今月2日横浜で弁護士が事件の相手方と思われる男性に殺害されてから既に3週間以上経っているが,いまだに犯人が逮捕されたという話は聞かない。今回被害にあわれたM弁護士のためにも一刻も早い犯人逮捕が望まれる。
M弁護士は,おそらく勤務弁護士であると思われる。
では,勤務弁護士が事務所の業務を処理している最中に事件事故にあい被害を負った場合,所属事務所からどのような補償がなされるのであろうか。
まず,現在の実情からして,勤務弁護士は雇用,労災保険に加入していないところが多いのではないのだろうか。これは,事務所と弁護士の契約関係は雇用契約ではなく,あくまでも請負契約であるとの理解に基づいているのではなかろうか。請負であれば,勤務弁護士のリスク管理は,あくまでも自己責任で行うべきであって,リスクが現実化したときの補償についても,事務所が責任を負うという関係には成り立たないことになる。勤務弁護士は,自分で生命保険などに加入するなどの措置をとることになる。
しかし,勤務弁護士本人はともかくとして,被害にあった弁護士の遺族としては,「勤務弁護士との関係は請負契約だから,事務所としては何も補償はできない」という理由で納得するであろうか。おそらく,一般市民の感覚から見れば,事務所に雇われていると感じるのが普通であろう。勤務弁護士が事務所の依頼者の事件を配てんをうけて,その事件を処理している最中に起きた事件事故であればますますそう思うであろう。所属事務所としては,掛け捨ての生命保険に加入するなどして,何か事が起きた場合,勤務弁護士の遺族が最低限納得できる程度の手当てだけはしておく必要があるのではなかろうか。