隊長が本当は自ら志願して、被災地入りしている事は私には分かっていました。
色んな災害派遣を経験してきたから今回も早く行きたそうでした。
ただ、今回いつもと違ったのは現場じゃなく、指揮官として渡った事。
彼は本当にすごいと思います。一般大卒業後、高卒に混じって一般クラスの自衛官として、
兵士の訓練を受け、そこから幹部に上がっていったからです。30代で幹部候補生学校に
入り、若い防大生に交ざって厳しい訓練を受け、ものにしていった努力の人でした。
ニュースでは『フクシマ、水素バクハツ…、水素バクハツ…』と連日報道され、
恐怖で私は本当に爆発するんじゃないかと気が気ではありませんでした…。
こちらからは連絡もできず、精神的にも衰弱していきました。自分の弱さを痛感しました。
「自分の命は、自分で守ってな」
隊長から言われてきた言葉でした。自衛官は国を守らなきゃならないから、家族になったって
後回しです。
時々くれるメールが唯一の救いでした。たまに自衛隊食を写メで送ってくれました。
自衛隊マニアの人には受けるらしいですが、迷彩パッケージのペットボトルのお茶とかお水、
焼きそばUFOとか缶詰があります。パッケージは迷彩でオシャレな感じだけど、中身は私に
は添加物が気になるものばかりでした。非常時にそんな事言ったらダメなんだろうけど、
もっとちゃんとしたもの食べれたらいいのにねって思っていました。
彼は指揮官がほとんどだったけれど、最後の方は大捜索に加わりました。この時に多数の
ご遺体を収容しているはず。それなのに愚痴も文句も言わない。あなたの精神状態はとてつ
もなかったと思います。自衛官は警察官と違って、死体を見るのは、まだ慣れていないはず
だから…。そして守秘義務があるから、本当に仕事面では何も語らない人でしたね。
(つづく…)
