松阪市 光と水たまりを湛える家 puddle
写真が出来上がってきました.
写真家は愛知県の谷川ヒロシさん.






































クライアントと初めてお会いしたとき
「海外赴任していた時に泊った水盤のあるヴィラの空間がとても良く、忘れられないので水盤のある家を設計してほしい」
「普段は人とあう仕事なので住居内においては、自分たちだけの空間が感じられるプライバシー性のある住居」
「現代アートが好きなので、自然と光を楽しみながら、感じることができる家」
大きく、この3つの要望をいただいてこの住まいの設計が始まりました.
住居内にタイル張りの水盤というよりも、ナチュラルに自然を感じれるように水たまりを、
周囲に家がたてこんでいる住宅地においても、自分たちだけの空を楽しめるように、ジェームスタレルの作品になぞらえたような空間を中心に計画しました.
敷地は20年ほど前につくられた住宅地で、以前はここに倉庫が建っていて、1世代前に建てられた周囲の住宅群に対してここだけ時間が止まったような印象でした.
北側に道路があるため、地方にとってかかすことが出来ない駐車場を道路側に配置すると、敷地に南側のスペースがなくなり、隣の住居の陰になって光が室内に入らないことが問題でした.また、駐車場の確保により南側に建物を寄せすぎると、お隣さんとの窓同士が一致してしまい、プライバシー性の確保も難しくなりそうでした.
結果、中心に約2.5m角の大きなエントツのような空洞を挿し込み、そこから各室に光と風を届けるプランになりました.
南側には周囲とつながる開放的なルーフバルコニーも配置し、外部に対して開くと閉じる、どちらの場所もある選択性を用意しています.
この住まいは全部で14段階の床レベルがあり、仕上げと各開口の調整により上階に行くほど明るく、下階に行くほど地面に潜っていくような光を抑えた空間となるように設計しています.
楽しい時、そうでない時、疲れているとき、みんなで一緒にいたいとき、考えごとをしたいとき、読書をしたいとき、ぼーーーーっとしたいとき
人はたくさんの気持ちとともに生きています.
この住まいは陰も光も楽しみ、住まい手のその時の気分により、居場所を見つけることができるプランとしています.
晴れた日は、中心の空中に浮いた白い板が、空の様子をリフレクターのように現象し、室内に光を届けます.
太陽に雲がかかると、それに応答して室内も光を呼吸するように光の状況が変化します.
四角く切り取られた空をぼーっと眺めていると、飛行機がよこぎって行ったり、鳥たちがとんでいったり.
音もなくかたちを変えていく雲をみていると、時間のつながりと、おなじ時間というのはないということを想います.
中心にある水たまりは、雨の日が多い時期は水たまりも大きくなり、日照りが続くとだんだんと小さくなっていきます.
雨の波紋と、水たまりに落ちるしずくが奏でる水琴窟のような音のなか、雨の日は雨の日の情緒を愉しみ、
自分たちが生きる風土、四季、毎日の天気、家族の時間の重なり、それらの連続、溶け合い、それぞれを感じながら日々の生活を暮らしていくことができるような建物になるようにと、意識して設計しました.
この住まいは、クライアントのTさんのお父様が大工さんであり、息子家族、孫たちの生活の場を、長年磨いてこられた技術でたち上げてくださいました.
想いのこもったプロジェクトの一員として、僕も参加させていただけたことをとても嬉しく、そして光栄に思っています.
ヨネダ設計舎ホームページURL http://www.yonedasekkeisha.com
米田雅樹 三重県 建築設計事務所
米田雅樹 三重県 建築設計事務所