今回の「まひる野歌人ノート」は特別編ということで、

先日、『かざぐるま』を上梓された田口綾子さんに、短歌に関する31の質問にお答えいただきました!

 

 

『かざぐるま』刊行記念  田口綾子さんに31の質問

 

 

 

1.      短歌を始めたきっかけ

 

中学3年生のとき、問題集に載っていた俵万智さんの

「今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海」という歌に興味を持ったのが

きっかけだったかと思います。

ちょうど誕生日が近かったので、プレゼントをくれるという友人たちに「俵万智さんの本がほしい!」と

リクエストしまくりました。

そうして手に入れた俵さんの歌集やエッセイ集などを何度も読み返しているうちに、

自分でも作りたくなってしまったのが確か高校1年生の冬でした。

 

 

2.      好きな歌人

 

齋藤史、永井陽子、永田紅(順不同敬称略)……などなど。

 

 

3.      初めて買った歌集

 

「1.」の質問でも触れたように、最初にほしいと思った俵万智さんの歌集は誕生日プレゼントとして

もらってしまったんですよね……。自分で初めて買ったのは、枡野浩一さんの

『57577―Go city,go city,city!』だったか、あるいは『かんたん短歌の作り方』を通して知った

加藤千恵さんの『ハッピーアイスクリーム』だったか……はっきりとは覚えていません。

 

 

4.      自分にもっとも影響を与えた一首

 

僕もあなたもそこにはいない海沿いの町にやわらかな雪が降る(堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』)

 

 

5.      自分の「バイブル」といえる一冊は(歌集でもそれ以外でもOK)

 

俵万智さんの『あなたと読む恋の歌百首』でしょうか。

 

 

6.      『かざぐるま』に収録されている「闇鍋記」とても面白かったです。

早稲田短歌会在籍時の思い出で他に印象深いものはありますか。

 

良くも悪くも(?)たくさんあるのですが……。

生まれて初めてスキーに行ったのも、わせたんのメンバーとでした。色んな意味でどえらい目に遭った。

 

 

7.      歌会や批評会の場で聞いて印象に残っている言葉

 

「誰もお前のことになんて興味ねーんだよ」

もしかしたら、歌会の後の飲み会で聞いたお言葉かもしれませんが(苦笑)

 

 

8.      作歌するうえで注意していること、こだわっていることは

 

「ひとりよがりにならない」ことでしょうか。

どこかに発表する以上は、必ず読者が発生するわけですので。

 

 

9.      文語・旧仮名を選択している理由は。また文語旧仮名のどういうところに魅力を感じますか。

 

最初は完全に口語・新仮名で作っていたのですが(受賞作の「冬の火」はそうです)、

そこに文語の助動詞が混ざってきたときにどうも違和感が拭えなくて(「闇鍋記」のあたりからです)。

それならいっそ文語・旧仮名にしてしまえ!という短絡的な理由でした。

今は、文語・旧仮名の空気の含有量の多さが魅力だと思っています。ホイップクリーム的な。

 

 

10.   「短歌」の面白いところはどういうところだと思いますか

 

作るときにせよ読むときにせよ、飴玉のようにずっと口の中で転がしておけるところかと思っています。

 

 

11.   連作の歌数は何首くらいが作りやすいですか

 

7首でのご依頼を頂くことが多いので、それに慣れているというのはあるかもしれません。

 

 

12.   歌をつくるときはどのように作っていますか(スマホのメモで作る、ノートに手書きで書く、など)

 

携帯電話のメモを利用する、パソコンのWord機能を使う、紙に手書き、そのときの状況と気分によって色々です。

ここ最近、7年物のガラケーの調子が危うくなってきてしまったので、スマホの利用が増えてきたかもしれません。まだ慣れないのですが。

 

 

13.   つい何度も使ってしまうお気に入りの言葉やモチーフはありますか

 

言葉:連用形+な+む

モチーフ:水に関係するもの(歌集を編集して痛感しました)

 

 

14.   詩や俳句、川柳は読みますか(YESの場合、好きな作家やおすすめの本などもぜひ教えてください)

 

読みたい・読まねばとずっと思いつつも、お恥ずかしながらあまり手を出せておりません。

前々から気になっているのは、久保田万太郎(俳句)・時実新子(川柳)です。

 

 

15.   「まひる野」に入会した理由は

 

①“先輩”がほしかったから

長く学生短歌会にいたのですが、先輩方がどんどん卒業していなくなってしまうのが寂しくてなりませんでした。自分よりちょっと上の世代の方が「マチエール」欄にたくさんいらっしゃるという点で、「まひる野」は魅力的でした。

 

②今井恵子さんのお言葉に励まされたから

 たとえば歌一首を読む時、なぜ評価を鑑賞に優先させるのか。まずは、心の奥底に感動を刻むことが重大事だろう。真の感動は、読者を沈黙させる。評価はその後のことだ。文藝作品は評価を下すために読むのではない。閻魔帳を持って歩き回る読者が多すぎる。

(今井恵子氏のTwitter(@kassuiki)、2011年12月26日より)

 ベタな言い方をすれば、「この人についていこう」と思ったのでした。

 

 

16.   「まひる野」を動物に喩えるなら

トカゲ……?

