『まひる野2月号』

作品Ⅰ


真夜中の地震(なゐ)にめざめてひとり居のひとを思ひておれば地震止(や)む   橋本喜典

読まざりし本を上にしこの秋に求めし古書を積み直しゐる   篠弘

もう何もできないでいて若き日を語る歯ざわり生麩のごとし   小林峯夫

台風の名残の風の吹く笛の鋭く長く遠き夜明けか   大下一真

五十年むかしを記憶にきざむ身のゼミへ向かへば行旅のごとし   島田修三

側溝に冬の真水のひびきたる日蔭の道に白玉椿   柳 宣宏

蜘蛛の糸ひと筋ひかるを手刀で切りて夜伽の膳ととのうる   曽我玲子