私の疲れを癒してくれたヴァイスも居なくなってしまった。寂しいが、いつまでも落ち込んでいては彼に顔向けできない。頑張って年末年始を乗り越えようと思う。
本当に“あの世”というものがあるのだとしたら、いつかまた彼に会いたいと思う。私の一生分の疲れをあっという間に癒してくれる事だろう。
“社長”という肩書は、非常に影響力のある肩書であり、重要な役職である。小さな会社だろうが、大きな会社だろうが、社長は社長。イチ企業の主であり、そして会社が目指すべき姿へと導く指導者である。企業によってはあまり社長と関わり合いの無い人も居るだろうが、私の会社の社長は定期的にコールセンターに足を運び、懇親会と称した飲み会の席を設け、私たち従業員と気さくに話す社長である。私の前職の社長はというと、姿を見たのすら数回というくらい、従業員との関りはなかった。社長のタイプも様々である。
懇親会で社長に聞いた話だが、社長には社長の集いと言うものがあるらしい。ほかの企業の社長と交流するといったシンプルな集いらしいのだが、参加条件が“社長である事”故に、私からすれば非常に敷居の高い集いである。
しかし、私は社長という役職の人との関わり合いは意外に多い。と、いうよりは、社長、代表取締役、オーナー……、そういった、企業のトップに居る人との関わり合いが多いと言った方が良いかもしれない。こんな風に書いたら「そんな太いパイプを持っているとは!」と思う人も居るかも知れないが、なんてことは無い。支払いが滞った企業の社長との関わり合いが多い、いわば督促業務で話す相手が企業のトップというだけである。
支払いの義務は企業のトップにあり、当然それらの話はトップたる社長、代表取締役、オーナーと言った肩書を持つ人間にしなければならない。場合によっては、その人物に「あなたとは今後一切の取引をお断りさせて頂きます」といった事を言うのだ。プライドの高い社長さんはさぞかし気分を害する事だろう。コールセンターの従業員ごときが偉そうに! なんて思っているのかもしれない。だからこそ、督促業務においては“もっと上のヤツと話させろ!”が多いのだ。ちなみに、上司に代わったところで言う事は変わらない。ここでの取引とは、金銭によって結ばれた契約であり、その信用を失えば、当たり前のようにその契約は解除される。イチ企業の主であるのなら、その信用は失ってはならない。定められた期間で義務を果たせない社長には、従業員の遅刻すら咎める権利はない。
取引を解除された企業からコールセンターに連絡が入った。連絡を受けたオペレーターも健闘してくれたが、お客様の伝家の宝刀“上司を出せ”が出たため、私がその対応を引き継いだ。
「取引を解除するってどういう事なの?」
「先ほどのオペレーターもご案内しているかとは思いますが、期間内にお支払い頂けない場合、お取引自体を解除させて頂いております。ご了承下さい」
既に怒り心頭のお客様は、よくよく聞けば社長の“お母様”であった。社長である息子に連絡があり、そして取引を解除されたという話を聞いてお母様の怒りは爆発。うちの可愛い僕ちゃんがちょっと支払い遅れただけでこんな仕打ちは酷い! と電話が掛かってきた次第である。まさか、コールセンターに勤務していてモンスターペアレントに遭遇できるとは思いもしなかった。
「そんなの勝手じゃない! だいたい、引き落としが掛からなかったのはあんた達のミスじゃないの! それをたった何千円かを残高不足で引き落としが掛からなかったとかそんな事言ってたけど、馬鹿にしてるんじゃないの!?」
お客様は丁度、振り込みだった支払いを引き落としに切り替える最中だったようである。よくよく調べてみると、経理からファクターへ引き落としの申し込み書を送付した際に不備があり、申し込み書が差し戻されているようである。お客様へは申し込み用紙が経理に届いた時点でいつの支払いから引き落としになる予定かを案内した文書を送っているが、それはあくまでも予定であるから、不備があれば当然引き落としが開始される時期がずれ込むのである。そういった事が書類には明記されているのだが、お客様というのは自分に都合の良い部分しか見ないため、注意書きを読んでいない事が多い。これが、非常に面倒なのだ。
「引き落とされなかった理由のひとつとしてお話しさせて頂いたまでですので、決してお客様がそういった状態であるというお話ではありません。お客様のお申込み書に不備がありましたので、現在は引き落としではなく振り込みとなっております。不備があった為にご連絡もさせて頂いておりましたが、お出にならなかったようです」
支払い関係の話は非常にシビアである為、こういった事は全て記録に残っている。そして、それらはお客様へ案内しなければならない為、誰が、いつ連絡し、そして結果はどうなっているのかが分かるようになっているのだ。しかし、お客様はそんな連絡は来ていないと頑として譲らない。こちらにはずらりと連絡した記録が残っているにも関わらず、お客様はたったの1本すら連絡が来ていないと言い張るのだ。
「恐れ入りますが、ご連絡先の確認をさせて頂いてもよろしいですか?」
ふと思い立ち、私はそのお客様の連絡先を確認させてもらう事にすると、そのお母様の口から出てきた電話番号が登録されている顧客情報の電話番号と違っている。お母様は鬼の首を取ったの如く、どうだと言わんばかりに饒舌になる。
「ほら、あなた達のせいじゃない。そんな電話番号じゃないし、会社には全然連絡なんて来なかったのよ」
これで安心、とでも思っているのか、お客様はもう自分が取引を解除になるという憂き目に遭わずに済んだと思っているようで、電話口からそういった様子が感じられる。しかし、こちらはプロなのだ。登録の際にそんな凡ミスなどしない! 私はお客様の登録申込書を引っ張り出す。確認してみると、会社の電話番号が間違って記入されていた。お客様直筆の書類である事を確認した上でそれを伝えた途端、お母様は再び怒りを露わにして怒鳴り始める。
「だから、こっちには全然連絡が来てないって言ってるじゃない! ホームページにだって連絡先は載せてるんだから、そんなの調べればすぐに分かるでしょ!? なんで調べて連絡して来ないの?」
「もちろん、そういった可能性もありますので、お客様に教えて頂いた全てのご連絡先にお電話させて頂いておりますが、お出にならなかったようです。また、ご店舗様にも連絡し、伝言をお願いしていたようです」
記録には、会社の電話番号と、社長である息子の携帯電話、そして、店舗にも連絡をしていた形跡が残っていた。店舗は1度電話に出たようだが、支払い関係は店舗では分からないらしく、社長から連絡をして頂くよう伝言を依頼するに留まっていた。もちろん、折り返しの電話などその日まで全く無かった。
「息子はその時、ゴルフに行っていたのよ!? 出られる訳ないじゃない! それに取引が解除されたなんて世間体が悪いじゃない!」
そんな事知るか! お前の息子は2週間耐久ゴルフでもやってたのか? 世間体を気にするのであれば、取引先からの電話にくらい折り返せ! だいたい、自分の会社の電話番号を間違えて記入する時点でご縁がなかったって事なんじゃないかな? という言葉が喉までせり上がって来るが、イラつきもろとも無理やり飲み込む。
「取引については、こちらからどこかに開示したりなどは行っておりません」
「そんな事言ってるんじゃないのよ! 私の気持ち的にも嫌なのよ!」
