『strawberry 7』
深夜の肌寒いキッチンで
重ねられた唇は昼間とは比べものにならないほど熱く、一瞬で激しい感情の波に飲み込まれてしまうほどだった
優しくわたしの頬を包んでいた大きな手はいつのまにか首筋をなぞり背中から腰の辺りを妖しい動きで行き来している
唇から侵入して来た彼の舌に誘われるようにしておずおずと差し出した舌先は、食べられてしまいそうな勢いで捉えられ頭の芯まで痺れさせていく
「んっ…」
耐え切れず膝から崩れ落ちそうになった瞬間に…すっ、と激しいキスから解放された
「こんな時間にされるがままになるなよ、止められなくなるだろ」
「へっ?」
自分からしたくせに
「るっせぇ、バカ」
はいいっ?
次の瞬間
朝と同じように混乱しているわたしを置いて、彼は姿を消してしまった
「いったい、なんだったの?」
眠れないまま夜が明けて14日
「ハッピーバレンタイン♡」
「全然ハッピーじゃねぇよ。昨日一日で俺がどれだけ疲れたか分かってんのか?」
学校が終わってから彼のアパートでだいたいの説明を聞いて
「そっか、わたしを危険から守るためだったんだね」
「まぁ、一応…な」
「チョコレートはいらないって言ったのも?」
「おまえが甘いものに近づかないようにしたかったんだが、上手くいかなかったな」
事情が分かれば昨日の彼の行動も納得はできた
でも、なにか引っかかることがあった気がしたんだけど…なんだっけ?
「と、とりあえずコレ食べてくれる?」
昨夜(正確には日付が変わってたから今日の未明?)彼が帰ってから仕上げた苺のチョコレートがけをピックに刺して差し出すと
「わかったよ』
わたしの手首を掴んで苺を引き寄せると一口で食べてしまった
「えっと、やっぱり甘い?」
「いや、そんなに甘くはねぇよ。昨日のアレに比べれば…な」
彼は意味あり気な表情で言ってから、照れくさそうに視線を逸らした
アレって
もしかして、もしかしなくても
「あっ!」
「なんだよ?」
よく考えたら3回目のキスってしなくても良かったんじゃ?だって、すでに困った事態に陥ったわたしを助けてくれた後だったから結界はもう要らなかったはず
「何度も同じことを言わせるなよ」
彼は頭を抱えてため息をつくと、腕を伸ばしてわたしの体を抱き寄せた
「え?」
「理由がなきゃしちゃいけねぇのかよ…こういうこと」
「!」
そっと触れるだけの優しい口づけは、甘酸っぱい苺と春の匂いがした
fin
※今回もお付き合いいただきありがとうございました。出来ることなら読んでくださった方全員にチョコレート🍫をお送りしたいくらい感謝しています💕またお時間がありましたら遊びに来ていただければ嬉しいです にあ