マチエール


やあやあと手を振りながら去りゆくは秋の薄暮とわれの若さと   後藤由紀恵


三日ほど咳鼻水の止まらぬにそれを風邪だと思えずにいる   染野太朗


弟の子と吾子の名前合わせれば父の名となりやさしく光る   木部海帆


枯れかけた芝にカタバミ残りおり夫も吾子も長子だわれも   富田睦子


大口を叩いて先に帰りたる祝賀会ありき学部生のころ   小島一記


イヤリング母からもらうなんだこれ中華のたれか何かついてる   山川藍


やまいだれ背負いたる祖母のにほひたつ獣のやうな手紙なりけり   稲本安恵