京都長岡京ワラビ採り主婦殺人事件・その2(メモの件その他) | 雑感

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(本日〈12月5日〉の追記分は、記事の下のほうに付け足しました。)



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---------- 11月26日アップロード分↓ ----------



「その1」で事件を概観してみた。


やはり、例の「メモ」のことが釈然としないのだった。


長岡京ワラビ採り殺人事件1_8
(鉛筆書きのメモ。「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」と読み取れる。)


被害者Aさんのジーパン右ポケットの底から、くしゃくしゃに丸まって出てきたのだという。

Aさんのパート先「いずみや長岡店」のレシート(5月21日付)裏面を利用して書かれたもので、筆跡はAさんのものと鑑定された。


このメモが本当に、「野山」の山頂付近犯行現場あるいはその近くで被害者Aさんによって(事件に関連して)書かれたものだとしても、これを書いた時の状況がどういうものだったのか、それを想像するのが難しい。


いろいろな見方があるのは承知の上で、今回はあえて、このメモの文言をストレートに解釈し、


「Aさんが山中で悪い男に追われながら、”通りすがりの人が来たら手渡そう”と考え、この”助けを求めるメモ”を書いたのだ」


という光景をまずは前提としながら、話を進めてみたい。


とはいえ、その”光景”は猛烈に胡散臭いのだった。


そもそも「山中の悪路で男に追跡される」という、ほとんど絶体絶命の状況の中で、「おもむろに紙と鉛筆を取り出し、メモを書く女性」なんて、本当にいるのだろうか、という疑問がある。


運よく通りすがりの人が来たら、普通は、その人に向かって「声を上げて」助けを求めるか、仮に大声を出しにくかったとしても、その通りすがりの人のもとへ駆け寄り、耳元で


「あの人に追われています。助けて下さい」


と囁けば済むのだし、それが早くて確実とも思われた。


確かに、世の中には口頭ではなく筆談でやりたい状況もあるが、「山中で男に追われ、助けを求めている状況」が、「筆談で助けを求めたい状況」だとは、私にはあまり思えない。


Aさんに言語障害がある等、日ごろから筆談で会話をしていたという話も聞かない。


また、これもメモを見る人々を困惑させる点だと思うが、このメモは一見して、1行目と3行目が矛盾しているように思える。


1行目を想像すると、こんな感じだろうか。


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ1


この状態の時に、「通りすがりの人が来たらメモを渡そう」と考えたAさんは、助けを求めるメモを書いたのだと。

しかしそうだとしたら、そのメモの文言は次のように、


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ2


「この男の人わるい人」ではなく、「あの男の人わるい人」じゃないと、状況に合致しないのではないかと思う。(そもそも「あの人」で十分だし、それが自然だとも思う。いやむしろ、3行目は不要とさえ思う。)


ところが実際のメモは、「この男の人わるい人」と、状況に不一致であり、なおかつ、まどろっこしい表現となっている。これでは、通りすがりの人がメモを受け取ってくれても意味が伝わりにくく、


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ3


上のような感じになってしまうのではないだろうか。

それとも、


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ1


上の状況の時に、Aさんは「通りすがりの人が来たら渡そう」と思って、次のメモすなわち、


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ6


「オワレている たすけて下さい」までの、2行のメモを書いたのだが、追ってくる男のスピードが速く、女性らはあえなく追いつかれてしまい、次の状況になったのだと。


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ4


そして、男に卑猥な言葉でも浴びせられながら並んで歩いているこの状況の時、Aさんは男の隙を見て、ふたたび鉛筆と(先ほど2行まで書いていた)メモを取り出し、


長岡京ワラビ採り殺人事件1_8


「この男の人わるい人」という文言を3行目に書き加えたのだと、そういうことだったのだろうか。

これだと、真横にいる男を称して「この男の人」としたことに不自然さはないが、今度は、1行目の「オワレている」という表現が状況に合致しなくなる。


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ5


このメモの筆者は、「山中で男に追われる」という極限的な状況の中でも、2行目の「す」の字をわざわざ書き直すほどの、几帳面な性格のようだった。


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ8

(左側が元の画像。「す」の字が薄くて見えにくいので、右側に該当部分を濃くしたものを掲載。赤い部分は当方による着色なので、スルーで。)


