その時、私は少しだけ重い服を身に纏っていた。

ツナギなのか、オーバーオールなのか、着慣れていない感じの服だ。

 

けれども、服の事などは全く気にしない様子で薄暗い森の中をズンズンと歩いている。

 

・・・・歩いている?

 

いや、おかしいよね。

ちょっと待ってね。

 

私は服の事を気にしていたのに、身体は森の中をズンズンと歩いている。

けれども、まったく気にしていない様子で???

 

ふむ。

 

なるほど。

 

あれですよね、あれ。

 

夢だこれ。

 

だって、さっきから見えているんだもの。

 

自分のつむじ。

 

つまり、私は私の事を私に近い場所の上空から見下ろしているわけで。

幽体離脱、という類のものですね、今体感しているこれは。

 

これはこれで中々興味深いけれども、いつまでも進み続ける自分のつむじを

見ている場合ではないよね。

 

早く夢から覚めたい。

 

だって覚めなきゃ

 

冷蔵庫のプリンが待っているんだもの。

 

私は、あ、上空にいる私です。

 

私は梅干を食べた時に変身するおじさんの様な顔をして

目を思いっきり閉じた。

 

 

この世界じゃなくて、現実の世界に。

この世界じゃなくて、私がいつもいる場所に戻らないと。

起きないと。

 

すると更に体が空に向かって浮かび上がっていく感覚に見舞われた。

 

これで戻れるんだ。

 

早く帰ってプリン食べなきゃ・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「んせ・・・・、せんせ・・・・・・おきて・・・・・」

 

空に向かって飛んでいく感触は続いているのに、

更なる上空から声が聞こえてくる。

 

「せんせい・・・・・おきない・・・・・・と」

 

漫画ラブな私からすると、この状況下において、天から降ってくる声は決まって優しい女性の声と相場が決まっているはずなのに、

優しい声の中にどす黒い何かが含まれている感じがした。

 

「せんせい・・・・・しんさ・・・・・じかんで」

 

あ、これあかんやつだわ。

ドンドン声の中に黒さが増してきている。

 

 

「せんせい、お前も患者にしてやろうか・・・・・・」

 

は!!!!

 

私はこれでもかと言わんばかりの速度で目を開けた。

そして声が聞こえていた上を見るために顔を上に向けた。

 

すると、薄い色素、茶色のねこっけの可愛い女の子がニコニコしながら

私を覗いていた。

 

え?

なんで?

あれ?

 

するとその女性は

 

「さ、先生。やっと起きられましたね!午後の診察、行きますよ!

今日は闇の魔王1名、闇の四天王5名の往診ですからね。」

 

満足そうに微笑みながら、その彼女はすたすたと歩いて行った。

 

診察?

え、なに?

今先生って呼ばれた?

そして私が先生で診察に行くって??

 

いやいや、ちょっと待って。

 

おかしい。

おかしすぎる。

 

だって、

 

 

私は診察を受ける側ですから!!!!!

 

第二章に続く。