むか~しむかし。
あるところに地蔵トリオが居りました。

向かって左は白塗りにこけた頬が印象的な、ユニ地蔵さん。
右は半分機械で出来ている、ピロボ地蔵さん。
そして真ん中の泥色の肌を持った、マホ地蔵さん。

三人の地蔵さまは人里離れた雪道に、いつもじっと立って居りました。



というのは、人が居ないときのこと。
実際の地蔵さまたちは、誰も居ないと見るや動き出し、温泉に浸かったりして楽しんでいました。

ユニ地蔵「この温泉は美肌に良いらしいわよ。」

ピロボ地蔵「機械のカラダにシミワタルー。」

マホ地蔵「ピロボ地蔵ったら、ちょっとショートしかけてるわよ!ちうい!」



ユニ地蔵「やっぱり温泉は温まるわ~。」

ピロボ地蔵「美肌・・・ビハダ・・・。」

そのとき、雪を踏みしめる足音が聞こえてきました。

マホ地蔵「ハッ、誰か来る!みんな、定位置に戻って!」




ピロ婆さん「だけど~あるんだよ~みあげーてーごーらーんー音譜
(Song by 星の王子さま)

それはひとつ山を越えた集落に住む、ピロ婆さんでした。
ピロ婆さんは、数日前に町へ出稼ぎに行っていたのです。

マホ地蔵「(おや、ピロ婆さん久しぶりだわ)」

地蔵さまたちが立っているところは、めったに人の通らない道でした。
たまたま温泉が出るからと近い集落の人間が湯船を作ってみたものの、
人も通れぬ獣道を歩かなくてはならない場所。
地元の人間は雪の少ない街道を歩いて、町へ行き来しています。

ユニ地蔵「(湯あがりの体が冷える・・・はやく通り過ぎておくれ)」

マホ地蔵「(んだ、すごくさぶい)」

ピロ婆さん「・・・。」

ピロ婆さんは道に迷ったのではありませんでした。
正月を越すために、町で金を稼ごうと思ったのに、うまく商売が出来なかったのです。
そのため、このままでは正月を向かえられない・・・と落ち込んで遠回りをしていたのでした。



ピロ婆さん「はぁ・・・こんなお金では正月の餅も買えやしない・・・。」

地蔵さまたちはピロ婆さんを可哀想に思いました。
でもそれと同時に、温泉で温もった体が冷え切っていくのも感じました。

マホ地蔵「(ピロ婆さん、その話、なごなる?)」

ピロ婆さん「あらっ、地蔵さまたち・・・体が冷え切ってるだな・・・。」



ピロ婆さん「売れ残りの笠とピッツァと、パンケーキだど。」

ユニ地蔵「(町に行ってピッツァ売ってきたの?)」

マホ地蔵「(オサレ)」

ユニ地蔵「(うむ、オサレ)」

ピロ婆さん「あと漫談で使ったギターもかけとくべ。みんなで歌ってけろ。」

漫談しながらピッツァとパンケーキを売る、ピロ婆さん・・・。
意外と客が集まりそうなのに・・・と地蔵さまは思った。



ピロ婆さん「売れ残りを取っ払ったらなんだかスッキリしただ。主に肩のへんが。」

ユニ地蔵「(荷物が重かっただけかよ!)」

ピロ婆さんは足取り軽やかに帰っていった。



マホ地蔵「ふう・・・やっと帰ったわね。」

ピロボ地蔵「結構美味しいロボ。」

ユニ地蔵「(ピロボ地蔵・・・今の間、消えてたような・・・)」

注・手前に居るSHOPの人型はハリボテです。

突っ込んではいけないところを思わずツッコミそうになるユニ地蔵でした。



マホ地蔵「ギターが邪魔で食べにくい・・・!けれど、ピロ婆さんの気持ちはありがたいわね・・・!」

ユニ地蔵「んだ。」

ピロボ地蔵「恩返しに行くロボー!」

マホ地蔵「いいえ、ただの恩返しじゃないわよ・・・やられたらやりかえす・・・倍返しだっ!

手垢のつきまくった流行語を使って、マホ地蔵はビシッと決めました。

ピロボ地蔵「プークスクス!今頃半沢だロボー!」

ユニ地蔵「しばかれるわよ!」

ふたりの地蔵さまもツッコミは入れながらも、同じ気持ちでおりました。



ピロ婆さんの家。

ピロ婆さん「はぁ・・・正月の~餅はなくとも~紙はある~・・・ピロ婆、心の俳句。」

トイレットペーパーの買い置きだけは、たくさんあるようです。



ベッド代わりの愛犬にくっ付いて、寒さをしのぐピロ婆さん。

ピロ婆さん「フランダース・・・僕、もう疲れたよ・・・。」

「フランダースの犬」を気取ってみるものの、犬の名を間違うピロ婆さん。

リアル視聴世代ではないのでした。

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そしていつしか、ピロ婆さんは眠りにつきました。



そこへ、ピッキングを駆使して地蔵さまたち参上!

マホ地蔵「こんなの、余裕です。」

ユニ地蔵「でたー!榎本怪!」

マホ地蔵「径(けい)だよ!怪(かい)じゃないわよ!」

ユニ地蔵「妖怪に似てるからピッタリなのに。」

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ユニ地蔵「疲れ果てて寝ているわね・・・。」

マホ地蔵「可哀想に。ここに5000万円入りそうなバッグを置いておくからね。」

ユニ地蔵「バッグだけかよ!」

マホ地蔵「ちゃんと中身も入ってるって。少しは。」



マホ地蔵「そう言うユニ地蔵は何を持ってきたのよ。」

ユニ地蔵「ほーら、獲れたての魚よ!」

マホ地蔵「な、生もの・・・。」

ユニ地蔵「・・・さぶいから大丈夫でしょ・・・。」

マホ地蔵「生け簀に入れときなさい。」

ユニ地蔵「そうね・・・。」



地蔵さまたちはありったけのお宝を集めてきました。
マホ地蔵さんは、村人のお供えを逐一換金して貯蓄していたのです。

マホ地蔵「この中にはピロ婆さんがお供えしてくれた分も入ってるんだから、遠慮なくもらいなさい。」

ユニ地蔵「んだんだ。」



朝日が昇る前に、お地蔵さまたちは帰っていきました。



そして翌朝・・・。



ピロ婆さん「ややっ、これは何事!」

ピロ婆さんの目の前に、金銀財宝の山がありました。


ピロ婆さん「天の恵みじゃ~い!ひゃっほーい!ピロ汁ブシャー!」

なんか汁まで出てしまいましたが、ピロ婆さんはとても喜びました。

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しかしその汁のにおいを嗅ぎ付けて、隣の強欲ユニ婆さんがやってきたのです・・・!


ユニ婆さん「匂う・・・匂うぞ・・・!」

ピロ婆さんの運命やいかに!!!
次回「マホ地蔵の倍返し」後編をお楽しみに!!!

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