「申し訳ありませんが、こちらから再三に渡りご連絡させて頂いておりましたが、お出にならなかった為、設定期間に基づきお取引を解除させて頂きます」
「あんたじゃ話にならないわ! もっと上を出しなさいよ!」
「私が責任を任されております。受注センターにはこれ以上、上席に当たる者はおりません」
モンスターペアレンツ怖いです。要約すると、登録時の電話番号が間違って記入しているのはちゃんと調べない私たちのせいで、社長である息子がゴルフをしている時に電話してしまったから出ないのは当然だから私たちのせいで、世間体とお母様の気持ち的に嫌だから、こんな企業からは金輪際注文なんかしてやらないけど取引を解除するな、と、言ってます。
結局、お母様は頑として引かず、もう一度調べなおして電話して来いと言い捨てて一方的に電話を切った。一応調べなおしてみるものの、取引の解除を回避出来そうな理由は見当たらず、やはり解除が妥当という判断しか出てこない。何よりも、こっちだって金輪際商品を買って頂きたくない相手であるのだ。情報を集めるだけ集めてもう一度電話をしたところ、
「別に調べた結果なんてどうでもいいわ。取引が継続出来るのかだけ教えてちょうだい」
と、言われたので、「残念ながら、これ以上の取引継続は出来かねます」と結果だけお伝え。
「そうですか。じゃあ、そういう企業だと思っておきます」
と言い残して電話を切られ、対応終了。
初めてモンスターペアレンツというものに遭遇したのだが、本当に思考回路がどうかしているとしか思えなかった。私は悪くない! 悪いのはちゃんとしないあなた達! という、真っ向からの考えが気味悪い。自分の息子の年齢を考えているのだろうか。社長と言う立場を理解させているのだろうか。会社のトップという地位の、その責任が幾ばくかという事を知らない社長が存在しているというのは、何とも怖い世の中である。
懇親会で社長に聞いた話だが、社長には社長の集いと言うものがあるらしい。ほかの企業の社長と交流するといったシンプルな集いらしいのだが、参加条件が“社長である事”故に、私からすれば非常に敷居の高い集いである。
しかし、私は社長という役職の人との関わり合いは意外に多い。と、いうよりは、社長、代表取締役、オーナー……、そういった、企業のトップに居る人との関わり合いが多いと言った方が良いかもしれない。こんな風に書いたら「そんな太いパイプを持っているとは!」と思う人も居るかも知れないが、なんてことは無い。支払いが滞った企業の社長との関わり合いが多い、いわば督促業務で話す相手が企業のトップというだけである。
支払いの義務は企業のトップにあり、当然それらの話はトップたる社長、代表取締役、オーナーと言った肩書を持つ人間にしなければならない。場合によっては、その人物に「あなたとは今後一切の取引をお断りさせて頂きます」といった事を言うのだ。プライドの高い社長さんはさぞかし気分を害する事だろう。コールセンターの従業員ごときが偉そうに! なんて思っているのかもしれない。だからこそ、督促業務においては“もっと上のヤツと話させろ!”が多いのだ。ちなみに、上司に代わったところで言う事は変わらない。ここでの取引とは、金銭によって結ばれた契約であり、その信用を失えば、当たり前のようにその契約は解除される。イチ企業の主であるのなら、その信用は失ってはならない。定められた期間で義務を果たせない社長には、従業員の遅刻すら咎める権利はない。
取引を解除された企業からコールセンターに連絡が入った。連絡を受けたオペレーターも健闘してくれたが、お客様の伝家の宝刀“上司を出せ”が出たため、私がその対応を引き継いだ。
「取引を解除するってどういう事なの?」
「先ほどのオペレーターもご案内しているかとは思いますが、期間内にお支払い頂けない場合、お取引自体を解除させて頂いております。ご了承下さい」
既に怒り心頭のお客様は、よくよく聞けば社長の“お母様”であった。社長である息子に連絡があり、そして取引を解除されたという話を聞いてお母様の怒りは爆発。うちの可愛い僕ちゃんがちょっと支払い遅れただけでこんな仕打ちは酷い! と電話が掛かってきた次第である。まさか、コールセンターに勤務していてモンスターペアレントに遭遇できるとは思いもしなかった。
「そんなの勝手じゃない! だいたい、引き落としが掛からなかったのはあんた達のミスじゃないの! それをたった何千円かを残高不足で引き落としが掛からなかったとかそんな事言ってたけど、馬鹿にしてるんじゃないの!?」
お客様は丁度、振り込みだった支払いを引き落としに切り替える最中だったようである。よくよく調べてみると、経理からファクターへ引き落としの申し込み書を送付した際に不備があり、申し込み書が差し戻されているようである。お客様へは申し込み用紙が経理に届いた時点でいつの支払いから引き落としになる予定かを案内した文書を送っているが、それはあくまでも予定であるから、不備があれば当然引き落としが開始される時期がずれ込むのである。そういった事が書類には明記されているのだが、お客様というのは自分に都合の良い部分しか見ないため、注意書きを読んでいない事が多い。これが、非常に面倒なのだ。
「引き落とされなかった理由のひとつとしてお話しさせて頂いたまでですので、決してお客様がそういった状態であるというお話ではありません。お客様のお申込み書に不備がありましたので、現在は引き落としではなく振り込みとなっております。不備があった為にご連絡もさせて頂いておりましたが、お出にならなかったようです」
支払い関係の話は非常にシビアである為、こういった事は全て記録に残っている。そして、それらはお客様へ案内しなければならない為、誰が、いつ連絡し、そして結果はどうなっているのかが分かるようになっているのだ。しかし、お客様はそんな連絡は来ていないと頑として譲らない。こちらにはずらりと連絡した記録が残っているにも関わらず、お客様はたったの1本すら連絡が来ていないと言い張るのだ。
「恐れ入りますが、ご連絡先の確認をさせて頂いてもよろしいですか?」
ふと思い立ち、私はそのお客様の連絡先を確認させてもらう事にすると、そのお母様の口から出てきた電話番号が登録されている顧客情報の電話番号と違っている。お母様は鬼の首を取ったの如く、どうだと言わんばかりに饒舌になる。
「ほら、あなた達のせいじゃない。そんな電話番号じゃないし、会社には全然連絡なんて来なかったのよ」
これで安心、とでも思っているのか、お客様はもう自分が取引を解除になるという憂き目に遭わずに済んだと思っているようで、電話口からそういった様子が感じられる。しかし、こちらはプロなのだ。登録の際にそんな凡ミスなどしない! 私はお客様の登録申込書を引っ張り出す。確認してみると、会社の電話番号が間違って記入されていた。お客様直筆の書類である事を確認した上でそれを伝えた途端、お母様は再び怒りを露わにして怒鳴り始める。
「だから、こっちには全然連絡が来てないって言ってるじゃない! ホームページにだって連絡先は載せてるんだから、そんなの調べればすぐに分かるでしょ!? なんで調べて連絡して来ないの?」
「もちろん、そういった可能性もありますので、お客様に教えて頂いた全てのご連絡先にお電話させて頂いておりますが、お出にならなかったようです。また、ご店舗様にも連絡し、伝言をお願いしていたようです」
