『strawberry 6』
「どこ行ったんだよ、あいつ」
誰もいない彼女の部屋でふと時計を見ると、すでに午前0時を過ぎてしまったことに気がつき血の気が引いた
日付が変わる前に3回目のキスは間に合わなかった
だとしたら、ほんとうに彼女の身に何か起きてしまったのではないか
慌てて力を使い意識を集中させると、階下でかすかに彼女の気配がする
「…キッチン?」
しかし
物音を立てぬよう静かに移動した一階のキッチンにも彼女の姿は見当たらず
いよいよ焦りながら、もう一度神経を研ぎ澄ませると
『誰か気づいて』
「!」
ようやくテーブルの上の苺の姿になった彼女を発見した
「なにやってんだよ、こんな夜中に」
手の上に苺を乗せるとほっとして、独り言のようにそう問いかけた
『あの、とりあえずコショウをかけてもらえると…』
そうだ
変身した彼女が元の姿に戻るには、くしゃみをしなければならなかった、が
「んなもん必要ねぇよ、俺を誰だと思ってるんだ」
『えっ?』
魔力で元の姿に戻した彼女を腕の中にきつく抱きしめた
「ごめん、もう少し早く来てやれば良かったな。」
「どうして謝るの?わたしが勝手に苺になっただけなのに。」
「それは…」
婆さんのいいかげんな予言を良いように解釈してやるなら、0時を回る前にキスで唇を塞いでいれば彼女は変身せずに済んだ…ということかもしれないが
「今夜は遅いから詳しいことは明日またゆっくり、な」
「う、うん?」
キョトンとした表情の彼女から離れて自分のアパートに帰ろうとしたが、どうも気持ちがスッキリしない
ああ、そうか
「3回目をするつもりでいたからな」
「な、なに?3回目って?」
薄々勘づいているのか、苺のように赤くなった柔らかい頬を手のひらでそっと包む
「何だか当ててみろよ」
「!!」
俺の意地悪な質問には答えずに彼女はぎゅっと瞳を閉じた
continue(次回に続きます)↓
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