弁護士法人制度ができてから何年か経ちました。
当事務所は平成２３年７月に弁護士法人に組織変更しましたので、弁護士法人になって間もなく４年になろうとしています。
弁護士法人になると，メリットとデメリットがそれぞれあります。
弁護士法人制度のメリットの中で一番大きいのは，従たる事務所（一般の会社で言えば「支店」）を設けることができるようになることだと言われています。
複数の事務所を持つと，商圏を拡大することができ，事務所の規模を拡大ができるということがメリットと言われています。
当事務所も従たる事務所をもってから４年経ちましたが，メリットとして感じるのは，毎月安定的な売り上げと集客ができるということです。
毎月の売上と新件受任件数ですが、１つの事務所だけですと，毎月毎月波があります。少ないときもあるし，多いときもあります。大体１年くらいの周期で見ると同じくらいになるのですが、やはり安定していないのです。
手持ちの現金も同じです。弁護士法人の場合、事務所ごとに預り金口座と本口座を設けています。預り金口座はただ人に返還するお金を事務所で預かっているだけですので残高は気になりませんが、本口座は事務所の経費を賄う基礎になるため、今残高がいくらあるかすごく気になります。
大体事務所の運営に必要な人件費、テナント料、リース料など経費の支出は月末近くに集中し、売上、収入に関係なく毎月決まった額が出ていきます。事務所の本口座の月末の残高がいくらになりそうかすごく気になるのです。
新件受任件数と売上高に波があるのと同じように、通帳の動きについても入ってくる現金の多さが月ごとに異なって安定しないのです。
１年周期で見て平均してみればいいじゃないかと思うかもしれませんが、やはりそれを管理するのは人間です。多いときは気が大きくなりますし、少ないときは不安になります。そして、少ない月が続くと不安はますます大きくストレスがたまります。
これが複数事務所だとどうでしょうか。調子がいい時はすべての事務所が調子がよく、調子が悪いときはすべての事務所が調子が悪いかというと、実はそうでもないのです。
たとえば、厚木の事務所と相模大野の事務所は、距離にして１０数キロしか離れていませんが、厚木の事務所の売上が大きいときは相模大野の方が小さい。逆に相模大野の事務所が小さいときは厚木の事務所が大きいというようにその月々によってそれぞれの事務所の売上、新件受任件数、終了件数、通帳残高の増え具合が違うのです。
トータルすると毎月大体同じくらいになるということが多いのです。もちろんたまにはそれぞれの事務所が全部調子が悪い、それぞれの事務所の全部が調子が良いということもありますが、それが何か月か続くということはほとんどありません。大体それぞれの事務所に波があるのですが、事務所全体でトータルすると大体いつも同じくらいということになることが多いのです。
どうしてこうなるのかわかりません。これは理屈ではないと思います。やはり人間がやることです。
プロ野球で言えば、たとえ４番バッターといえども、シーズンをとおしていつもホームランばっかりうっているわけではありません。エースであっても、いつも勝てるとは限りません。やはり人間だからスランプがあるのです。ただ、野球は９人でやるものですし、控えの投手、選手もいるのですから、誰かが調子が悪ければ誰かが調子がいい。そういうことがある事が前提だと思います。そして、トータルしてチームの総合力が保てていれば安定的に勝つことができるのです。シーズンを通して安定的に勝てるようにする。それが監督の責任だと思います。
V9時代の読売巨人軍の川上監督の管理野球が有名です。V９と言ってもいつもぶっちぎりで優勝していたわけではなく、最終戦までもつれ込みぎりぎりでやっと優勝したということも結構あったようですが、それでも９年連続日本一というのはすごいと思います。
法律事務所の運営というのも人間が人間を相手に動かしている複数の業務を複数の人間が動かしている以上動きが一定ではありません。それぞれの事務所が、あるいはそれぞれの事務所のそれぞれの弁護士が最大限力を発揮できるように安定的な業務運営をしなければならない。そのためには、法人所属の事務所あるいはそれぞれの事務所所属の弁護士がそれぞれバラバラに好き勝手に動くのではなく、全体的に１つとして動けるように見ていかなければいけない。弁護士法人制度というのはうまく使ってうまく機能させれば従来の個人事業としての法律事務所ではすることができないメリットを発揮できる素晴らしい制度ではないかと思います。
すでに支店経営をしている企業の社長に話せば、「そんなの当り前のことだ」と言われてしまうかもしれませんが、この業界で支店が作れるようになったのはここ何年かのこと。歴史が浅いのでこんなことでも感動するのかもしれません。
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