記録には、会社の電話番号と、社長である息子の携帯電話、そして、店舗にも連絡をしていた形跡が残っていた。店舗は1度電話に出たようだが、支払い関係は店舗では分からないらしく、社長から連絡をして頂くよう伝言を依頼するに留まっていた。もちろん、折り返しの電話などその日まで全く無かった。
「息子はその時、ゴルフに行っていたのよ!? 出られる訳ないじゃない! それに取引が解除されたなんて世間体が悪いじゃない!」
そんな事知るか! お前の息子は2週間耐久ゴルフでもやってたのか? 世間体を気にするのであれば、取引先からの電話にくらい折り返せ! だいたい、自分の会社の電話番号を間違えて記入する時点でご縁がなかったって事なんじゃないかな? という言葉が喉までせり上がって来るが、イラつきもろとも無理やり飲み込む。
「取引については、こちらからどこかに開示したりなどは行っておりません」
「そんな事言ってるんじゃないのよ! 私の気持ち的にも嫌なのよ!」
「申し訳ありませんが、こちらから再三に渡りご連絡させて頂いておりましたが、お出にならなかった為、設定期間に基づきお取引を解除させて頂きます」
「あんたじゃ話にならないわ! もっと上を出しなさいよ!」
「私が責任を任されております。受注センターにはこれ以上、上席に当たる者はおりません」
モンスターペアレンツ怖いです。要約すると、登録時の電話番号が間違って記入しているのはちゃんと調べない私たちのせいで、社長である息子がゴルフをしている時に電話してしまったから出ないのは当然だから私たちのせいで、世間体とお母様の気持ち的に嫌だから、こんな企業からは金輪際注文なんかしてやらないけど取引を解除するな、と、言ってます。
結局、お母様は頑として引かず、もう一度調べなおして電話して来いと言い捨てて一方的に電話を切った。一応調べなおしてみるものの、取引の解除を回避出来そうな理由は見当たらず、やはり解除が妥当という判断しか出てこない。何よりも、こっちだって金輪際商品を買って頂きたくない相手であるのだ。情報を集めるだけ集めてもう一度電話をしたところ、
「別に調べた結果なんてどうでもいいわ。取引が継続出来るのかだけ教えてちょうだい」
と、言われたので、「残念ながら、これ以上の取引継続は出来かねます」と結果だけお伝え。
「そうですか。じゃあ、そういう企業だと思っておきます」
と言い残して電話を切られ、対応終了。
初めてモンスターペアレンツというものに遭遇したのだが、本当に思考回路がどうかしているとしか思えなかった。私は悪くない! 悪いのはちゃんとしないあなた達! という、真っ向からの考えが気味悪い。自分の息子の年齢を考えているのだろうか。社長と言う立場を理解させているのだろうか。会社のトップという地位の、その責任が幾ばくかという事を知らない社長が存在しているというのは、何とも怖い世の中である。
元来、怠け癖のある私は、少し息抜きをするつもりが気が付けばこんな時間? なんて事になる事も少なくない。オペレーターの仕事の進み具合を確認しに行っただけなのに、つい話し込んでしまって気付けば……、と言った具合である。私の仕事のスタイルとして出勤した時には必ずその日に出勤しているオペレーター全員と話し、当日の仕事の状況を聞く事にしている。今日の業務は多いのか少ないのか、時間内に終わることが出来るのか出来ないのか。そういった事を聞いて回り、必要があればその業務に集中出来るような環境を作る。この“集中できるような環境”というのは、電話を取らないように受電のステータスを変える事。基本的に、オペレーターは電話を受ける状態にしておくのだが、それを一時的に受けなくても良い状態に変える事が出来る。ちなみに、電話が掛かってくる順番はオペレーターが通常。オペレーターが全員電話を受けている状態になると、LDにも掛かってくる。更に、LDも電話を受けている状態で電話が掛かってくれば、SVに回ってくる。このように、電話が掛かってくるレベルが設定されているのだ。
その日の仕事が切羽詰まっているオペレーターについては、電話が鳴らない状況を作り、集中的にその業務を遂行出来るような環境を作るのだが、その分他のオペレーターに回ってくる電話の数が増える事になる。その辺のバランスを上手く取らないと、今度はお客様の電話を取りこぼしてしまう事になるため、割と細かく入電の状況を見ながらコントロールしなければならないのだ。ちなみに、私はタダではその状況を許さない。受電を止める代わりに、その仕事を何時までに終わらせるのかの目標を設定させる。割と、みんなそれに乗って頑張ってくれるので、そんな姿を見るのは非常に嬉しい。
何時までに終わる? どこまで終わらせられる? に対して、オペレーターはみんな高い目標を持ってくれて、それを実行してくれる。私が管理するにはもったいないくらい、前向きで、優秀なオペレーターである。心から感謝や労いの言葉が出せる人たちばかりだ。
そんな優秀なオペレーター勢との思い出を時々ふと思い出す時がある。折角だからそれを紹介しようと思う。
私が、LDだった時に入社した女性。ずっと督促の業務を担当してもらっており、私よりも支払い関係に強く頼りになるお姉さんである。オペレーターからの支払い関係の質問に対して迷ったりしようものなら、彼女に聞くのが一番早い。業務に対して真面目である上に、物怖じしない督促対応も魅力的であり、時折お客様に爆弾発言をぶち込むという恐ろしい技を持つベテランオペレーターである。
私が勤務するコールセンターには、1時間の無休休憩と、10分間の有給休憩が取れるのだが、彼女が入社して来てから、私の有給休憩時間がズレた。当時の私は、仕事の流れを大まかに決めていて、同じ時間でずっと有給休憩を取っていたのだが、その有給休憩を取る時間が、彼女と丸かぶりしたのだ。彼女は気づいていなかったかも知れないが、私が「よし、休憩しよう」と思った時に、同じように彼女が席を立つのを見て、私は上げようとした腰を止めた事が、数日続いた。だよね! やっぱりこの時間がちょうど良いよね! と思いつつ、私はその時間を彼女に譲る事にした。彼女には、彼女のタイミングや流れがあるのだろうから、その邪魔をしたくなかったし、何よりもタイミングが合ったことが嬉しかった為。今でもその時間に彼女は有給休憩に行っている。それは他のオペレーターも分かっているようで、その時間は誰も有給休憩に立つものは居ない。私は、私が心の中で勝手に決めていた時間だった為、彼女にその時間帯を譲り、それ以降はまちまちである。今でも彼女がその時間に席を立つのを見送りながら、その時の事を思い出す。今や、その時間は、彼女のものである。その方が何だかしっくり来るから、面白い。逆にずれると変な感じがするくらいである。
ちなみに、私はこれがきっかけで彼女とは絶対に気が合う! と思ったのだが、全く単純な話である。
もうひとり紹介。私がSVになってから入社した女性。新規登録を担当し始め、しっかりと任された業務を遂行し、なんにでも一生懸命な彼女は、とにかく素直で、ちょっと天然である。そんな彼女は入社してすぐの頃、私にSVとは何か? と聞いて来て大いに私を驚かせた人物である。なんというか、非常に深い話かと思ったら、実はSVというものが一体何の略なのかが分からなかったという、非常に単純な話であった。
「スーパーボイスですか?」
「……は?」
悪い事を吹き込むヤツが居るようで、SV=Super Voiceと教えたヤツが居たらしい。彼女の純粋な心をもてあそぶなんて、酷いヤツである。