 

 

17.   「まひる野」に入会して衝撃的だったことは

マチエール欄が……いや、これ以上は控えさせてください(汗)

 

 

18.   「まひる野」でイチオシの歌人

前に先輩方に教えて頂いた方なのですが、作品Ⅰの篠原律子さん。

  わが一生手紙に書きて門の戸に貼りて盗人来なくなりたり  (『まひる野』2014年4月号より)

 

 

19.   第一歌集『かざぐるま』を上梓されましたが、どんな歌集にしたいか、

最初から具体的なイメージはあったのでしょうか

 

全く、と言っていいほどありませんでした。

というか、「自分の歌が1冊の歌集になる」というビジョンが全く得られないまま、一連の作業を終えてしまいました。なので、装幀もぼんやりとしたリクエストしかできず……。

見本を送って頂いてようやく、「ああ、これが“私の歌集”なのかあ」としみじみしました。

 

 

20.   新人賞を受賞されてから10年ということですが、10年前と今とで、短歌観や歌の作り方で

変わった部分・変わらなかった部分があれば教えてください。

 

10年前はまだ学生短歌会にいた頃だったので、週1回の定例歌会に合わせて歌を作る→たまった歌を並べて・何首か作り足して連作にするというパターンがほとんどでした。作っていた歌も、「互選の歌会に出す」ということをかなり強く意識したものだったと思います。

今はわりと、連作単位でまとめて作ることが多いですね。ですが、昔のようにもっと1首ずつ腰を据えて作らねば、という意識はいつもあります。歌会にももっと積極的に出るようにしたいです。

 

 

21.   歌集の後半にいくにつれて生活感が濃厚になっていきますが、意識してのことなのでしょうか。

「生活感を出そう」と思ったことは一度もないです。人生(?)における“生活”の割合が否応にも増してきてしまい、それに抗いきる力もなかったのでやむを得ず……ということだと思っています。

 

 

22.   田口さんの歌はいつも嘘がなくて体当たりという印象ですが、それは田口さんのモットーだったりするのでしょうか。

 

「いつも噓がなくて体当たり」というように見て頂けているのはとても嬉しいのですが、実際はいつも嘘(?)まみれでおっかなびっくりです。もっと正面からぶつかっていくパワーがほしいです……。

 

 

23.   男子校での授業のようすや、古文の文法などを取り入れた仕事の歌がユニークで読んでいてとても楽しいのですが、仕事詠をつくるのは好きですか。

 

「古文の文法などを取り入れた」歌を作るのは、かなり好きです。ですが、いわゆる「職場詠」をしようとすると、色々なものが乱れてしまって……。歌集に入れたものはまだ「歌」の形を保っているほうだと思うのですが、ひどいものは「歌」と呼ぶのが憚られるようなクオリティなので、何とかせねばと思っています……。

 

 

24.   『かざぐるま』の中でいちばん気に入っている(思い入れのある)連作は

「闇鍋記」を除けば(笑)、「雪降ること」でしょうか。

 

 

25.   歌集制作でいちばん大変だったことは

「歌を落とす」ことだったと思います。歌集に入れることを泣く泣く諦めた歌が、初期(受賞前後の口語新仮名だった時期)のものを中心にかなりたくさんあります。いつか何らかの形で供養したいとは思っています……。

 

 

26.   『かざぐるま』をどんな人に読んでほしいですか

 

もちろん全人類にお読み頂きたいのですが、日本語だし文語だし旧仮名だし、現実的ではないですよね。

刊行から約1ヶ月が経って感じているのは、「同じような年代の国語の先生」が特に楽しんで読んでくださっているということです。そういった方々が、文語や旧仮名に対するハードルをさほど高く感じていないというのが理由だと思いますが。このハードルをどう下げていってどう広く読んで頂けるかが、当面の課題です。

 

 

27.   これからの目標は

 

*月詠をきちんと出せるようになること

*締め切りを守れるようになること

*韻律について(歌の「意味」に寄りすぎることなく)なるべくクリアに語れるようになること

*歌にする「素材」を広げていくこと

*和歌や近代短歌・評論等をもっと読むこと

*自信を持つこと

 

最初のふたつが切実です……。

 

 

28.   10年前の自分に一言

 

とりあえず、短歌やめるな。大学図書館で、もっと歌集とか評論とか読んどけ。

あと、学生としてやるべきことをちゃんとやっとけ。

 

 

29.   今いちばん気になっている歌人(若手でもベテランでも故人でも)

 

稲葉京子さん。歌集がなかなか手に入らなくて部分的にしか読めていないのですが、これまでに読んだ歌はとてもとても好きです。近々全歌集が出るとのことなので、心待ちにしています。

 

 

30.   あなたにとって「きゅうり」とは(きゅうりについては『かざぐるま』をお読みください)

 

えっ……何も面白いことを言えなくて恐縮なのですが……“災厄”……?

 

 

31.   『かざぐるま』のPRをどうぞ!

 

 相聞歌(恋の歌)・挽歌(死者を悼む歌)・職場詠・家族詠・旅行詠・二次創作短歌(?)などなど、

バラエティに富んだ歌を収録しています。文語・旧仮名で書かれている短歌は一見とっつきにくくお思いになるかもしれませんが、きっとどこかでお気に入りの一首を見つけて頂けるはずです。

また、堀江敏幸先生による帯文、岡孝治さん・鈴木美緒さんによる装幀もたいへん美しい1冊です。

お手に取って頂ける機会があれば幸いです。

 

 

 

田口さん、ありがとうございました。

(質問者 北山あさひ)

 

 

田口綾子歌集『かざぐるま』は短歌研究社より絶賛発売中です。ぜひお読みください!

 

 

 

 

 

 

 

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次週予告

8/10(金) 12:00更新 山川藍の「まえあし!絵日記帖」④

 

お楽しみに!