「若い読者のための世界史」
エルンスト・H・ゴンブリッチ
今回は世界史を身につけるためのアプローチについて書きすすめたいと思います。
高校生の時に「世界史」を勉強した人なら誰でもお分かりのように、「世界史」の教科書は、「日本史」のように時代が一直線に進む形式とはなっておらず、時代と地域が行ったり来たりする構成になっているためにとても分かりにくいです。また事実関係だけがみっちりと記載されているために味気なく感じた方も多いのではないでしょうか。
そんな世界史の扉を再び開けるときにお薦めなのが今回ご紹介する「若い読者のための世界史」です。
本書は、後年美術史家として名をはせるエルンスト・ゴンブリッチ氏が、1935年、25歳の時に書かれたものです。
子供に世界の歴史に関する物語を語るように書かれた本書はとても読みやすく、なにより、物語風に語られることで、ある時代のある地域を彩るイメージ感覚を養うことができることが特筆すべき点だと思います。
例えば、私の好きなアレクサンドロス大王(マケドニア)は教科書では、古代ギリシアが没落し、ローマ帝国が勃興する谷間に登場し、一大帝国を築くものの、彼の死後すぐに分裂、といった時代のあだ花のような不当な扱いを受けていますが、本書では、若き日にアリストテレスを家庭教師として育ち、19歳で王位につき、当時最強の国家であったペルシャ帝国を破り、さらにはエジプト、インドまで遠征し、一大帝国を築くまでの様子がビビッドに描かれています。残念ながらアレクサンドロス大王は33歳の若さで死去しますが、彼の東方遠征によってペルシアやインドにもたらされたヘレニズム文化(ギリシア的なもの)は、その後数百年のときを経て、中国へと伝えられ、皆さんご存じのように日本の法隆寺のエンタシス方式に影響を与えたと言われています。
さて、本書で世界史を捉える時代イメージが涵養できたら、次は、W・H・マグニールの「世界史(上・下)」に進むとよいでしょう。大部ですが、世界史を学ぶ大学生にとってはグローバルな“定番”となっている世界史本です。
そして、全体感を養うことに成功したら、あとは興味に応じて各論を攻めるのがよいと思います。中でも、私のおススメは、中公新書の物語の歴史シリーズです。「物語 ドイツの歴史」、「物語 スイスの歴史」といった具合に、各国の歴史に通じた専門家が書き下ろしているので理解がグイグイと進みます。
鳥瞰的な視点で世界史のダイナミズムを味わいたい方には、「大国の興亡」(ポール・ケネディ)、「文明の衝突」(サミュエル・ハンチントン)、「21世紀の歴史」(ジャック・アタリ)などがよいでしょう。独自の観点からの洞察がお好みであれば「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイヤモンド)がおススメです。
最後に一点捕捉を。
ここに紹介した本の多くは世界史というよりも西洋史とでも呼ぶべき内容です。日本にいたっては19世紀になってようやく西洋によって“発見”され、世界史の表舞台に初登場したかのような印象です。アジアの世紀にふさわしい世界史観を持った書籍がベストセラーとなる日を望みます。