「しー! そんな事言ったら笑われちゃうよ。ちゃんと教えてあげるからね。……スーパービーナスだよ」
まったく、本当に悪いヤツである。こんな嘘を吹き込むSVが居るとは! などと思わないで頂きたい。私だってふざける時にはふざけるし、悪ノリだってする。周りのオペレーターがくすくすと笑っている中、彼女は真剣そのものと言った表情で口を開いた。
「えー! じゃあ、○○さんも男性なのにスーパービーナスなんですか!?」
「あ、○○さんはULだから。スーパービーナスとは違うよ」
真顔で答えてやると、彼女は納得したように「あ、そうかあ」と信じている様子である。あんまり悪ふざけは良くないかな、なんて思いつつ、バレたら私の信用が失われてしまう為、そろそろネタバラシでもしようかと思っていた時に、ちょうどもう一人のSVが来て、その人が当然のように「スーパーバイザーだよ」と教えてしまった為、もしかしたら私の信用は失われているのかもしれない。とにかく、彼女は素直で可愛らしい女性である。
長く居ればその分出会いも別れも経験するのだが、その中で起こったエピソードを思い出すと、思わず顔が綻んだりする。誰しもが個性的であり、優秀で面白い人から、仕事はもう少しだけどいいヤツまで、とにかく様々なオペレーターが居る。全く退屈しない職場である。また機会があったら紹介したいと思う。
明日はそんな気の合う楽しい仲間たちと飲みに行くので、いろんな話に花を咲かせつつ、楽しんで来る予定である。
その日の仕事が切羽詰まっているオペレーターについては、電話が鳴らない状況を作り、集中的にその業務を遂行出来るような環境を作るのだが、その分他のオペレーターに回ってくる電話の数が増える事になる。その辺のバランスを上手く取らないと、今度はお客様の電話を取りこぼしてしまう事になるため、割と細かく入電の状況を見ながらコントロールしなければならないのだ。ちなみに、私はタダではその状況を許さない。受電を止める代わりに、その仕事を何時までに終わらせるのかの目標を設定させる。割と、みんなそれに乗って頑張ってくれるので、そんな姿を見るのは非常に嬉しい。
何時までに終わる? どこまで終わらせられる? に対して、オペレーターはみんな高い目標を持ってくれて、それを実行してくれる。私が管理するにはもったいないくらい、前向きで、優秀なオペレーターである。心から感謝や労いの言葉が出せる人たちばかりだ。
そんな優秀なオペレーター勢との思い出を時々ふと思い出す時がある。折角だからそれを紹介しようと思う。
私が、LDだった時に入社した女性。ずっと督促の業務を担当してもらっており、私よりも支払い関係に強く頼りになるお姉さんである。オペレーターからの支払い関係の質問に対して迷ったりしようものなら、彼女に聞くのが一番早い。業務に対して真面目である上に、物怖じしない督促対応も魅力的であり、時折お客様に爆弾発言をぶち込むという恐ろしい技を持つベテランオペレーターである。
私が勤務するコールセンターには、1時間の無休休憩と、10分間の有給休憩が取れるのだが、彼女が入社して来てから、私の有給休憩時間がズレた。当時の私は、仕事の流れを大まかに決めていて、同じ時間でずっと有給休憩を取っていたのだが、その有給休憩を取る時間が、彼女と丸かぶりしたのだ。彼女は気づいていなかったかも知れないが、私が「よし、休憩しよう」と思った時に、同じように彼女が席を立つのを見て、私は上げようとした腰を止めた事が、数日続いた。だよね! やっぱりこの時間がちょうど良いよね! と思いつつ、私はその時間を彼女に譲る事にした。彼女には、彼女のタイミングや流れがあるのだろうから、その邪魔をしたくなかったし、何よりもタイミングが合ったことが嬉しかった為。今でもその時間に彼女は有給休憩に行っている。それは他のオペレーターも分かっているようで、その時間は誰も有給休憩に立つものは居ない。私は、私が心の中で勝手に決めていた時間だった為、彼女にその時間帯を譲り、それ以降はまちまちである。今でも彼女がその時間に席を立つのを見送りながら、その時の事を思い出す。今や、その時間は、彼女のものである。その方が何だかしっくり来るから、面白い。逆にずれると変な感じがするくらいである。
ちなみに、私はこれがきっかけで彼女とは絶対に気が合う! と思ったのだが、全く単純な話である。
もうひとり紹介。私がSVになってから入社した女性。新規登録を担当し始め、しっかりと任された業務を遂行し、なんにでも一生懸命な彼女は、とにかく素直で、ちょっと天然である。そんな彼女は入社してすぐの頃、私にSVとは何か? と聞いて来て大いに私を驚かせた人物である。なんというか、非常に深い話かと思ったら、実はSVというものが一体何の略なのかが分からなかったという、非常に単純な話であった。
「スーパーボイスですか?」
「……は?」
悪い事を吹き込むヤツが居るようで、SV=Super Voiceと教えたヤツが居たらしい。彼女の純粋な心をもてあそぶなんて、酷いヤツである。
「しー! そんな事言ったら笑われちゃうよ。ちゃんと教えてあげるからね。……スーパービーナスだよ」
まったく、本当に悪いヤツである。こんな嘘を吹き込むSVが居るとは! などと思わないで頂きたい。私だってふざける時にはふざけるし、悪ノリだってする。周りのオペレーターがくすくすと笑っている中、彼女は真剣そのものと言った表情で口を開いた。
「えー! じゃあ、○○さんも男性なのにスーパービーナスなんですか!?」
「あ、○○さんはULだから。スーパービーナスとは違うよ」
真顔で答えてやると、彼女は納得したように「あ、そうかあ」と信じている様子である。あんまり悪ふざけは良くないかな、なんて思いつつ、バレたら私の信用が失われてしまう為、そろそろネタバラシでもしようかと思っていた時に、ちょうどもう一人のSVが来て、その人が当然のように「スーパーバイザーだよ」と教えてしまった為、もしかしたら私の信用は失われているのかもしれない。とにかく、彼女は素直で可愛らしい女性である。
長く居ればその分出会いも別れも経験するのだが、その中で起こったエピソードを思い出すと、思わず顔が綻んだりする。誰しもが個性的であり、優秀で面白い人から、仕事はもう少しだけどいいヤツまで、とにかく様々なオペレーターが居る。全く退屈しない職場である。また機会があったら紹介したいと思う。
明日はそんな気の合う楽しい仲間たちと飲みに行くので、いろんな話に花を咲かせつつ、楽しんで来る予定である。
人は、褒められることが好きだし、怒られるのは嫌いである。頼られるのは嬉しいし、信頼されていないと寂しい。相手から与えられる好意的な感情を好み、その対極を嫌う。仕事においてもそれは同じで、もちろん私も怒られるのは嫌いだし、信頼されていないと寂しい。だからこそ怒られないように出来るだけミスを出さないように努め、信頼が得られるように人との関わり合いを大切にする。
以前にも書いたと思うが、私は職場の管理者の中で一番怒らないSVであると自負している。しかし、それはむやみに怒らないという訳ではない。私だって怒るし、きつめに注意する事はある。
