※今回は卓ちゃんのお誕生日(2/14)🍰ということで恒例の(?)番外編。愛良ちゃん(中学生設定)目線のお話になります。このお話の中で登場する『彼』とは新庄さんのことです。尚、前回前々回の『cake』とは特に繋がりはありません
『cake 3』
「ひゃ~!さっすが、おかあさん。」
「やーね、おだてたって何も出ないわよ。」
2月14日、つまりはバレンタインデーの夕方
学校から帰るとキッチンのテーブルの上には豪華なチョコレートケーキが出来上がっていた
「でもさ、気合い入りすぎじゃない?もったいないよ、うちの男性陣には。」
「そんな言い方しなくったって…いいの、お母さんが作りたかったんだから。」
「ふーん。」
まぁ、おかあさんの気持ちも分からないではないんだよね
今日はバレンタインデーであると同時に高校生のお兄ちゃんの誕生日でもあるわけだし
おとうさんにいたっては、現役のプロボクサーだった数年前まで食べる物には気を使っていて甘いものなんてあまり食べなかったから
引退してからはおかあさんも肩の荷が降りたみたいだし、バレンタインだってきっと楽しみたいんだよね
「そっちこそチョコレートは完成したの?今からデートなんでしょう。」
「えへへ、なんとか。」
昨日、おかあさんに手伝ってもらって初めて作ったトリュフチョコ
「綺麗に出来たのを彼にあげて、ちょっと失敗しちゃったのはおとうさんにあげるんだ。」
「失敗したやつって、お父さんには絶対に言っちゃだめよ。」
「わかってるって…あっ!おとうさん帰って来た。」
わざわざ玄関まで出迎えに行くのにはちょっとした訳があって
「おかえりなさい。はい、バレンタインのチョコレート!今年は手作りなんだ。」
「どういう風の吹き回しだ?何かあるんだったらさっさと言いなさい。」
さすが、おとうさん
「えっとね、今夜は少しだけ帰りが遅くなってもいい?」
大学生の彼のバイトが終わってからのデートはいつも時間が短くて、せめてバレンタインくらいはゆっくり会っていたいんだもん
でも案の定、おとうさんはムッとした表情になって
「遅いって、何時になるんだ?」
「んっとね、10時…ううん、9時半でいいの。」
「おまえはまだ中学生だろ?ダメだ、8時には帰って来なさい。」
「えー、お兄ちゃんだって今日はデートで遅くなるのに。」
「それとこれとは…とにかく早く帰って来なさい。」
仕方ない、奥の手を使おう
「おかあさん、がっかりすると思うな〜。」
「なんでだよ?」
「バレンタインの夜におとうさんとふたりっきりなんて久しぶりだから、すっごく張り切って料理とかケーキとか作ってるよ。何日も前から楽しみにしてたみたいだけど、いいの?」
「親をからかうなといつも言ってるだろう。」
眉をしかめてため息をついたおとうさんに勝てる気がして、ここぞとばかりに抱きついた
「わーい、ありがとう。じゃあ9時半でいい?」
「調子に乗るんじゃない、8時半だ。」
「え〜、せめて9時!お願い。」
「ったく…」
勝った
「心配しなくても大丈夫だよ、帰りはちゃんと送ってくれるから。」
「それが一番心配なんだろう。」
消え入りそうな声でつぶやいたおとうさんは無視して、早速出かけることにした
「じゃあ、いってきまーす。」
二階の部屋で着替えをすませ、キッチンにいるおかあさんに声をかけに行くと
「!!!」
今にもキスしそうなほど、おかあさんと顔を寄せ合っているおとうさんと目があってびっくりした。
「お、お邪魔しました…」
慌ててキッチンのドアを閉めると
「えっ?あっ、気をつけてねー。」
全く動じていない様子のおかあさんの声が聞こえてきて、思わず心の中でエールを送る
『頑張れ、おとうさん。』
fin
※卓のお誕生日なのに肝心の卓は出て来ないという💧パパとの書き分けが難しくて…うーん。
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