『share 1』
「ロミオとジュリエットなのかな?わたしたち」
登校するなり教室の前で、彼女がこの世の終わりのような顔をしてつぶやいた
「大げさなんだよ、バカ」
「だって、また別々のクラスなんだもん。どうしてなんだろう?」
「同じ教室に出来の悪い生徒がふたりもいたら、教師が面倒見きれねぇからじゃねぇの?」
「うっ…でも、ほんとにそうかも」
2年遅れで始まった高校生活も今年で3年目
最終学年になった初日のクラス替えで、また別々のクラスになってしまったことで落ち込んでいた彼女は
「すぐ隣の教室にいるんだし、休み時間や放課後に会えるだろ」
そう言って頭をポンと叩くと機嫌を直したのか、はにかんだような笑顔を見せた
しかし
この時期の彼女にはもうひとつ悩み事があり
「もうすぐお誕生日だね」
そう、来週の4月13日は俺の誕生日で
「ガキじゃあるまいし、誕生日なんかどうでもいいよ」
数日前から何度も同じやり取りを繰り返しているにもかかわらず
「でも、今年は二十歳になるんだし…」
彼女はどうしても、なにかしたくて仕方のない様子で
「べつに、特別祝ってもらうほどのことじゃねぇよ」
だいたい二十歳になってもまだ高校に通ってる身では、大人になりきれていない中途半端な感じがして嬉しくもなんともないのだが
「13日はやっぱり会えない?」
さっきよりもっと悲しそうな表情で見つめられてはさすがに会えない、とは言えず
「週の半ばで学校もバイトもあるからあんまり時間は取れねぇけど」
「いいの⁉︎」
「少しだけだぞ」
「嬉しい、ありがとう」
幸せそうな笑顔を見て苦笑いしている俺に、彼女は全く気がついていないようだった
continue(次回に続きます)↓