ここ最近、年末に向けて新人が何人か入社し、その分、業務でのフォローが大きく増加した。現状、私と同じ時間帯で働いているオペレーターは入社して1年未満の人が殆どである。残念ながら私が働く時間帯は、あまり業務に定着せずに退職してしまう人が多く、入れ替わりが激しい。その離職率と言ったら会議に取り上げられるほどである。こんな事を言ってしまうと自分が妙齢であるとバラすようなものだが、最近の若い人間は、仕事、ことアルバイト業務に対して非常に軽い考えを持っており、私がアルバイトをしていた頃とはその考え方に違いがあるように思う。時給が自分の満足いく金額であるなら、自分に業務内容が合っていなくても取り合えず入社する。そして、実際に研修を受けて、業務内容が自分に向いていないといとも簡単に辞めていく。もしくは、研修は話を聞くだけでお金を貰えて楽だから出勤して来るが、いざ業務に入ったら面倒くさくて辞めていく。更には、業務中にお客様に怒られたり、管理者に注意されたら辞めていく。我慢する事、反省する事を学ぶことなく辞めて行ったその人たちは、どこでなら一生懸命働けるのだろうか。どんな仕事にも嫌な事、面倒な事はついて回る。常々楽に仕事が出来る場所なんてない。それに気づかなければ、定職に就く事すら難しいのではないのだろうか。もしかしたら、社員として働けばその心構えは変わるのかも知れないし、全ての若者がそういう人間とは限らない。入社して来てくれれば、ちゃんと育ってほしいと思うし、一生懸命研修もする。それに応えてほしいと思うのは、今や贅沢な考えなのだろうか。うーん、若者の気持ちは理解しがたい。
話が逸れたが、とにかく新人だらけの職場で私はオペレーターからのヘルプに駆けずり回る毎日を過ごしている。あまりにもヘルプが多すぎて自分の業務が捗らずに参る時もあるのだが、放置だけは絶対にしないと決めているから、自分の業務を後回しにしてとにかく職場を駆け回る。頼りにしてくれるのは嬉しいが、管理者が少ない時は正直、泣きたくなる。
そんな中で、一番怒らないSVである私がきつく注意する事がある。それは新人であろうが、ベテランであろうが変わらない。誰であろうと、その行動をすれば、私の逆鱗に触れる事になる。
その行動のひとつは、自己判断である。ベテランのオペレーターに見受けられそうな事だが、実はこの自己判断というものは、新人オペレーターの方が圧倒的に多い。経験や知識の差だろうか、自分が判断して良い案件と、自分が判断してはいけない案件の区別が付かない。対応出来ない案件を、自分で判断して出来ますと言ってしまったり、割とクリティカルなクレームに対して通常のクレームと同等に扱ってしまったりと、その対応は様々だが、時折その場で卒倒しそうになる事を自己判断でやってのける事もある。そんな時は、私は誰であろうときつめに注意する事にしている。普段怒らない分、私が真顔できつめの注意をすると非常に効果てきめん。まずい、という顔をするオペレーターも居るし、非常に落ち込むオペレーターも居る。そんなオペレーターに、何故こんなにきつく注意されたのかを説明しつつ、自己判断がいかにしてはいけない事かを説くことも、私の仕事である。
前にも書いた通り、どんな事象であっても最初にその連絡を受けるのはオペレーターである。大きなクレームも、無理な依頼も最初にその内容を聞くのは管理者ではなく、オペレーターなのだ。それらの責任はオペレーターひとりに背負わせてはいけない事であり、必ず管理者が関わらなければならない。でないと、その対応にミスがあった時に、オペレーターひとりのミスになってしまう。その内容が大きければ大きい程、その責任も大きくなる。私は、それをオペレーターひとりのミスにはしたくないと思っている。責任を取るのは管理者でいい。だからこそ、その責任を遠慮なく私にタッチしてくれればいいのである。オペレーターと管理者の間に“なすりつけ合い”は発生しない。オペレーターは、管理者に責任を“なすりつけ”てくれていいのだ。私の指示した対応が間違っていて、そのミスが大きくなってしまったのであれば、それはオペレーターのせいではない。私の判断ミスである。私を頼って報告してくれたのであれば、私は喜んでその責任を預かるし、謝罪もする。しかし、何も報告が無ければ私だって何も出来ない。無理難題を出来ますと言ってしまえば、それを改めて断らなければならない。一度出来ますと言ってしまった分、お客様だって嫌な気持ちになる。それがクレームになる事だってある。だからこそ、自己判断は危険なのだ。だから、それをやったオペレーターに対して、私はきつく注意をする事にしている。自己判断の対応により損をするのは他でもなく、オペレーター本人であり、時として、それはオペレーターが背負うには重すぎる事象にさえなってしまう時があるから。そんなものは、背負わせたくない。
そして、もうひとつ。対応しなければならなかった案件を最後まで対応せずに引き継ぎとして持ってきたときに、私はそのオペレーターをきつく注意する。だいたいは、忙しくて対応しきれなかったという理由であるのだが、それらは言い訳の域を出ない。例えアルバイトであっても、仕事は仕事である。やるべきことはやらなければならないし、どうしても出来なければ報告をしなければならない。焦りはミスにつながるので、無理に与えられた仕事をする必要はないが、最低限、時間内に終わらない事を報告するべきである。どんな内容の電話が来るのかが分からない分、自分に与えられた仕事が全て終わらないという事も、もちろんあるはずである。それは決してダメな事ではない。優先順位をつけて、やらなければならない事を先に終わらせ、後回しにしても問題のない仕事を引き継げば問題はないのだ。ただし、全員がそんな状態になる訳ではなく、他に手が空いているオペレーターだって居るのだ。新人がベテランに「忙しくて手が回らないから」と自分の仕事を渡すには、なかなか勇気がいる事だろう。だからこそ、それを私に報告してほしい。そうすれば、それを手が空いている人にシェアする事が出来る。帰り際に「できませんでした」と持って来られるよりも、途中で「できそうにないです」と言ってくれた方がすぐに助ける事が出来る。そんな時の為に、管理者は存在しているのだ。そうやって、仕事に対する責任を持ってほしい。
これらは、私が常々オペレーターの仕事状況を確認し、把握すれば気づいて対応出来る事なのかもしれないが、こういった事に関しては、出来ればオペレーターの力で気づいて欲しい部分でもある。仕事に対しての切り分けを理解してほしい。責任を持ってほしい。全てを人に任せるのではなく、自分で考え、どこまでを自分でやるべきかを判断する力を身につけてほしい。仕事において、ステップアップするという事はそういう事ではないだろうか。それはアルバイトから社員にステップアップする際にも大いに役立ってくれるはずである。私だって、管理者といえどもいつかは居なくなる存在である。私が居なくなった後、そこには新たな管理者が存在する事となる。その時にきちんと状況を判断し、責任を持てる、信頼ある管理者となってくれるのであれば、それはとても嬉しい事である。何でも出来る、全てを自分ひとりで賄える管理者も素晴らしいと思うが、誰かを育て、伸ばせる管理者もまた素晴らしいと思う。
自分がそれを実行できているのかは分からないけれど、人が成長する為に、怒るという事は最低限必要な事である。そこで“報連相”の大切さや、仕事に対する姿勢を学んでくれるのであれば、私も注意した甲斐がある。投げ出すのではなく、耳を傾ける事も大切であると理解し、責任を持って仕事を続けてくれれば、私の勝手な“最近の若者は……”という考えは改まるのかもしれない!?
