『last christmas 7』
「それ、開けてみてくれないか?」
ようやく温まった体を寄せ合い軽く唇を重ねたあとで、彼女にさっき渡した箱の中身を見るように促した
「うん…」
包みを開いた彼女はちょっと不思議そうな表情をした
「これって…スカーフ?」
「まぁ、そうだけど…貸してみな。」
紺色に小さな白いドット模様のスカーフを彼女の手から受け取ると
「えっ?」
彼女の長い髪を束ねて鎖骨のあたりで結んでやる
「もしかして、この前わたしが言ったこと気にしてたの?」
一瞬、驚いたような顔をしたあとで彼女は両手で口元を覆って笑いだした
「笑ってんじゃねーよ。」
たぶん半分は冗談で言ったのだろうが、ほんとに痛い思いをしているのだとしたら悪いと思い簡単に髪を縛ってやれそうなものを探してきたのだが
やはり、選んだ理由が不純過ぎるプレゼントだったかもしれない
それでも
「これってシルクだよね?すごく綺麗、ありがとう。」
そう言って俺の胸にふわりと収まった柔らかい体をきつく抱きしめ今度は深い口づけをする
ああ
相手を自分の手の届く場所に縛り付けておきたいのは、むしろ俺の方なのかもしれない
「今夜は…」
「えっ?」
「今夜は眠れると思うなよ。」
「!」
真っ赤になって下を向いた彼女をそっと横たえると今夜の雪のように真っ白な肌に埋もれていった
〜おまけ〜
「嘘つき。」
「だから悪かったって、さっきから謝ってるだろう。」
いくら恋人同士として過ごす最後のクリスマスだったとはいえ
ムードに当てられ過ぎて余計なことを言ってしまったと、朝になって後悔する羽目になってしまった
なぜなら
あれから一時間も経たないうちに、合宿トレーニングの疲れから意識を失うようにして熟睡してしまい
「まぁ、朝まで眠れなかったって意味ではその通りなんだけど…」
何も身に着けないまま眠り込んだ俺の体が冷えないか気になって、彼女はほとんど眠れなかったらしく
「しかも、自分で結んだくせにやっぱりほどいちゃうし…わたしの髪。」
「ごめん、それも全然覚えてない。」
「冗談よ、ほんとに怒ってるわけじゃないからね。疲れてたんだもん…しょうがないよ。」
小さなため息をつきながら、優しく笑った彼女が次に囁いた言葉は苦味が効いたチョコレートケーキのような甘さだった
「朝まで眠れなくしてもらうのは結婚してからの楽しみにとっておくね。」
「…」
たしかに
結婚というのは俺が想像しているよりもずっとハードなものなのかもしれない
fin
Merry christmas にあ
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