最近勤務弁護士を雇うに際して、昔よりも良い人材を安く雇えるようになったと言われています。


 私はこの10月でちょうど弁護士登録満10年になりましたが、10年前の新人弁護士の年収は、大体600万円から700万円くらいが多かったような感じです(ただし、一般民事系。大手や渉外はもっと高く、800万円から1200万円くらいだったと聞いています。)。

 しかしながら、現在で一般民事系の街弁では、500万円だといい方。600万円もらえるというところはかなりよく、400万くらいが多いのではないでしょうか。


 そして、さらに問題なのは入った後。つまり、2年目、3年目と進んでいくうちにこの年収が年々あがっていくのか。それとも下がっていくのかです。事務職員でも同じで、入った時の年収がよくても、それがいつまでたっても上がらなければ意味がないからです。


 ただ、これについては、所長、ボス弁は確約できないと思います。なぜなら、勤務弁護士や事務職員に支払う報酬、給与は、あくまでも「支出」。支出を増やすには収入(売上)を増やさなければならないからです。2,3年後あるいはそれよりも後、収入(売上)が増えるかどうかなどわからないから約束などできません。


 昇給と売り上げの関係は次のようなケースが考えられると思います。


1 受任事件数同じ=・売り上げ額同じ=⇒勤務弁護士・事務職員人数同じ⇒勤務弁護士・事務職員の昇給年収アップ↑


2 受任事件数増↑⇒売上額増↑⇒勤務弁護士・事務職員人数同じ=⇒勤務弁護士・事務職員の昇給年収アップ↑


3 受任事件数増↑売上額増↑⇒勤務弁護士・事務職員人数増↑⇒勤務弁護士・事務職員の昇給年収アップ↑


4 受任事件数同じ=・売上額増↑⇒勤務弁護士・事務職員人数同じ=⇒勤務弁護士・事務職員の昇給年収アップ↑


 まず1のやり方で年収をアップさせ続けた場合、事務所はつぶれます。入るお金が変わらないのに出るお金だけ増えるのですから、これを続ければつぶれるのは当たり前だと思います。経営者がやたらに賃上げを要求する人を見ると、「会社(事務所)をつぶす気か!」と憤るのも、こんな基本的なことがわかっていないのかと無意識に思ってしまうからです。

 この方法で年収を上げる場合、他の経費節減ができればいいですが、それまで協賛など贅沢に経費を使っていれば贅沢をやめて経費節減ができますが、そうでなければ経費節減だけではたかがしれてます。さらに、所長など役員の報酬を下げることが考えられますが、役員の個人資産というのは、実は資金が一時的にショートしそうな場合など担保になるものです。役員の個人資産は報酬により積み上げていくので、これを下げるのも限界があります。勤務弁護士・事務職員への支払いのために役員の報酬を不当に下げなければいけないようではかなりやばい状況だと思います。


 次に2の方法ですが、受任事件数が増えるのに人員は増えないのですから、勤務弁護士・事務職員の負担が多くなります。これをやりすぎると勤務弁護士・事務スタッフは消耗していきます。この方法も限界があり、一時しのぎにしかなりません。


 3の方法ですが、人員を増やして受任事件数を増やし、それにより売り上げも増やす。増えた分を昇給に回すというやり方です。これは、勤務弁護士の受任能力、事件処理のスピードが大きくかかわってくると思います。人数が増えても、弁護士全員の売上額が増えなければ支出だけ多くなるからです。これについては、勤務弁護士は、自分が事務所からもらう報酬や通勤交通費、社会保険事業者負担額などもあわせて、事務所から受けている利益の3倍は稼いでもらわなければ割に合わないとされています。また、勤務弁護士の能力が大きく影響し、能力をあげるには鍛える必要があるので時間がかかります。時間がかかるまでの資金的裏付けがなければつらいところがあります。


 4の方法ですが、これは経営者の能力が大きく影響してきます。受任事件数が同じなのに売り上げを上げるのですから、より高額の弁護士報酬がもらえる事件を受任しなければなりません。集客の責任は所長、ボス弁という経営者の責任だからです。

 でも、これがうまくいけば、勤務弁護士、スタッフの消耗を防ぐことができるので助かりますが、そうおいしい仕事が転がっているわけではありませんので抜本的な解決にはなりません。


 実際は、3と4の方法を併用することで受任事件数、売上数をあげ、それをにらみながら弁護士やスタッフの数を増やしていく。そして、昇給を実現していくという方法をとるのが一番良いのではないかと自分の中では思います。


 以前は、事件数、売上額は自然に増えて行ったり、勤務弁護士が独立していくことが前提でしたので、あまりこういうことを考えなくてもよかったかもしれません。しかしながら、業界全体の弁護士数が増えていますし、需要は増えないという事情から、現在では売上の自然増というのは期待できません。また、弁護士会法律相談センターや法テラスなど特に努力しなくても集客できるツールがほとんど機能していない現在では、独立しても思うように集客できず、勤務弁護士の独立への不安から独立への決断が鈍っている現状です。


 中には、2,3年くらいたった勤務弁護士に半強制的に独立を促し、昇給による支出増を防いでいる事務所もあるようですが、さすがに勤務弁護士が希望もしないのに半強制的に追い出すことは良心の呵責を感じるところがあります。


 そうすると、いかに所員の昇給をはかり経済面から所員のモチベーションをはかるか。法律事務所経営者は年々難しい立場に立たされていると思います。


 


 


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