<マチエール>
カレンダー白きまま夏は近づけり 素足で砂を踏むような日々 後藤由紀恵
神の手のようにわたしが抱いている猫を上から父が取り去る 山川藍
引っ越してベランダの幅に足らざれば捨てたり春の物干し竿を 染野太朗
ひめじょおん咲く野を巡る白き蝶マ行の響きを子と唱えたり 富田睦子
桃の実を消音マットに落としたりまだ青ければ傷をつけずに 小島一記
なすべきこと多きひと日よ汁の実に豆腐賽の目に切り分けて 米倉歩
少しだけ日に焼けし腕に空色の子のTシャツは夏の保護色 木部海帆
ダイエット成功しつつある夏至の夕べわたしを吊らんと糸垂る 佐藤華保理
死ぬことを許されぬ者の物語一年に一度空を確かむ 小瀬川喜井
内臓より逃るることのかなわねば睾丸の数またも確かむ 加藤陽平
母に似たくしゃみをしたり母もまた祖母に似ているくしゃみをしたり 川嶋早苗
高熱が出たと告げても「そうですか」で会話止まれば出勤決意 倉田政美
撓みたる尻を眺むる湯屋にいて血しぶくほどの恋愛が欲し 稲本安恵
知らぬ間に膿みて腫れたるあしくびの傷癒えんころ君に会えるか 荒川梢
努力でも才能でもない風向きが最後の最後に勝負を決める 小原和
<十六人集>
水溜りに接吻するがに水飲みて子猿母猿森に消えたり 相原ひろ子
夏の日のかげれば青田の畔に来て葉先に露の生まれるを見る 馬場ミヨ子
磨かれしホテルの鏡われでなきわれ現るる予感にのぞく 袖山昌子
金星はいま太陽を過ぎむとし藍の紫陽花おもおもと重る 岡田貴美子
安全とみなされたるやいく度も蜂が巣を作るわが家の軒は 井上成子
<作品Ⅱ>
残されしたつた二人の姉妹をそつくりさんと孫達は笑ふ 三浦伎世江
カレンダー白きまま夏は近づけり 素足で砂を踏むような日々 後藤由紀恵
神の手のようにわたしが抱いている猫を上から父が取り去る 山川藍
引っ越してベランダの幅に足らざれば捨てたり春の物干し竿を 染野太朗
ひめじょおん咲く野を巡る白き蝶マ行の響きを子と唱えたり 富田睦子
桃の実を消音マットに落としたりまだ青ければ傷をつけずに 小島一記
なすべきこと多きひと日よ汁の実に豆腐賽の目に切り分けて 米倉歩
少しだけ日に焼けし腕に空色の子のTシャツは夏の保護色 木部海帆
ダイエット成功しつつある夏至の夕べわたしを吊らんと糸垂る 佐藤華保理
死ぬことを許されぬ者の物語一年に一度空を確かむ 小瀬川喜井
内臓より逃るることのかなわねば睾丸の数またも確かむ 加藤陽平
母に似たくしゃみをしたり母もまた祖母に似ているくしゃみをしたり 川嶋早苗
高熱が出たと告げても「そうですか」で会話止まれば出勤決意 倉田政美
撓みたる尻を眺むる湯屋にいて血しぶくほどの恋愛が欲し 稲本安恵
知らぬ間に膿みて腫れたるあしくびの傷癒えんころ君に会えるか 荒川梢
努力でも才能でもない風向きが最後の最後に勝負を決める 小原和
<十六人集>
水溜りに接吻するがに水飲みて子猿母猿森に消えたり 相原ひろ子
夏の日のかげれば青田の畔に来て葉先に露の生まれるを見る 馬場ミヨ子
磨かれしホテルの鏡われでなきわれ現るる予感にのぞく 袖山昌子
金星はいま太陽を過ぎむとし藍の紫陽花おもおもと重る 岡田貴美子
安全とみなされたるやいく度も蜂が巣を作るわが家の軒は 井上成子
<作品Ⅱ>
残されしたつた二人の姉妹をそつくりさんと孫達は笑ふ 三浦伎世江