『greedier 3』
翌日の夕方
彼がジムから帰るころを見計らって家を出ると
「ちょっと貸してね」
運良く空き地で見つけた、彼がいつも可愛がっている野良猫に噛みついて変身した
昨日のやり取りからまだ立ち直っていないわたしは、彼に面と向かって会う勇気がなかったし
「猫とか小鳥には優しいんだよね」
普段は見せてくれない笑顔を向けてもらえる猫になってる方がずっといい
そんなわたしの思いが通じたのか、空き地の横を歩いていた彼の後をついて行くと
「よお、うちに来るか?」
大きな手で抱き上げられ彼の住むマンションに連れて行ってもらうことに成功して
「おふくろは仕事だし、牛乳くらいしか無くて悪いな」
小さなお皿に注がれたミルクを飲んで、彼の膝の上で頭を撫でられているうちに強烈な睡魔に襲われてしまった
そうだ、昨夜はあまり眠れなかったんだった
猫の姿になっていることも忘れ、気持ち良くうとうとしていると
「…悩むんだよな、プレゼントって」
いつのまにか床に寝かされていた(猫の姿の)わたしの耳に、彼の独り言らしき声が聞こえてきた
ん?
プレゼントって言った?
いったい誰にあげるの?
そっと近づいて聞き耳を立てていると
「毎年、何をやっても喜ぶから余計に困るんだよな…女が好きな物ってマジでわかんねーし」
「!」
ベッドに座ってつぶやいている彼の言葉に驚いて、少しだけ開けられていた部屋の窓から逃げるようにして外に飛び出した
『いったぁ…』
動揺していたせいか、着地に失敗して前足(つまりは手首)をひねってしまった痛みよりも
彼が女性にプレゼントをあげようとしていることを知った衝撃で、くしゃみをして元の姿に戻ったあともずっと涙が止まらなかった
continue(次回に続きます)↓