『bubble 4』





その夜


お互いの気持ちを探り合うような彼とのやり取りをお風呂の中で思い出して


ボディソープの泡に包まれた身体をぼんやりと眺めながら、いつも言葉は荒っぽいけれどこの泡のように優しくわたしを守ってくれている彼の気持ちを考えていた


多分、わたしがクラスメイトと気まずくならないようにって気を使ってくれたんだよね


そしてもちろんわたしの事を信じてくれているからあの言葉になったんだってこともちゃんと分かってる


分かっているのだけれど


やっぱり心のどこかで『行くな』と言って欲しかったわがまま自分が嫌になる


だから


「ごめんなさい、やっぱりわたし…」


鈴木君には申し訳ないけれどお店に電話して断ることにした


「そっか、こっちこそごめんね無理に誘っちゃって。」


明るい声でそう言われてほっとしたのだけれど


「お詫びにお土産持って行くから楽しみにしてて」


「えっ…」


思いがけない言葉に驚いている間に電話は切られてしまった



そして、その言葉通り



日曜日の夕方に鈴木君はうちを訪れてくれて


「これ良かったら彼氏と食べて」


おそらくケーキが入っているのであろう箱をわたしに差し出した


えっと、今なんて言った?


彼氏って、彼のこと?


「あのっ、それってどういう…」


「一昨日の夜、君の彼氏がうちの店に来たんだ」


一昨日っていうとわたしが彼に鈴木君の話をした日


「君を誘うのをやめて欲しいってお願いされちゃって」


「えっ?」


だって、あの日彼は行ってもいいって


「なんか、ばれちゃってたみたいで…僕が君のこと気になってるのが」


「!」


「彼氏がいるのは知ってたんだけどあわよくば、なんて思っちゃったんだよね」


わたし


やっぱりバカだ


自分の鈍感さに腹が立って泣きそうになってしまったわたしを見て


「あっ、誤解しないで。彼はほんとに申し訳なさそうに頼んでくれて…決して脅されたりした訳じゃないからね」


鈴木君は慌てたようにそう教えくれた


「じゃあ、また学校でね…っていうかこれからも友達でいてくれる?」


「もちろん」


何とか笑顔で伝えることが出来た言葉は紛れもない本心だった




continue(次回に続きます)↓