先週アメリカに行ってきました。アメリカに行ってきたと言っても、観光旅行ではなく、企業やNPO法人、それに法律事務所など滞在期間5日を通して視察に行ってきました。


 その中で、まずアトランティックヘルスという医療機関を視察しました。その中で、視察グループの医者の方の質問の中ででてきたのですが、、病院が医者を必要とする場合、医者が病院に行くかどうか決めるに際して、判断の基準となるものとして、


  ① 待遇

  ② 技術

  ③ 教育システム

 があり、このうち少なくとも2つについて満足いくものがなければ医者はその病院に来ないだろうということでした。


 この点同じ専門性が高い弁護士についても同じだと思います。あまり意識されていないかもしれませんが、新規登録弁護士が就業する事務所選びについて目安となるものとしては、上記①②③を重視している人はたくさんいるのではないでしょうか。


 当事務所は、これまで①の整備についてで精一杯で、③については保留になっていたのかもしれません。もととも、ようやく①についても目指すものが見えてきましたし、実際のいろいろな方策も考え一部は実行しています。


 そして、これからは②と③についても力を入れていこうかと思っています(もっとも、②については他の専門業種との合同相談会や各種セミナーや講演会に参加してすでに力を入れていますが、まだまだ力を入れていかなければならないと考えています)。


 勤務弁護士や事務スタッフの教育についてですが、同じ視察で訪れたNPO法人のTeach OF AMERCAの取り組みが参考になりました。


 Teach OF AmericaはNPO法人なので、営利を目的とする者ではありませんが、その理念とするものとしては、教育の格差をなくす。家庭の経済力や環境によって、教育の格差が生じ、ひいてはそれが貧困につながり、教育格差、貧困の世代間連鎖が生じる。そういうことがないようにしていこうというのが目標のようです。そして、大学や大学院を卒業した者に対して混乱している教育現場に派遣する。つまり、黒人など貧困層が多い地区で、生徒が拳銃をもっているような教育機関の現場に高等教育を受けたばかりの者を派遣し、そこで修羅場を経験し、挫折を味あわせ、人間的な成長を試みる。そのような経験をした者は、教育以外の分野に進出するにしても、そこで得た経験をもとに事業を成長させていく。また、優良人材を採用したい企業にしても、勉強ばかりしてきた学生をそのまま採るのではなく、一定の挫折経験をしてそれを乗り越えた人材を雇うことにより即戦力として使うことができる。そのような企業にとってもメリットがあるので、NPO法人に寄付金を提供する。まさに、NPOの目的を探りながら、学生や企業にとってもメリットがあり、寄付金も集まる。三者両得であり実にうまく機能しているシステムのようです。


 話しを内輪事情に戻しますが、、法律事務所がこのシステムから何か恩恵を直ちにうけたり、そのままシステムを採用するというることはありませんが、本来的な事件処理の仕事に入る前に、他分野で社会経験をさせるという点を取り入れることはできると思います。


 これまで、法律事務所の新規登録弁護士への教育といえば、ボスになるボス弁護士が新人弁護士と一緒に仕事をし、ボスがもっている技術や考え方を身に着けるというやり方が伝統的にやってきたやり方と思います。これはこれでいいと思うのですが、果たしてたくさんの案件をかかえているボス弁が細かいところまで手とり足取り教えられるかは疑問です。

 また、このようなやり方を採っている多くのケースで、事件解決に向けたコーディネートはボス弁がやってしまい、新人弁護士は書面作成や一部の期日の出頭、事務的な電話対応など個々の部分的作業についてボスの指揮命令を受けてやっていくというケースが多かったと思います。しかしながら、このようなやり方では、弁護士の本来的役割である「事件を解決に向けてコーディネートしていく」という部分については、新人弁護士はほとんど関与しないということになってしまうと思います。

 さらにいうと、弁護士2,3人の事務所であればこのようなやり方をとれますが、弁護士が5人、6人、あるいは10人と増えていくと、ボス弁護士も新人弁護士にばかり労力を割ける状態ではなくなります。ボス弁護士も、いちいち細かい作業について逐一指示命令はしていける余力はないと思います。

 加えていうと、若い弁護士の中には一般社会についての経験を踏んでこない方が多くいらっしゃいます。周りの先輩、同輩、事務スタッフのコミュニケーションがとれないばかりに挫折していく人もいます。ただ、そのような一般社会にかかわる技術までボス弁護士が指導するなどということは物理的に不可能ではないのでしょうか。


 事務所の規模が大きくなっていくにつれて、このような伝統的な教育方法が現実的に機能しないということになるのではないかと個人的に思っております。それでは、どんな教育方法がいいのか。


 いろいろあると思いますが、たとえば、中小企業や他の異業種期間にある程度の期間派遣し現場を経験してもらう。そこで、一般社会のルールや周りの人たちとのコミュニケーションや連帯感、一体感を作ってもらうことを学ばせてもらう。あるいは、メンター制度を導入し、解らないことが多いが、つまらない事でも気楽に先輩やスタッフに尋ねる環境とシステムを作る。メンターとなる人をあらかじめ定め、その人とチームを組んで新人弁護士を育てていくというやり方があると思います。


 このメンター制度につい手はよくわからないことがありすが、概ね

 ① 先輩などあらかじめ1人または複数のメンターとなる指導者を定める

 ② メンターは、新人弁護士に指示命令を与えるのではなく、新人弁護士が事件解決にむけたコーディネートが自主的にできるよう、気づきやヒントをあたえるような助言をする。

 ③ 節目節目に、メンターとなる先輩、メンティー、つまり教育される新人弁護士、直属の上司など交えて成長を確認していく。

 ④ 仕事上の技術だけではなく、日常の生活についても、つまらないと思われるような相談もメンターが受けて助言を与える


 ということのようです。


 ただ、このようなことは、どこの職場でもやってきたことだと思います。私が裁判所に入ったころは、近くに座っている先輩などにわからなことをよく聞いていました。直属の上司にはなかなか「こんなつまらないことはきけない」と思うようなことでも、隣に座っている先輩には気楽にきけたもんです。このように、昔から現場にあった意識されていなかった教育制度をシステム化したのがメンター制度ではないかと思います。


 これからは、当事務所も「人の教育」という点を重視して、労力と資本を集中していきたいと思っています。

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