以前にも書いたと思うが、私は職場の管理者の中で一番怒らないSVであると自負している。しかし、それはむやみに怒らないという訳ではない。私だって怒るし、きつめに注意する事はある。
ここ最近、年末に向けて新人が何人か入社し、その分、業務でのフォローが大きく増加した。現状、私と同じ時間帯で働いているオペレーターは入社して1年未満の人が殆どである。残念ながら私が働く時間帯は、あまり業務に定着せずに退職してしまう人が多く、入れ替わりが激しい。その離職率と言ったら会議に取り上げられるほどである。こんな事を言ってしまうと自分が妙齢であるとバラすようなものだが、最近の若い人間は、仕事、ことアルバイト業務に対して非常に軽い考えを持っており、私がアルバイトをしていた頃とはその考え方に違いがあるように思う。時給が自分の満足いく金額であるなら、自分に業務内容が合っていなくても取り合えず入社する。そして、実際に研修を受けて、業務内容が自分に向いていないといとも簡単に辞めていく。もしくは、研修は話を聞くだけでお金を貰えて楽だから出勤して来るが、いざ業務に入ったら面倒くさくて辞めていく。更には、業務中にお客様に怒られたり、管理者に注意されたら辞めていく。我慢する事、反省する事を学ぶことなく辞めて行ったその人たちは、どこでなら一生懸命働けるのだろうか。どんな仕事にも嫌な事、面倒な事はついて回る。常々楽に仕事が出来る場所なんてない。それに気づかなければ、定職に就く事すら難しいのではないのだろうか。もしかしたら、社員として働けばその心構えは変わるのかも知れないし、全ての若者がそういう人間とは限らない。入社して来てくれれば、ちゃんと育ってほしいと思うし、一生懸命研修もする。それに応えてほしいと思うのは、今や贅沢な考えなのだろうか。うーん、若者の気持ちは理解しがたい。
話が逸れたが、とにかく新人だらけの職場で私はオペレーターからのヘルプに駆けずり回る毎日を過ごしている。あまりにもヘルプが多すぎて自分の業務が捗らずに参る時もあるのだが、放置だけは絶対にしないと決めているから、自分の業務を後回しにしてとにかく職場を駆け回る。頼りにしてくれるのは嬉しいが、管理者が少ない時は正直、泣きたくなる。
そんな中で、一番怒らないSVである私がきつく注意する事がある。それは新人であろうが、ベテランであろうが変わらない。誰であろうと、その行動をすれば、私の逆鱗に触れる事になる。
その行動のひとつは、自己判断である。ベテランのオペレーターに見受けられそうな事だが、実はこの自己判断というものは、新人オペレーターの方が圧倒的に多い。経験や知識の差だろうか、自分が判断して良い案件と、自分が判断してはいけない案件の区別が付かない。対応出来ない案件を、自分で判断して出来ますと言ってしまったり、割とクリティカルなクレームに対して通常のクレームと同等に扱ってしまったりと、その対応は様々だが、時折その場で卒倒しそうになる事を自己判断でやってのける事もある。そんな時は、私は誰であろうときつめに注意する事にしている。普段怒らない分、私が真顔できつめの注意をすると非常に効果てきめん。まずい、という顔をするオペレーターも居るし、非常に落ち込むオペレーターも居る。そんなオペレーターに、何故こんなにきつく注意されたのかを説明しつつ、自己判断がいかにしてはいけない事かを説くことも、私の仕事である。
前にも書いた通り、どんな事象であっても最初にその連絡を受けるのはオペレーターである。大きなクレームも、無理な依頼も最初にその内容を聞くのは管理者ではなく、オペレーターなのだ。それらの責任はオペレーターひとりに背負わせてはいけない事であり、必ず管理者が関わらなければならない。でないと、その対応にミスがあった時に、オペレーターひとりのミスになってしまう。その内容が大きければ大きい程、その責任も大きくなる。私は、それをオペレーターひとりのミスにはしたくないと思っている。責任を取るのは管理者でいい。だからこそ、その責任を遠慮なく私にタッチしてくれればいいのである。オペレーターと管理者の間に“なすりつけ合い”は発生しない。オペレーターは、管理者に責任を“なすりつけ”てくれていいのだ。私の指示した対応が間違っていて、そのミスが大きくなってしまったのであれば、それはオペレーターのせいではない。私の判断ミスである。私を頼って報告してくれたのであれば、私は喜んでその責任を預かるし、謝罪もする。しかし、何も報告が無ければ私だって何も出来ない。無理難題を出来ますと言ってしまえば、それを改めて断らなければならない。一度出来ますと言ってしまった分、お客様だって嫌な気持ちになる。それがクレームになる事だってある。だからこそ、自己判断は危険なのだ。だから、それをやったオペレーターに対して、私はきつく注意をする事にしている。自己判断の対応により損をするのは他でもなく、オペレーター本人であり、時として、それはオペレーターが背負うには重すぎる事象にさえなってしまう時があるから。そんなものは、背負わせたくない。
そして、もうひとつ。対応しなければならなかった案件を最後まで対応せずに引き継ぎとして持ってきたときに、私はそのオペレーターをきつく注意する。だいたいは、忙しくて対応しきれなかったという理由であるのだが、それらは言い訳の域を出ない。例えアルバイトであっても、仕事は仕事である。やるべきことはやらなければならないし、どうしても出来なければ報告をしなければならない。焦りはミスにつながるので、無理に与えられた仕事をする必要はないが、最低限、時間内に終わらない事を報告するべきである。どんな内容の電話が来るのかが分からない分、自分に与えられた仕事が全て終わらないという事も、もちろんあるはずである。それは決してダメな事ではない。優先順位をつけて、やらなければならない事を先に終わらせ、後回しにしても問題のない仕事を引き継げば問題はないのだ。ただし、全員がそんな状態になる訳ではなく、他に手が空いているオペレーターだって居るのだ。新人がベテランに「忙しくて手が回らないから」と自分の仕事を渡すには、なかなか勇気がいる事だろう。だからこそ、それを私に報告してほしい。そうすれば、それを手が空いている人にシェアする事が出来る。帰り際に「できませんでした」と持って来られるよりも、途中で「できそうにないです」と言ってくれた方がすぐに助ける事が出来る。そんな時の為に、管理者は存在しているのだ。そうやって、仕事に対する責任を持ってほしい。
これらは、私が常々オペレーターの仕事状況を確認し、把握すれば気づいて対応出来る事なのかもしれないが、こういった事に関しては、出来ればオペレーターの力で気づいて欲しい部分でもある。仕事に対しての切り分けを理解してほしい。責任を持ってほしい。全てを人に任せるのではなく、自分で考え、どこまでを自分でやるべきかを判断する力を身につけてほしい。仕事において、ステップアップするという事はそういう事ではないだろうか。それはアルバイトから社員にステップアップする際にも大いに役立ってくれるはずである。私だって、管理者といえどもいつかは居なくなる存在である。私が居なくなった後、そこには新たな管理者が存在する事となる。その時にきちんと状況を判断し、責任を持てる、信頼ある管理者となってくれるのであれば、それはとても嬉しい事である。何でも出来る、全てを自分ひとりで賄える管理者も素晴らしいと思うが、誰かを育て、伸ばせる管理者もまた素晴らしいと思う。
自分がそれを実行できているのかは分からないけれど、人が成長する為に、怒るという事は最低限必要な事である。そこで“報連相”の大切さや、仕事に対する姿勢を学んでくれるのであれば、私も注意した甲斐がある。投げ出すのではなく、耳を傾ける事も大切であると理解し、責任を持って仕事を続けてくれれば、私の勝手な“最近の若者は……”という考えは改まるのかもしれない!?
