昨夜、星供・一座を修しました。星供(星祭り)本尊とされる、いわゆる星曼荼羅(北斗曼荼羅)は、仏頂尊の一種である一字金輪、より正しくは、釈迦金輪が中尊となっています。仏頂尊については、いまだ不明なところ多々あるのですが、ここでは、佐々木大樹氏のご研究「釈迦金輪研究序説」をたよりに、釈迦金輪についてご紹介してみます。
仏頂尊は、仏・如来の、ここでは釈尊がそなえる三十二相のうち、頂上肉髻相(uṣṇīṣa)を尊格化したもの(、釈尊の頭頂より生し化身[応身])であり、如来眼(如來眼印呪之十六)、如来眉毫(如來眉毫印呪之十七)をはじめとする(菩提流志訳『一字仏頂輪王経』、『五仏頂三昧陀羅尼経』など)、いわゆる「如来衆徳荘厳尊」に準ずる尊格とされます。阿地瞿多訳『陀羅尼集経』では、すでに「釈迦仏頂」としての帝殊羅施(tejorāśi帝殊羅施金輪佛頂心法印呪第十四)・釈迦金輪仏頂(第三座主名・釋迦金輪佛頂)・白光明仏頂(白光明佛頂印第十六)・放光仏頂・一字仏頂(一字佛頂法呪第三十二)、そして微妙声仏頂(東面北頭第一座主名・微妙聲佛頂)・阿弥陀仏頂・一切仏頂・阿閦仏頂・宝相仏頂等の名称が見られますが、相互の関係性等については不明な点が多い、とのことです。
Wikipedia「一字金輪仏頂」の項に紹介される、釈迦金輪(金輪仏頂)の尊容の原文は、『陀羅尼集経』巻第一「身眞金色、著(790a25)赤袈裟、戴七寶冠、作通身光。手作母陀羅、結跏趺坐、七寶莊嚴蓮華座上。其華座下竪著金輪、其金輪下畫作寶池」です。
一字金輪仏頂(、ここでは釈迦金輪)の、「一字」とは釈迦如来と不可分の関係にあり、絶大な威力を有する呪句である「ぼろん」(bhrūm)のことであり、「金輪」(八幅金剛宝輪)は転輪聖王(cakravartirājan)の七宝のひとつ「金輪」に由来します。したがって、一字金輪とは、仏頂尊の最勝尊として君臨する、と解されるのです。ですから、星曼荼羅では、その中央、二龍王のとりまく須弥山上に坐し、下方に北斗七星、中央と周囲に九曜、第二院は十二宮、第三院は二十八宿を統べる尊格として、金輪(八輻金剛宝輪)を手に、北極星を体現して描かれているのです。
釈迦金輪がもつ「一字」の威力は、「尊勝仏頂」(Vijayoṣṇīṣa)という新たる仏頂尊を生み出した、といいます。さらに転輪聖王としての「金輪」は、『大日経』(胎蔵マンダラに五仏頂、三仏頂を配する)、『金剛頂経』成立の後、マンダラの尊格である大日如来と結びつき、尊勝仏頂を経て、「大日金輪」という尊を生み出すことになる、というのです。仏頂尊は日本密教において、とても重要で、興味ある尊格なのです。(「如来衆徳荘厳尊」をはじめ、仏頂尊についてはいまだ学習不足で、筆者には不明なところが多々あります。)