残業が長引きタクシー帰りのある10月の真夜中。
六本木から西麻布の交差点に抜ける細い裏道を走っていた時の事。
同乗していたサーティーンガールが、タクシーの窓から外を見て、
「路地裏って素敵だよね。」と一言。
窓の外に目をやると、ただの暗い住宅街。
「真っ暗で何も見えないですよ。」
首を振ったサーティーンガール。
「これだから東大卒は・・・。」
僕は東大じゃない。言い直した。
「僕が小学校の時の通学路もこんな感じでしたよ。素敵と思ったことは一度も無いですが。」
京都やイタリアじゃあるまいし。
という言葉は呑み込んで、丁寧に、やんわりと。
「あなたの地元と一緒にしないでよ。」
「どこか違いましたっけ?」
会話が一度とまる。
しばらくして。
「どうして、他人の意見を素直に受け止められないかなぁ。」
どうして自分の意見を一度振り返って考えられないかなぁ。
「そんなこと言われても、未だかつて六本木と西麻布の路地裏に魅力を感じたこと無いもんで。」
「それに、本当に素敵なものなら、僕だって同調しますよ。」
「感性が足りないのね。」
いらっときた。
「そういう事じゃないです。例えば、グレートバリアリーフは誰が見ても綺麗だし、グランドキャニオンから見る光景は誰が見ても圧巻だと思います。そういうのって説明はいらないものですよね。でも、六本木と西麻布の路地裏の魅力ってそうですかね?そこに魅力を感じる人もいるということは分かりますが、少なくとも全ての人に受けるわけではない。それは、二次元に愛を感じる人がいるのと同様で、誰かに押し付けたり、同調してもらうようなものではないと思うのです。もちろんグレートバリアリーフを見ても綺麗と思わない人もいますが、そこはマジョリティかマイノリティかの違いだけです。そもそも路地裏に魅力を感じるってのも最近出てきた概念じゃないですか?東京再発見みたいな。僕はそういったものには注意が必要だと思うんです。宮崎駿の映画だと途中で眠くなっても、意味がわからないと思っても、なんとなく良いんじゃないのか。メッセージが隠されてるんじゃないのか。だって宮崎駿だもんな。って思うように、権威者や社会が認めたものって、ついつい良く捉えがちになってしまうんですけど、そういう時こそ、それって本当なのかな?って疑った目で見る必要があると思うんですよ。」
「そうやって理屈で考えてるから駄目なんだよ。」
そうやって感性で考えてるから駄目なんですよ。
なぜなら、僕たちは広告代理店の人間だから。