約40年以上前最初の妻に死なれた。

 これはその時の火葬場での話:

 東総地区(千葉県東部)の某所に火葬場は在った。そこに着いて順番を待っていると職員が寄ってきて、すくっと立って威儀を正した。

 “一つお尋ねを致します”と言う。

 “はぁ、はい?”

 “骨壷はお持ちですか”

  火葬場に行くのに骨壷を用意している者は普通は居ない。

  やや疑問に思いながら、

  “あの、此処に有るんでしょうか”と聞く。

  すると彼は言う、

  “いえ、お尋ねをしているんです”

  何とも不愉快な遣り取りだったが「持って居ないのでお願いします」と頼んだ。



   ややあって次の一行がやってきた。

  しばらくすると、また先程の彼等の一行に寄って行って、またもや、すくっと威儀を正し、

  “一つお尋ねを致します” と言う。

 “はぁ、はい?”

 “骨壷はお持ちですか”


   その後、我々の場合と全く同様の遣り取りが繰返された。

  何と意地悪なヤツだろう!!!


  それから暫くの間、“いえ、お尋ねをしているんです”と言うのは我々のジョークの種になった。



  職員のことを当時は隠亡(おんぼう)と呼んだ。永い永い伝統のある言葉だが今は差別用語と見なされて使われなくなっている。