2012年、3月。
大手商社に勤める、岩永誠 〈イワナガ マコト〉 は、何の変化もない、多忙な生活を送っていた。
有名大学を卒業し、現在32歳で、まだ若いにも関わらず、会社では重要な任務を任されるエリート。
今日も残業を終え、帰宅するところだった。
その日はいつもより3時間早く仕事を切り上げたため、帰りも早かった。
なぜなら・・・その日は、愛娘の誕生日であり、彼らの4回目の結婚記念日でもあったからだ。
最愛の娘、桃花の誕生日ということもあり、手には大きなケーキの箱。
娘の大好きなキャラクターのケーキ。
「桃花、喜ぶだろうなあ・・・。」
誠は、そう少し微笑み、
「さあ、早く帰らなければ。」
帰宅を急いだ。
自宅で何が行われているかも知らずに・・・。
「帰ったぞ~。」
おかしいな・・・返事がない。
真実子が出迎えないことなんて、めったにないことだ。
しかも今日は特別な日。
桃花と二人で家にいるはずだが・・・買い物にでも行ったのか?
誠はまず、リビングに入った。
・・・誰もいない。電気もついていない・・・。
風呂場、トイレ、あらゆるところを探したがいなかった。
そして、娘の部屋へ・・・・。
誠は、そこで違和感を覚えた。
桃花が、部屋で眠りについていた。
誕生日の夜。まだ5歳とはいえども8時に、父親の帰りも待たずして寝るなんてことはないだろう。
何かがおかしい。
自身でもよくわからないが、誠は何かを感じた。
まだ見ていない部屋はあとひとつ。
・・・寝室を。