まだ蝉しぐれはやんでいない。

秋だということも忘れさせるような夏空が広がっている。

長袖を着る機会もほとんどない。

 

そんな九月の半ば、地震で目がさめた。

震度としては大した揺れではなかったはずだ。

それなのに、とても大きく揺れている気がした。

 

たぶん気持ちの揺れと同調するのだろう。

 

現在、精神的にいろいろ揺れ動いている。

いや、もしかしたらもう何年も何年も心の奥深いところでは揺れ続けてきたのかもしれない。

未来の僕が今までの僕を振り返って、ああそんな時期もあったんだっけ、と笑いながら思える日が来るのだろうか。

僕は来ると思いたい。

 

アゲハ蝶が目の前を横切った。

夢の世界へ連れていってあげるよというように、軽やかにきらびやかに飛んでいく。

 

そして僕は公園のブランコに乗った。

 

木々の緑は僕にやさしい。

親子の会話が微笑ましい。

おだやかな風は僕を包む。

 

僕はまだ、世界のやさしさを信じたいと思える心を持っているらしい。

優しさと易しさと。