私は学生時代、勉強が好きではなかった。そして、社会人になった現在、仕事が好きではない。それは、自分の好きな時に好きなことが出来る訳ではないし、自分が休みたいと思った時に休めないから。つまりは、自分が自由に何かをする事が出来ないから、好きではないという、非常にわがままな心持から来ている考えである。前の記事にも書いた通り、仕事とは会社が私の時間や業務内容に対してお金を支払っているものである。だから、私は嫌な仕事も面倒な仕事も手に取る。だからと言って、仕事が好きかと言われると、うーん、微妙である。誰だって、遊んで暮らせるのであればその方が良いに決まっている。何もしなくて生活が保障されているのであれば、そもそも仕事をする必要すらない。どんな仕事にも、嫌な事はあるし、どれだけその仕事が好きだと言っても、必ず嫌いな部分がある。もちろん、その比率は好きな事が多い方が良い。好きな事だけをして稼げる仕事なんて、そうそうは無いのだ。ましてや、それを不特定多数のお客様を相手にする仕事に求めるなんて、ナンセンス極まりない。私は、この仕事については楽しいと思える比率が高いから続いている。ただそれだけである。もちろん、お金が貰えなければやらない。そんなものである。
新人が入る際には、必ず前もって知らされるのだが、その人は面白い経歴の持ち主であった。新人は20代の男性。大学院生という、コールセンターに入社するにあたり珍しいタイプの人間である。パソコンやらコンピューター関係に強いらしく、研修の際に注文を入力するツールを一目見て「あー、いかにも入力用に作った感じですね。遊び心がないなー」などと言ってしまうようなタイプである。彼は、何故か仕事に対して絶対的な自信を持っていたようで、研修中に区切りの度に「ここまで大丈夫ですか?」と聞けば、必ず「大丈夫です」と返答が返ってくる。新人ではなかなか理解が困難な研修ですら、「大丈夫です」と自信満々に言ってのけた。もちろん、本当にきちんと理解して頂けているのであれば、問題は無いのだが、いざ実務に入ったら案の定ボロボロだった。こういった人間は、実は非常に多い。何が大丈夫なのかは分からないが、“コールセンターの仕事は電話を取るだけ”と、案外簡単に見ている人が多いのだ。その内側は意外に複雑で、特に私が勤務するコールセンターは何でもアリのコールセンターだから、仕事は多岐にわたる分、覚える事も多い。その全てを新人研修で賄う事は困難なため、ステップアップに合わせて少しづつ色々な業務を覚えて行ってもらう事になるのだが、残念ながらこういったタイプは通常業務の段階でつまづく為、次にステップアップ出来ずに離脱して行ってしまう。
パソコン関係に強いため、注文を受けてパソコンに入力する事に対して絶対の自信があり、そして、電話の受け答えは話せれば何とかなると思っているようであるが、現状はそうではない。お客様対応でもたつけば怒られ、言葉を間違えれば怒られ、そして対応が上手く行かなければ上司からも怒られる。パソコンに詳しくても、言葉が話せても、“お客様”の満足いく対応が出来なければ、それらは何の意味もない事である。豊富な知識があっても対・人間の部分が上手く行かなければ、途端に自分の思い描いていた仕事像は跡形もなく崩れ去るのが仕事である。
結局、彼は何やらとっちらかった理由で早々にこの仕事を辞めていった。「案外、分かりやすかったですよ」と言っていた仕事を何一つこなす事なく、ステップアップも望めないまま去っていった彼は、今は何をしているだろうか。自信を持つことは、悪い事ではないのだが、過剰な自信は小さなトラブルで脆くも崩れ去るものである。自信は最初から備わっているものではない。業務において上手く対応が出来た事や、お客様からの感謝の言葉などで少しづつ備わっていくものである。ところ変わればというように、仕事も様々であり、その場所のルールがある。絶対的な自信が邪魔をして、質問さえも出来ないのであれば、ぜひともその自信を取り除いてから研修に臨んで頂きたいものである。
もう一人紹介したいと思う。40代手前の男性が入社した時の話である。彼もまた、コンピューター関係に強い人物だった。私は、割とアナログな人間であるから、話を聞かされても何がどうなってどうなのかなど、知らないし知る必要もないと思っているのだが、その人は業務に使っているツールがトラブルを起こした時に、その原因に興味を持つタイプである。「○○(何と言っていたのかは失念)関係ですかね?」と言われたが、基本的にトラブルについてはシステムの担当に任せてしまうため、あまり原因については深く関わらないので「どうなんでしょうかねえ?」と曖昧に返事をした記憶がある。
彼は、お客様に一度ガツンと怒られた事で、お客様対応という根本の部分に苦手意識を持ってしまった。ランチに行く際、通常はその前に連絡を取らなければならないお客様には電話を掛け、そして折り返しの連絡が来た時のために残っているオペレーターに引き継いでからランチに行く事になるのだが、彼はそれをせずに「これ、掛けて下さい」と言って引き継ぎをする。ローカルルールではあるのだが、自分の持っている案件を「掛けて下さい」はあまり喜ばれない為、出来るだけ折り返し待ちの状態で渡すのがマナーである。他のオペレーターだって同じように案件を持っているのだ。掛けて下さいと引き継いでしまえば、それだけそのオペレーターの負担が増してしまう。そんな事をするものだから、案の定上司から注意を受け、いよいよお客様対応から逃げられなくなった彼は、今度は精神面で苦痛を訴えるようになった。
彼の欠勤の連絡で多く見受けられた理由は、ストレスで胃痛が激しく、医者から安静にするように言われた、というものである。それは、どうにも“あなた達がフォローをしてくれないから自分はこんなに苦しんでいるんだ”とでも言いたげな様子であったが、申し訳ないが、やってもらっている事は必要最低限であり、当然通常業務以上の仕事を与える事もない。電話を受ける事もせず、電話を掛ける事も出来なければ、何故コールセンターに勤務しているのか意味が分からない。思えば、私のように年下の、しかも女性に注意を受ける事すらストレスになっていたのかも分からないが、私にだって私の仕事があるのだ。例え年上の男性であろうと、管理者として注意するべき事があれば注意だってする。そんなプライドなど知ったこっちゃない。
結局、どうにもならず、最終的にはお客様対応が向いていない、というような事を言い始め、では何が自分に向いているのか、という質問に対し、「設計」と意味の分からない事を口走り、辞めてしまった。当然だが、商品を受注するセンターで「設計」の仕事など来る訳がない。そもそも入社する会社を間違えたとしか思えない理由で辞めていった彼は、今は設計の仕事にでも就いているのだろうか。別段興味がある訳ではないが。
