※今回は高校3年の冬設定⛄️です。お話の時代設定があっちこっち飛びまくっててすみませんアセアセ





                        『warmth』




「はいっ、怖がらないで抱いてみて」

「俺はいいって言ってんだろ、泣かれたらどうすんだよ?」

「大丈夫だって、兄上。お昼寝から起きたばかりでご機嫌なんだから」


雪の影響でバイトが休みになった週末


「たまには、魔界に遊びに行ってみない?」

あまり気が進まなかったが、半ば彼女に引きずられるようにして家族の住む城にやって来ると

「おい、よせってば」

案の定、生後半年ほどの姪っ子を抱かされた挙句

「ねっ、すっごく可愛いでしょう?」

「そりゃあ、僕の娘だもん。ほらっ、女の子は父親に似るって言うだろう」

親バカ全開の弟に、愛娘の自慢話を延々と聞かされる羽目になり

「赤ん坊なんて、だいたいみんな可愛いに決まってるだろ」

「相変わらず素直じゃないんだから兄上は」

たしかに

腕の中で不思議そうに俺を見ている小さな姪っ子は、美形で愛らしい容姿には違いないが

性格まで弟に似てしまったら、と思うと嫌な予感しかしない

それにしても

「あっ、笑ったぁ」

彼女が嬉しそうに赤ん坊をあやす姿に、なんとも言えないくすぐったさを感じてしまうのは何故なんだろう

「…もういいだろ、そろそろ帰るぞ」

「えっー!?泊まって行きなよ、兄上」

「無茶言うな、明日は普通に学校があるんだ」

「まだ高校なんて行ってるの?」

「もうすぐ卒業だけど、な」

赤ん坊を返しながら彼女に同意を促すと

「そうね、来週は最後の定期考査もあるし少しは勉強しとかないとダメだよね?」

「少し、でいいと思ってるおまえの自信はどっから来てんだよ」

「ひどい…でも、もっと抱っこしてたいなぁ」

名残惜しそうにしながら帰り支度をし始めた時

「そんなに慌てて帰らなくてもいいでしょう?お夕飯を用意してあるから食べていきなさいよ」

くすくす笑いながら、ずっと俺たちのやり取りを見ていたおふくろに引き止められた

おまけに

「ありがとうございます。ねっ、お言葉に甘えて夕食をいただいてから帰らない?」

ジャケットの袖を引っ張る無邪気な笑顔を見たら、嫌だと言えるわけがない

「…わかったよ」

そうして

久しぶりに家族そろって賑やかな食卓を囲み、彼女の家の地下室から人間界に戻って来ると

「あらっ、ちょうど良かった」

待ち構えていたように、リビングから声をかけられた

「いただき物のケーキがあるから、一緒にお茶にしましょう」

「…だって。ちょっとだけつきあってもらってもいい?」

「ちょっとだけ、な」

今度はこちらの家族のティータイムに呼ばれて帰るタイミングがなかなか見つからず

「ごちそうさまでした」

ようやく席を立って玄関に向かう頃には、時計の針は午後9時を回っていた

「じゃあ、また明日な」

朝よりもひどくなっている吹雪の中に、一歩足を踏み出した瞬間

「待って」

彼女がドアを開けて外に飛び出して来た

「馬鹿、寒いのに出て来るなよ」

「ううん、門のところまで送らせて」

「見送らなくていいから、さっさと部屋に戻って試験勉強でもしてろ」

このやりとりをしている短い時間にも、彼女の髪や細い肩は冷たい雪がかかり真っ白になっている

「寒いから、送って行きたいの」

そう言ってしっかりとつながれた手の温もりに甘えていると、離れ難くなるのは目に見えている

「なに言ってんだ、早く中に入れって」

振り解いた俺の手に、彼女はポケットから出した手袋を握らせようとした

「お父さんのだけど、良かったら使って」

「いらねぇよ、あったかいから」

「えっ?」

なんだかんだ言いながら

お節介な誰かさんのおかげで家族と過ごせた楽しい時間が、今夜の寒さを感じさせないくらい心を温めてくれたことは間違いない

「それって、どういう…」

キョトンとしている彼女の頬に軽くキスをして。

「おやすみ」

真っ白な夜道をアパートへと急ぎなから、魔界で感じたくすぐったさの正体に気がついた


いつになるかはわからないが

俺にも彼女に抱かせてやりたい温もりがあるってことに




fin



※ココ卓もちょっと書いてみたいなぁ…とたまーに思ったりします照れ(思うだけで実際には書けませんがタラー)恋多きわがまま王女といじっぱりな年下サッカー少年の恋なんて可愛い過ぎますハート