※このお話はいつもの高校時代ではなくプロポーズから後のお話になります。
『midnight 3』
『どうしたい?』
えっと
ええっと
いつのまにか繋がれていたはずの彼の手は、わたしの髪や頬を優しく撫で始めていて
彼の質問に対する答えになっていないのは分かっているけれど
「大好き」
これ以外の言葉が見つからなくてわたしも彼の頬に触れながら、溢れ出しそうな気持ちを伝えた
彼はほっとしたようにフゥーっと息を吐いて、「知ってる」と言いながらわたしを優しく抱きしめて
いつもだったら、そこからは完全に彼のペース…になるのだけれど
なぜか
触れるだけの軽い口づけを頬やおでこに繰り返しながらわたしの背中をそっと撫でるだけの大きな手はなかなかその先には進もうとせず
やっぱり疲れてる?
それとも、あんまり考えたくないけどそんな気にならないとか?
もしくは…飽きちゃった?
「飽きるほどやってねぇだろう馬鹿…っていうか一生飽きねぇよ」
「!」
耳を疑うような言葉の後、さらに
「もう少し手加減してくれ…」
意味深なことをつぶやきながらわたしの首筋に唇を這わせた
『飽きちゃった?』
いったい何をどうしたらそんな発想になるのか
元はと言えば、俺が疲れるんじゃないかとか寝不足になるんじゃないかとか余計な心配をして消極的になってたのはそっちだろう
こっちは彼女が嫌でないのなら毎晩だって抱きたいに決まってる
ただ
今夜はいつもみたいに俺が一方的にことを進めるのではなく、せっかくだから彼女が気にしていたこと…されるがままでどうしたらいいか分からないという悩みに寄り添ってみてもいい
そのつもりで聞いた『どうしたい?』だったが、『大好き』と返されてむしろほっとしている自分もいた
着痩せするタイプ…とまでは言わないが、細い割に驚くほど女性的で柔らかい体
少しの刺激で朱く染まり、簡単に口づけの跡が残ってしまう透き通るように白い肌
声を上げないように俺の背中にしがみついてその瞬間を待っている潤んだ瞳
今のままでも十分過ぎるほど俺を限界に追い込んでしまう彼女に、能動的に何かをされてしまったら…
口に出せない思いを抱え、抑えきれなくなった欲求に突き動かされて口づけをしながら彼女のパジャマを剥ぎ取ると下着の中に手を差し入れた
結局
いつもと同じように彼女という温かく深い海に呆気なく沈んでしまった後、陸地にはい上がって呼吸を整えていると
「あの…手加減てどういう意味?」
俺の背中に手を回したままで彼女が上目遣いに聞いてきた
一瞬
いつものようにからかうかはぐらかそうかと思ったが
今夜は少しだけ素直になろうと心を決めて彼女の耳元で囁いた
「それ以上綺麗になるなって意味だ」
fin