十人十色というように、入社して来る新人は実に様々なタイプの人間が来る。良くも悪くも。それにしても、人には職業選択の自由があるのだ。何も自分に向いていない職場に飛び込むこともないと思うのだが。コンピューター関係に強ければ、他に選べる職業もあるのではないのだろうか。コールセンター、特に商品の受注のセンターともなれば、どちらかと言うと接客色の方が強いと思うのだが、なぜかこのように変な自信を持った人間が入社して来る。実に不思議なものである。
ついでに、前回の記事で書いていた私の体調についてだが、案の定、熱は下がり、仕事も問題なく行けそうである。
新人が入る際には、必ず前もって知らされるのだが、その人は面白い経歴の持ち主であった。新人は20代の男性。大学院生という、コールセンターに入社するにあたり珍しいタイプの人間である。パソコンやらコンピューター関係に強いらしく、研修の際に注文を入力するツールを一目見て「あー、いかにも入力用に作った感じですね。遊び心がないなー」などと言ってしまうようなタイプである。彼は、何故か仕事に対して絶対的な自信を持っていたようで、研修中に区切りの度に「ここまで大丈夫ですか?」と聞けば、必ず「大丈夫です」と返答が返ってくる。新人ではなかなか理解が困難な研修ですら、「大丈夫です」と自信満々に言ってのけた。もちろん、本当にきちんと理解して頂けているのであれば、問題は無いのだが、いざ実務に入ったら案の定ボロボロだった。こういった人間は、実は非常に多い。何が大丈夫なのかは分からないが、“コールセンターの仕事は電話を取るだけ”と、案外簡単に見ている人が多いのだ。その内側は意外に複雑で、特に私が勤務するコールセンターは何でもアリのコールセンターだから、仕事は多岐にわたる分、覚える事も多い。その全てを新人研修で賄う事は困難なため、ステップアップに合わせて少しづつ色々な業務を覚えて行ってもらう事になるのだが、残念ながらこういったタイプは通常業務の段階でつまづく為、次にステップアップ出来ずに離脱して行ってしまう。
パソコン関係に強いため、注文を受けてパソコンに入力する事に対して絶対の自信があり、そして、電話の受け答えは話せれば何とかなると思っているようであるが、現状はそうではない。お客様対応でもたつけば怒られ、言葉を間違えれば怒られ、そして対応が上手く行かなければ上司からも怒られる。パソコンに詳しくても、言葉が話せても、“お客様”の満足いく対応が出来なければ、それらは何の意味もない事である。豊富な知識があっても対・人間の部分が上手く行かなければ、途端に自分の思い描いていた仕事像は跡形もなく崩れ去るのが仕事である。
結局、彼は何やらとっちらかった理由で早々にこの仕事を辞めていった。「案外、分かりやすかったですよ」と言っていた仕事を何一つこなす事なく、ステップアップも望めないまま去っていった彼は、今は何をしているだろうか。自信を持つことは、悪い事ではないのだが、過剰な自信は小さなトラブルで脆くも崩れ去るものである。自信は最初から備わっているものではない。業務において上手く対応が出来た事や、お客様からの感謝の言葉などで少しづつ備わっていくものである。ところ変わればというように、仕事も様々であり、その場所のルールがある。絶対的な自信が邪魔をして、質問さえも出来ないのであれば、ぜひともその自信を取り除いてから研修に臨んで頂きたいものである。
もう一人紹介したいと思う。40代手前の男性が入社した時の話である。彼もまた、コンピューター関係に強い人物だった。私は、割とアナログな人間であるから、話を聞かされても何がどうなってどうなのかなど、知らないし知る必要もないと思っているのだが、その人は業務に使っているツールがトラブルを起こした時に、その原因に興味を持つタイプである。「○○(何と言っていたのかは失念)関係ですかね?」と言われたが、基本的にトラブルについてはシステムの担当に任せてしまうため、あまり原因については深く関わらないので「どうなんでしょうかねえ?」と曖昧に返事をした記憶がある。
彼は、お客様に一度ガツンと怒られた事で、お客様対応という根本の部分に苦手意識を持ってしまった。ランチに行く際、通常はその前に連絡を取らなければならないお客様には電話を掛け、そして折り返しの連絡が来た時のために残っているオペレーターに引き継いでからランチに行く事になるのだが、彼はそれをせずに「これ、掛けて下さい」と言って引き継ぎをする。ローカルルールではあるのだが、自分の持っている案件を「掛けて下さい」はあまり喜ばれない為、出来るだけ折り返し待ちの状態で渡すのがマナーである。他のオペレーターだって同じように案件を持っているのだ。掛けて下さいと引き継いでしまえば、それだけそのオペレーターの負担が増してしまう。そんな事をするものだから、案の定上司から注意を受け、いよいよお客様対応から逃げられなくなった彼は、今度は精神面で苦痛を訴えるようになった。
彼の欠勤の連絡で多く見受けられた理由は、ストレスで胃痛が激しく、医者から安静にするように言われた、というものである。それは、どうにも“あなた達がフォローをしてくれないから自分はこんなに苦しんでいるんだ”とでも言いたげな様子であったが、申し訳ないが、やってもらっている事は必要最低限であり、当然通常業務以上の仕事を与える事もない。電話を受ける事もせず、電話を掛ける事も出来なければ、何故コールセンターに勤務しているのか意味が分からない。思えば、私のように年下の、しかも女性に注意を受ける事すらストレスになっていたのかも分からないが、私にだって私の仕事があるのだ。例え年上の男性であろうと、管理者として注意するべき事があれば注意だってする。そんなプライドなど知ったこっちゃない。
結局、どうにもならず、最終的にはお客様対応が向いていない、というような事を言い始め、では何が自分に向いているのか、という質問に対し、「設計」と意味の分からない事を口走り、辞めてしまった。当然だが、商品を受注するセンターで「設計」の仕事など来る訳がない。そもそも入社する会社を間違えたとしか思えない理由で辞めていった彼は、今は設計の仕事にでも就いているのだろうか。別段興味がある訳ではないが。
十人十色というように、入社して来る新人は実に様々なタイプの人間が来る。良くも悪くも。それにしても、人には職業選択の自由があるのだ。何も自分に向いていない職場に飛び込むこともないと思うのだが。コンピューター関係に強ければ、他に選べる職業もあるのではないのだろうか。コールセンター、特に商品の受注のセンターともなれば、どちらかと言うと接客色の方が強いと思うのだが、なぜかこのように変な自信を持った人間が入社して来る。実に不思議なものである。
ついでに、前回の記事で書いていた私の体調についてだが、案の定、熱は下がり、仕事も問題なく行けそうである。
