この家は、ラジオの音がよく響く。
二階の廊下で洗濯物を干していると、キッチンの横でつけたラジオから聞こえる、誰かの声。
私以外誰もいなくなった家は静かで、少し落ち着かない。

慌ただしいことに慣れてしまって、何か思いついても、いつかやろう、と『保留』の引き出しにしまうことが当たり前になっていた。
子どもが少し手を離れて来た今、『保留』の引き出しを時々開けてみる。
いつか、が来る日が本当にあるなんて、信じられなかったな。
胃が痛い!死ぬほど痛い!腸も大変なことに!!という状態になって、救急外来に行ったら。
後からかつぎこまれて来た男性のほうがよっぽど大変そうで、でも先生たちは全然緊迫してなかったので、死ぬまでは相当幅があるらしいと思った。
そして、病院の人たちが、私のことを「下痢で」「下痢で」と申し送りするので、やめてほしかった。いや、確かにそうなんだけど。
たかが下痢で来たのかよ、と思われちゃいそうじゃない。いや、間違いじゃないんだけど。



【次郎ちゃんがうちに来た。
 小さくて、いつも泣いてて、
 僕の指をぎゅってする。
 次郎ちゃんはかわいいけれど、
 ところで、
 ママのおなかの赤ちゃんは
 どこにいったんだろう?】


お産入院が明けて、次郎を連れて帰ると、太郎が「ママの(おなかの)赤ちゃんは?」と聞いた。ここでもぞもぞしている一番小さい人がそうです。