4月号の作品①

<作品Ⅰ>

三陸ゆきの夜行バスあり時刻表見るのみなれど見むと立ち寄る   橋本喜典

こしかたをかへりみるときこの花屋小さくなりて坂に残れる   篠弘

一仕事終えたるときにがらがらとうがいする癖空を見ながら   小林峯夫

余儀もなく田老大槌閖上【たろうおおつちゆりあげ】とう地名覚えし年あらたまる   大下一真

ゆくりなく青空は見えこころはも躍るがごとし地下階を昇る   島田修三

ゆるやかな坂をのぼりて一歩づついつでも丸い山へ近づく   柳宣宏

遠き日の記憶に遊ぶ冬の日は雪より霙、霙より雨    柴田典昭

退職ののちに静かな午後は来て生家の衰微を夫がつぶやく   今井恵子

額縁を替えてわが家になじみくる「雪の息吹嶺」ひかりを返す   曽我玲子