ヨガの帰り道、ふと田中真紀子嬢のことを思い出しました。
あの方、名言失言山のようにありそうですが、一番強烈に残っているのは、例の、凡人軍人変人。凡人=小渕敬三、軍人=梶山静六、変人=小泉純一郎、でしたっけ。短く言いえてインパクト大。政治家よりコピーライターになったほうが歴史に残る仕事沢山できたんじゃないでしょうか、と余計なお世話ながら思ったりします(笑)。
なぜこれを急に思い出したかというと、たぶん猪瀬直樹さんのメルマガが原因。昨日届いたメルマガの中で、彼は小泉政権時代の道路公団民営化にかかわった話を回顧し、そのあと安倍政権になり、さらにその後続いてゆく政権のたらいまわし、短命政権の首相について、こんな風にかいておられます。
それはそれとして、安倍さんが夏にやめて、福田康夫さんに代わった。福田さんには夢がない。その次の麻生さんには知性がなかった。そして、政権交代で鳩山さんが総理になったが鳩山さんは宇宙人ですからリアルがない。現実がない。さらに菅さんには言葉がない。ビジョンがない。
こんな明快なまとめ見たことありません。メールを受信して読んで、電車の中で声出して笑いました。国民のひとりとしては少々哀しみの混じった笑いではありましたが。
これともうひとつ最近読んだ大胆かつ爽快なまとめがあります。内田樹さんの「寝ながら学べる構造主義」の一節。構造主義を含めた現代思想系の入門書、手引書の類は、自慢じゃありませんがわたくし、かなり読み荒らしましたが、内田さんのこの本はもう目から鱗とはこのことなり!と叫びたくなるように、見事に明快な内容。 あとがきの中で、大胆かつユーモラスに、こんなまとめを書いておられます。
それから幾星霜。私も人並みに世間の苦労を積み、「人としてだいじなこと」というのが何であるか、しだいに分かってきました。そういう年回りになってから読み返してみると、あら不思議、かつては邪悪なまでに難解と思われた構造主義者たちの「言いたいこと」がすらすらわかるではありませんか。
レウィ=ストロースは要するに「みんな仲良くしようね」と言っており、バルトは「ことばづかいで人は決まる」と言っており、ラカンは「大人になれよ」と言っており、フーコーは「私はバカが嫌いだ」と言っているのでした。
わたしに勿論これらの知の巨人たちの難解本を読みぬく知力はありませんけれども、他人の解説を聞いたり、自分でヒーヒー斜め読みしたりする中、このまとめに度肝を抜かれたのであります(笑)。内田さんにしても、ここまで大胆で開き直った書き方は、あとがきだからできたのだろうとは思いますが。
思えば、内田樹さんの本はこれまでのところ、読んで外れた本が一冊もない。
というより、すべて目から鱗系。目線の鋭さとか解説の深さが、橋本治さん的な香り(実際お二人は先輩後輩、仲良しのようで)がしますが、橋本さんの文章のあの蛇行して迂回してすべて網羅し尽くしながら語りすすめるという粘着性(失礼)がなく、内田さんの文章は無駄なく明快なところもまことに清々しい。お書きになったものをまだ全て読破したわけではありませんが、すでにかなりのファンになっております。
ずいぶん前になりますが、江藤淳さんが亡くなったとき、父がわざわざ葉書を書いて送ってきたことがありました。「江藤さんが亡くなった。これから彼の書いたものが読めなくなると思うと寂しく、涙がでた」というような内容で。普段こういうこと言うひとでは決してないのですが、相当なファンであったことと長年追いかけてきたこと、それがこうした特別な思いの表出をさせたのだろうと。
内田さんはというとまだ60歳になられたばかりで、これからあと少なくとも10年以上は新しいものを読めるでしょう。武道家で体も丈夫そうだし(笑)。
その人の訃報を聞いて流涙するほど惚れこむ書き手に出会えるということは、読み手にとっては幸福なことであるのは間違いないと思う。いずれ別れがやってくるとしても。
