法律事務所の構成員には弁護士のほかに事務職員がいます。最近では、事務職員も弁護士とともに法律事務所の業務を処理する存在として「パラリーガル」などと呼ばれています。


 以前は、法律事務所の事務職員と言えば、ほとんど女性で、お茶くみ、おつかい、それに郵便物の発送などの簡単な作業を行って、弁護士に言われたことをこなすだけの存在が一般的にイメージされるものでした。そして、結婚したらやめてしまう存在でした。ですので、弁護士の方も事務職員を教育してプロにしようという意気込みはなく、簡単なお手伝いをしてくれればいいと思っていました。そして結婚してやめたらまた新しい人を探して、その人も結婚してやめてまた新しい人を探す。短期間で訓練もされないのでレベルも高くなく、簡単な単純作業しかできない人が多かったと思います。

 もっとも、今では業務は複雑化して、弁護士1人だけでやすべての業務を行うことは不可能であり、手におえない状況です。教育された専門家としての事務職員が必要です。腰掛的な事務員では役に立ちません。ですので弁護士も一生懸命事務職員を教育して戦力にしています。そのような中で、教育が成功して専門化して新人弁護士くらいなら手玉に取ってしまうくらいのすごい人もいます。一生この仕事をしていこうと思っている人もいます。


 このように以前と比べ進化している事務職員ですが、待遇はといえばそんなに恵まれているとは言えません。特に最近では弁護士ですら過剰供給のため待遇が以前に比べればかなり落ちていますので、事務職員の方の待遇も落とさざるを得ないというのが現実ではないでしょうか。


 ただ、そうはいってもやはり重要な存在なので、事務職員を雇う弁護士としても、すごく贅沢はさせてあげられないけれども、普通の生活ができる程度のものを与えてあげたいと思っています。そして、普通の生活にプラスして時々贅沢ができる程度のものは与えてあげたい。そして、計画的にお金をやりくりすれば、退職時にはある程度貯金ができているくらいのものは与えてあげたい。

 (ちなみに、少し前のプレジデントを見たところ、退職時に3000万円の貯蓄があれば老後は普通にくらしていけるのではないかということが書いてありました)。


 ということで、当事務所では事務職員さんが定年まで勤めて退職する際には○○○○万円くらいの退職金が出せるよう生命保険を使った積立をしています。事務所によっては中退共(中小企業退職金基金)を利用しているところもありますが、中退共は受取金額の変動があり予測がしにくいので、当事務所では生命保険を使っています。また、生命保険であれば、仮に事務職員さんに何かあったとき、事務所から心づくしを提供することができます。特に業務上の事故で何かあったとき、必ずしも労災保険だけでは十分な補償がおりないことがありますのでそういう意味では生命保険を使うメリットがあります。


 また、退職金のほかに年金の受給ができるようにしてあげなければなりません。やはり厚生年金に加入してあげるのがいいと思います。掛け金の事業者半額負担は大変ですが、将来のためを思うと仕方がないと思います。国民年金だけではものすごく額が少ないので不安です。


 そして、定年後も、バリバリは働けないが、今まで働いていた事務所で、ちょっとしたアルバイトができるようにすればいいと思います。年金支給額減少や支給年齢の引き上げが考えられるため、年金だけでは不安ですからね。

 そのためには、この事務所が、今の所長の代で終わり、なんていうことにならないよう永続性を意識した事務所経営が必要だと思います。


 この事務所の事務職員さんにこの程度の理念型を示すことができれば、現在この事務所で働いている事務員さん、そして、これから就職しようとしている事務職員さんの人生設計を組み立てることができるので少しは安心して働くことができるのではないでしょうか。


 やはり、ここで働いていて将来があるのか。誰でも不安に感じることがありますので、骨組みだけでいいので、経営陣が考えている「ここの事務職員の理念型」を示せれば本当にいいと思います。

 そして、「俺は普通では満足できない。がっぽり稼いで贅沢をしたいんだ。」、そんな考えを持っている人は法律事務所の事務職員は向かないと思いますのでここで働かないほうがいいですよ、とアドバイスもできます。

 

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