十七人集

あと幾度母に巡りて来る秋かふる里の野に揺るるコスモス   岡本弘子

うしろ手にトコトコ散歩する母と共に見ているウスバカゲロウ   中畑和子

激情に体うねらす指揮者からみるみる音の渦巻きが立つ   今川篤子

他界せし人と夜な夜な話しいる母の痴呆は楽しきらしも   三宅昭久


十二月集

ネギ掘りにいでゆくわれに孫の言うがんばらないでがんばってきてね   小原守美子

表札は生きゐしままに掛けておく吾が果つるまで子は主なり   近藤恭子

作品Ⅲ


取り替へのきかぬはパズルのピースにて人間の身体はパーツより成る   柴田仁美