CMの夥しく入る番組にテレビを消して猫と遊べり 相原ひろ子
土埃ふき上ぐる春の疾風に芽ぶける森のかすみて見えず 上野幸子
野あざみのうすむらさきを空に刷きひがしに奔る五月の風は 宇佐美玲子
巡りくる季節(とき)をおのずと察知して春になるのか都会の土も 伊東恵美子
病みゐたる夫も日々につらからむ螢袋は白く咲きいづ 関 まち子
種とばし終えたる繁(はこべ)ら空あおぎカナダの孫の葉書受取る 熊谷郁子
ふるさとのはなしをしよう ラジオより流るる歌は昔むかしの 河上則子
父母の背を流ししかの日の甦(かへ)りくるこの冬越えし墓石洗へば 前田紀子
野の道を草笛鳴らし来る従兄なべてはまぼろしあかねさす昼 袖山昌子
デパートの買物ポイントの三千円まず米を買ふ 米は尊し 平林加代子
剥きてゆくマンゴーの皮ぬれぬれと艶めきやまぬわが爪の先 庄野史子
冷蔵庫の闇に芽吹ける馬鈴薯のせめぎ合ふ芽のくれなゐを掻く 稲村光子
流れの水いよいよ澄みて川底に沈む自転車の赤色ゆらぐ 松本ミエ
闘病記つづりてをれば寛解と生命(いのち)の文字が幾度も出づ 田浦チサ子
病室のひろき窓辺にこの年の花見をなせり夫と並びて 櫻井つね子
ゴキブリを弱き存在と見下せり殺すわれの鋭く荒いものが 仲沢隆
彫刻の少女のあしに触れて行く小学生は小さな指で 佐伯悦子
逝きし子と共に旅せしことなきを思い出させて山鳩の鳴く 加藤悦子
延延とつながる貨車にリズムあり遮断機の前の哀しき少年 矢澤保
土埃ふき上ぐる春の疾風に芽ぶける森のかすみて見えず 上野幸子
野あざみのうすむらさきを空に刷きひがしに奔る五月の風は 宇佐美玲子
巡りくる季節(とき)をおのずと察知して春になるのか都会の土も 伊東恵美子
病みゐたる夫も日々につらからむ螢袋は白く咲きいづ 関 まち子
種とばし終えたる繁(はこべ)ら空あおぎカナダの孫の葉書受取る 熊谷郁子
ふるさとのはなしをしよう ラジオより流るる歌は昔むかしの 河上則子
父母の背を流ししかの日の甦(かへ)りくるこの冬越えし墓石洗へば 前田紀子
野の道を草笛鳴らし来る従兄なべてはまぼろしあかねさす昼 袖山昌子
デパートの買物ポイントの三千円まず米を買ふ 米は尊し 平林加代子
剥きてゆくマンゴーの皮ぬれぬれと艶めきやまぬわが爪の先 庄野史子
冷蔵庫の闇に芽吹ける馬鈴薯のせめぎ合ふ芽のくれなゐを掻く 稲村光子
流れの水いよいよ澄みて川底に沈む自転車の赤色ゆらぐ 松本ミエ
闘病記つづりてをれば寛解と生命(いのち)の文字が幾度も出づ 田浦チサ子
病室のひろき窓辺にこの年の花見をなせり夫と並びて 櫻井つね子
ゴキブリを弱き存在と見下せり殺すわれの鋭く荒いものが 仲沢隆
彫刻の少女のあしに触れて行く小学生は小さな指で 佐伯悦子
逝きし子と共に旅せしことなきを思い出させて山鳩の鳴く 加藤悦子
延延とつながる貨車にリズムあり遮断機の前の哀しき少年 矢澤保