それほど几帳面なら、少なくとも現状に合致しなくなった「オワレている」の部分に二重線でも引いて打ち消してもよかったはずだが、なぜか、そういうことはしていない。


「極限状況の中で書かれたメモの整合性を論じるのは、野暮かも」


という風には思うのだが、何か、釈然としない気持ちが生じるのは、いかんともしがたいのだった。


そもそも、悪意をもって迫ってくる男の隙を見て、そう何度も紙と鉛筆を取り出し、メモを書けるものだろうか、とも思うし、さらに言えば最初に疑問を呈したように、そんな状況の時に


「紙と鉛筆を取り出して、助けを求めるメモを書く」


という女性が、果たして本当にいるのだろうか・・・


ということを、どうしても考えてしまうのだった。



---------- 以下、12月5日追記分↓ ----------



また、言葉にすればたった5文字の「メモを書く」という行為も、

実際はいくつかの動作の組み合わせで、それなりに手間のかかるものだと思う。


手間というのは、つまり、


「筆記用具を探し、それを取り出す」
「紙を探し、それを取り出す」
「筆記用具を利き腕に構え、紙を机など台の上に置く」
「文章を考える」
「文章を書く」


等々だろうか。


この一連の行為を「山中で男に追われる」という、女性にとって、いわば極限的な状況の中で行っている様を妄想してみると・・・


まず、「筆記用具(この場合は”鉛筆”)をどこから取り出したのか?」ということについて、山にワラビ採りに行くのに鉛筆を握りしめて行く人はあまりいないと思うので、この鉛筆は最初からAさんの手に握られていたのではなく、どこかに入れられていたのだろうと思う。

では、どこに入れられていたのか、というと、

Aさんは当日ジーパンをはいていたので、そのポケットの中にでも入れていたのだろうか、ということが思われたりするが、ポケットの中にペンを入れる人は、普通はあまりいないのだし、そもそもワラビ採りというのは「立ったりしゃがんだり」の動作を繰り返すので、ジーパンのポケットに鉛筆を入れていたとは考えにくく(危ない&動きにくい)、おそらくは、「ナップサックの中に入れていた」のではないかと想像された(Aさんは当日ナップサックを携帯)。


次に、「紙」を取り出したはずなのだが、「その紙はどこに入っていたのか」ということを考えてみると、まずメモを書くのに使用された「紙」は、Aさんのパート先である「いずみや(現イズミヤ)」のレシートだった(日付は5月21日付 ← 事件の2日前の日付)。

気になるのはそのレシートが
「事件2日前にAさんが自分で買い物をした時のレシート」
なのか、
「事件2日前に顧客が買い物をした時のレシートだが、Aさんがいずみやのパート従業員として当日~後日にその店用控えを入手していたもの」

なのかが伝えられていない点だった。(たぶん当時も、そんなことは報道されなかったと想像する)

仮に前者なら、Aさんがレシートを入手したのは事件の2日前(5月21日)ということになるから、その日から事件当日(5月23日)まで、2日間もジーパンのポケットに入れっぱなしにしていたとは若干考えにくいので、ワラビ採りの日にそのレシートを持っていたとすれば、ナップサックの中にでも入れていたのだろうか。

一方で後者なら、「事件当日を含む5月21日以降」に、何らかの理由でそのレシートの店用控えを入手し、これまた何らかの理由でジーパンのポケットに突っ込み、その状態でワラビ採りに出向いたことも考えられるが、真相はよくわからない。


いずれにしても、その紙(レシート)に文章を書くには、普通は

「紙を机~下敷きなど堅いモノの上に置く」

のだったが、山中でオワレ(追われ)ている状況では、机を用意できたとも考えにくく(山小屋などの机を利用した可能性もゼロではないとは思うが)、とはいえ「下敷き」を取り出し、その上で書いたのかというと、そもそもワラビ採りに下敷きを持って行くのかと、そう都合よく、ナップサックの中から下敷きまで出てくるものだろうかということを考えてみると、それは考えにくいんじゃないかと。

また、「オワレ(追われ)ている最中に下敷きまでしつらえて書いている風景」というのが想像しにくく、やはり、それは考えにくいんじゃないかなと。

そういうことで、おそらく被害者のAさんは

「左の手のひらの上に、直接レシートを置いて書いた」

のだろうと想像したい(右手が利き腕の場合)。


さて左の手のひらの上にレシートを置き、右手に鉛筆を構えたAさんは、書くべき文章(助けを求めるメッセージ)を考えた、と思う。

一瞬で考えることができたのかどうかはわからない。

「オワレている 

たすけて下さい 

この男の人わるい人」

この3行なので、考えるのは一瞬だったかもしれないし、数秒は考えたのかもしれないが、いずれにしても、ここでまたタイムラグがあったと思われた。


次にAさんは、心に浮かんだその文章を、レシート(の裏)に書いた。
3行を書き終えるのに、何秒かかったかはわからない。
わからないので、自分でも左の手のひらの上に薄手の紙を置き、右手に鉛筆をもって、同じ文章(オワレている~~)を書いてみた。

