テーマ「法律事務所の後継者問題」全体の構成
1 事業承継に必要なもの
2 これまでの法律事務所の事業承継
3 法律事務所の事業承継がされないことの弊害,事業承継の必要性
4 (1) 事業承継の意識改革
(2) 後継者選びの方法
① 親族に引き継がせる
② 第三者に引き継がせる
5 まとめ
1と2 →法律事務所の事業承継 その1
3と4(1)→法律事務所の事業承継 ~その2~
4(2)と5→法律事務所の事業承継 =その3=
(前回は,これまで,法律事務所の後継者は親族を後継者とすることがあること,第三者が後継者になる例はあまりなかったのではないかということを述べさせていただきました)
もっとも,第三者の後継ぎのケースはほとんどなかったと思われますが,親族(息子,娘,娘婿)へうまく引 き継いだ方も,全体の中からすればごくわずかなのではないかと思います。息子や娘が司法試験を志したが結局受からなかった,あるいは最初から司法試験の道を選ばなかった,娘と結婚させようとしたが失敗した,などで親族への承継構想がうまくいかなかった例もあるのではないでしょうか。
大部分の弁護士先生は,後継者がいないまま事務所を閉鎖して行ったのではないでしょうか。以前いた勤務弁護士が独立していった方であれば,「自らの志は独立した弟子の中で生きている」といったような感じで,目に見えない「志」とか「信念」は引き継がれていったかもしれません。ただ,大部分の弁護士先生は,後継者のいないまま,それまで積み上げてきた経験やノウハウを自分でもったまま引退されたのではないでしょうか。地盤(=顧客など)は,顧客自身があらたな関係をもとめて色々な弁護士を探しに行き,看板(=知名度,信頼)は他に利用されることなく消滅し,かばん(=資金力)は,引退した先生が自らもっていき1つの事務所が消滅していくというのがほとんどであったと思います。
3 では,1人の「弁護士の引退」=「法律事務所の消滅」という現象が続いていくとどうなるでしょうか。
このように,1人の弁護士が引退したことにより,引き継げる財産を誰に引き継ぐこともなく,法律事務所がひとつずつ消滅していくということであれば,社会的に損失であるし,お客さんも安心して弁護士を利用できないと思います。
例えば,弁護士に,遺言書の作成を頼み遺言書の中でその弁護士が遺言執行者に指定されたとしましょう。15年後に遺言者が死亡したのでその弁護士の事務所を訪ねたらすでになくなっていた。弁護士会に尋ねても,誰が事務所を承継しているとかわからない。このようなことであれば,弁護士に頼まず信託銀行などでやっている遺言信託を使ったほうがいいということになります。
また,前頼んでいた事件で問題が起きたので,その事務所に行ってみてらその事務所はなかった。当時いた勤務弁護士のところに行ったら,自分は引き継いでいないからわからない,と言われた。当時の資料などももっていない。困ってしまった。
さらに,それまで勤務していた事務員さんは,弁護士が引退したことにより事務所を辞めなければいけなくなった。他の事務所も見つからなかったので結局他の職業に就いた。あるいは,他の事務所に就職したが,仕事のやりかたも空気も違う事務所が合わずに辞めてしまう。そういう事務員さんは,前の事務所でずっと働けれいていられればよかったのに,と思うこともありますでしょう。
また,それまで事務所で身につけた経験やノウハウは,大部分が弁護士の頭の中にあり第三者が外から見ることができない状態にあるため,事務所の消滅とともに消えていく運命にあります。そうすると,先人が積み上げてきた事件処理や事務所経営の業績,技術が次の世代に生かされないことから,このような状態が続くと,いつまでたっても業界全体の進歩がないということになってしまいます。
やはり,後継者に引き継いでもらって,引退後も事務所が続くというのがいいと思います。
4 そうなると,後継者に事務所を引き継いでもらうにはどうすればいいでしょうか。
(1) まず,弁護士自身が「自分一代で終わり」という意識ではなく,この事務所を誰かに引き継いでいこうという気持ちを持つことが必要ではないでしょうか。勿論,自分一代で終わりというやり方は気楽でいいと思うのですが,皆が皆気楽な道ばかりに進むと,結局弁護士が利用されなくなったり,業界全体の発展ということからもマイナスであると思います。後継者を選んで事務所を存続させることは,自分たちのためだけではなく,社会全体の利益につながってくるのではないかと思います。
(2) では,どのような後継者選びが考えられるでしょうか。
ーーーー すみません,タイムリミットなので続きは次回にさせていただければと思いますーーー
ブログランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。
↓
厚木情報については
↓