〈十六人集〉
地に足のつかぬ一日よ庭畑をおんころころと言ひつつめぐる 大内徳子
離れ住む子らは数値にさとくなり渦中の我はあきらめムード 森田栄子
父となり母となりたる若きらにお宮参りの歩速を合わす 広野加奈子
小春日に母の形見の着物干す竿に蜻蛉あそぶ祥月 鈴木尚美
わかりやすくゆっくり話してくれる人わたしはそんなに老いて見ゆるか 竹山秀子
職退きて初めて蒔きし大根なりすっくと土より立ち上がりたり 木本あきら
〈二月集〉
フリーズの語彙しらずして撃たれたる若者ありき万聖節に 庄野史子
詠まれたる花の名図鑑に捜し当てひとつ覚えぬ何やら嬉し 近延信子
夜の卓のりんごは紅を競い合い忘れんとする思慕甦【かえ】らせる 宇佐美玲子
七回忌に亡夫の口調そのままに孫たしなむるわれに驚く 瀧澤美智子
闘病の果てにあらざればやつれなし棺の中にいつもの温顔 岡田千代子
ふと見れば息子の老け顔悲しかりわが老いゆくは目に見えねども 栗本るみ
心停止二度ありしこと医師は言う地獄極楽見ずに帰りぬ 三浦芳靖
〈作品3〉
ファインダーの中に娘の笑顔あり信ずる人に眼ざしそそぐ 服部智
心臓の検査の腕前じまんする医師の顔みるまじまじと見る 小原守美子
前をゆく人に学べばよきものをこころまづしくお辞儀をわする 井出博子
校庭のメタセコイアの拾いし実ズボン探れど一つ見つからず 稲熊昌広
金曜は義母の通夜なり縁戚に迷惑かけじと願ひしゆえか 樽本益治
地に足のつかぬ一日よ庭畑をおんころころと言ひつつめぐる 大内徳子
離れ住む子らは数値にさとくなり渦中の我はあきらめムード 森田栄子
父となり母となりたる若きらにお宮参りの歩速を合わす 広野加奈子
小春日に母の形見の着物干す竿に蜻蛉あそぶ祥月 鈴木尚美
わかりやすくゆっくり話してくれる人わたしはそんなに老いて見ゆるか 竹山秀子
職退きて初めて蒔きし大根なりすっくと土より立ち上がりたり 木本あきら
〈二月集〉
フリーズの語彙しらずして撃たれたる若者ありき万聖節に 庄野史子
詠まれたる花の名図鑑に捜し当てひとつ覚えぬ何やら嬉し 近延信子
夜の卓のりんごは紅を競い合い忘れんとする思慕甦【かえ】らせる 宇佐美玲子
七回忌に亡夫の口調そのままに孫たしなむるわれに驚く 瀧澤美智子
闘病の果てにあらざればやつれなし棺の中にいつもの温顔 岡田千代子
ふと見れば息子の老け顔悲しかりわが老いゆくは目に見えねども 栗本るみ
心停止二度ありしこと医師は言う地獄極楽見ずに帰りぬ 三浦芳靖
〈作品3〉
ファインダーの中に娘の笑顔あり信ずる人に眼ざしそそぐ 服部智
心臓の検査の腕前じまんする医師の顔みるまじまじと見る 小原守美子
前をゆく人に学べばよきものをこころまづしくお辞儀をわする 井出博子
校庭のメタセコイアの拾いし実ズボン探れど一つ見つからず 稲熊昌広
金曜は義母の通夜なり縁戚に迷惑かけじと願ひしゆえか 樽本益治