(2行目の「す」の字の書きなおしも、その通りに再現してみた。)
書くスピードは(自分的な)フルスピードでもなく、ゆっくりでもなく、「やや急ぎ気味」という感じのスピードだった。

自分の場合、この条件で、例の3行を書くのに「22秒」かかった。

下敷き無し、手のひらの上に直置きした薄手の紙に急ぎ書きする、という条件のもと、出来上がった文字は、普段の自分の字よりもはるかに乱れた。

(恥ずかしいので、文字の画像はアップしません。)


その他、Aさんがメモを書いた時の状況を考えてみると、まず

「この男の人わるい人」

というメモの文言から、追跡者は「男」だったと思われ、さらに、この「男」がAさんらを殺害した犯人その人だった場合、Aさんらの肉体に破壊的なダメージを与えて殺害していることを考えれば、肉体的に虚弱な男ではなく、むしろ、屈強な男が連想された。
なので、男がAさんらを追跡したスピードというのは、恐らく遅いものではなく、山道とはいえ、控えめに見て
「成人男性が平地を歩くスピード = 分速80メートル前後」
は出ていたものと推測された。


また、Aさんらが男に追われていた「道」の状況はどうだったのか(どんな道だったのか)、

ということを考えてみると、実際に現場を取材した数少ないレポートを総合すると、彼女らが逃げていた道というのは、おおむね次の3種類ではないかと思う。すなわち、


・「舗装され、車も通れる道(「野山」登山道入り口から徒歩15~20分のX地点まで)」

・「未舗装の山道(X地点から右折し、「野山」山頂に向かって北上する道。タケノコ栽培などのため、人の手はそこそこ入っている)」

・「獣道(遺体発見現場の直前20~30メートルは、草木の生い茂る獣道となっていた。この獣道のどん詰まりに小さく開けた場所があるらしく、そのあたりが遺体発見現場 ← 当時の週刊誌情報)」


Aさんらが追われていた道---メモを書いた道---は、上のどれかであると思われた。


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以上を総合すると、Aさんが男からの追跡を受けながら(追われながら)メモを書いたのだとすれば、その光景は、おおむね次のようだったかもしれない。つまり、


1.「Aさんらは山中で、悪い男による追跡を受け始めた」

2.「身の危険を感じたAさんは、”通りすがりの人が来たら渡そう”と思い、助けを求めるメモを書くことを(逃げながら)思いついた」

3.「背中からナップサックを降ろし、ひもを緩めて口を開け、中をまさぐって鉛筆を取り出した」

4.「再びナップサックに手を入れて、今度は紙を探したがそれがなかったので、慌ててジーパンのポケットをまさぐると、そこにレシートが入っていたので取り出した」

5.「そのレシートを左の手のひらの上に置き、右手に鉛筆を構え、一瞬考えたのちに書き始めた」

6.「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」という3行のメッセージを書いた。(2行目「す」の字は、間違えたので書き直した)

7.「書き終えたメモを右ポケットに入れた。(後にメモはクシャクシャの状態で、Aさんのジーパン右ポケット底から発見された)」

8.「ナップサックを背負いなおした(逃走再開)」


ちなみに、上の3~8までの一連の動作は何秒でできるのだろうか、

ということを、ナップサックを用意し、室内で、静止した状態で試してみると、自分の場合は「約40秒」が必要だった。

(左の手のひらの上に薄い紙片を置き、下敷き無しの状態、急ぎ気味で書いた。)
字はかなり歪むが、やはりこれは「薄手の紙」「下敷き無し」「急ぎ書き」という条件が大きい。


この「40秒」という数値については、


「どこに鉛筆があるのか」
「どこに紙があるのか」
「どんな文章を書くのか」


があらかじめ全てわかっている上での数値なので、何もわからない状態でやれば、もっと時間はかかると思う。


仮にAさんが路上に立ち止まってメモを書いた場合で、3~8までの一連の動作を40秒で終えたとすると、その間に男が進む距離は「約53メートル」と考えられた。(分速80メートルと仮定)

