Grotesque Identity

難しい仕事

彼の今の仕事は、中小企業がお客さん。企業の業務に必要な法的手続きを調べて書類を作る行政書士業務。「仕事難しい？」と聞くと、「難しい」。「やり遂げられそう？」と聞くと、「わからん。でもやらなあかん。」この会社に入ってから、そんなやり取りを幾度となく繰り返してきた。Kスタッフの高砂さんから彼の人格を貶めるような酷い評価表を渡されて、私は神経症のようになっていた。でも、彼は難しいながらも着実に一つ一つの案件をこなして来た。心配無用だった。書士会の研修にも参加する。無能力、コミュニケーション能力がないと佐々木にこき下ろされ、目の動きがおかしいと大倉に難癖をつけられ、空間認知能力が低く作業速度が遅いと高砂に評価された彼が。もう少しで1年だ。