男が小走り(分速133メートル)で追っていた場合は、40秒の間に「約89メートル」進む。

山中なので、平地並みの全力疾走を一定時間維持するのは不可能とは思うが、仮に平地(の全力疾走)並みのスピードで追っていた場合(分速400メートルと仮定)、男は40秒の間に「約267メートル」進むのだった。


いずれにしても、路上で40秒も立ち止まってメモを書いていれば、その間に、追っ手の男は相当な距離を進むのであり、例えば、


長岡京ワラビ採り主婦殺人事件A


上のような状況の場合、Aさんには路上に立ち止まってメモを書く暇(いとま)などはなかったのではないか、と想像する。


ではAさんは、立ち止まってではなく、「歩きながら」あるいは「走りながら」メモを書いたのだろうか。


その点を具体的にイメージするべく、左の手のひらの上に薄手の紙片を置き、右手に鉛筆を持ったうえで、


1.「歩いている状態」
2.「走っている状態」


のそれぞれで、


「字が書けるものなのか」
「書けたとして、どんな字になるのか」


ということを試してみた。
山中で試せればベストだったが、今回はそれはできず、場所はアスファルトの歩道(やや上り坂)。

トライした文章は例のメモと同じく、「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」。


1の場合、やってみてまず感じたのは「怖い」ということで、正面から人が来ないことを確認してやっているので、書いている最中に人と衝突しないことは頭ではわかっていても、いざペン先に目線や意識を集中しながら足だけは前に繰り出していくとなると、無意識のうちに足がすくんでしまうのか、いつもより遅めのぎこちない歩き方になってしまった。

その状態で3行を書くことはできたが、文字の歪みは立ち止まって書いた時の比ではなく、ミミズの這ったような字となり、本来の自分の字とは、似ても似つかないものになった。

(やはり恥ずかしいので、画像はアップしません。)


次に2、同じアスファルトの坂道で、「小走り程度の速度」で走りながらトライしてみると、その難しさというのは歩きながらの比ではなく、もはや紙の上に鉛筆の先を這わせることすら難しく、文字にするのが困難だった。
かろうじて鉛筆の先が這った部分は、文字というよりは乱れた線のようになり、3行を書くどころではなく、
自分の場合は、「書けない」「筆記不能」と判断した。


「誰に追われるでもないアスファルトの歩道」という生ぬるい条件の下で、自分の場合は、上の体たらくだった。

一方で、実際にAさんが置かれていた状況というのは、不審者に追われ、道はアスファルトの歩道ではなく、おそらくは足元に注意を要したであろう、未舗装の山道と想像された。


そんな道を歩きながら(走りながら)、事前の練習もなしにぶっつけ本番で「助けを求めるメモ」を書いたのであれば、よほど字は乱れるだろうし、現に例のメモの筆跡を称して、


「書きなぐられたような筆跡」
「走り書きしたような乱れた筆跡」


という意味のことが言われることがあるが、しかし実際の筆跡をよく見てみると、


長岡京ワラビ採り主婦殺人事件C


特にこの赤く着色した部分などは、縦のラインにも乱れはなく、「達筆」とはいえないまでも、字間もゆったり目にとられており(しかもほぼ一定間隔)、それなりに丁寧な筆跡ではないかと思えるのだった。


しかも「山中で男に追われる」という絶体絶命の状況の中、


長岡京ワラビ採り殺人事件メモ8


「す」の字に意味不明な手を加え、あえてその横に正しい「す」の字を書き直すという几帳面さで、自分にはとても「書きなぐった」「走り書きした」という風には見えず、むしろ、


「精神的に落ち着いた状態で、下敷きをするか、机などの堅い台の上で書かれたのではないか??」


などと見えなくもないのだった。

(3行目が若干、空いたスペースに走り書きした感がなくもないが、この3行目にしたところで、極限状態の中で、いわゆる”ガクブル”しながら書いた筆跡に見えるかというと、私的には「?」なのだった。)


自分なりにあれこれ試してみた結論としては、この問題のメモについて、それがたとえ静止した状態で書かれたものであるにせよ、


「山中で不審者に追われている状況で、手のひらに紙片を乗せ、下敷き無しで、急ぎ書きしたもの」


とは考えにくく、ましてや上の条件に加えて、


「歩きながら」
「走りながら」


書いたものだとは思えない、


というのが、率直な感想なのだった。