1年以上、ご無沙汰を致しておりました。申し訳ありません。
先日、日本最強の広告代理店系列のシンクタンクと最高学府が共同でまとめた「日本人の情報行動調査」の調査結果のさわりを聞くセミナーを聴講しました。その中で「10代のPCネット離れと携帯電話の伸び悩み」のお話がありました。その調査の分析結果によると「10代のネット利用は携帯電話が中心で、これは親携帯電話のデジタルネイティブが誕生したためで、これは日本だけの顕著な傾向」とのことでした。
このような傾向になったのは「10代の若者たちは携帯電話の手軽さや機動性を評価しているから」との解説がありましたが、私はこれが大きな要因ではなく、「経済的な負担が増大したため」を加えるべきだと考えています。これまで携帯電話だけだったコミュニケーション・ツールが、スマートフォンやタブレットの登場で多様化し、それらの全てを手にして全てをネットに繋ぐと、通信料の基本料金だけで莫大な金額となり、とても負担できなくなるからです。そこで彼らは最も使い勝手の良いツールを一つだけでネットを利用するようになり、そこで真っ先にPCが外されることになります。PCでネットを利用する必要がある場合は、大学などのPCを使えばよいので問題はありません。従って「PCは使い勝手が悪いから」などと、機能的な問題だけをPC離れの原因とする分析結果にはすんなりと納得することができないのです。
このように技術面からの視点だけで論じられ易いのがデジタルの世界です。そのため往々にして本質的な問題が見過されます。どんなに技術が進歩しても、その技術を利用するのは人間です。人間は良くも悪くも得か損かで行動しますが、その典型となるのが経済的な視点の判断による行動ではないでしょうか。
アナリストが「分析する上で経済的な視点も重要」との認識は、充分に持っていますし、決しておろそかにしてはいません。しかし彼らの経済環境や知識の中に、10代の若者たちの経済状況や感覚はインプットされていないのでしょう。高給取りのアナリストは自分たちの経済感覚でデータを分析するため、結果として見落としてしまうのだと思います。先のセミナーの講師の先生は、後日、私がした指摘に「ハッとした」と言われ、見落としたことを認めておられました。
この経済感覚のズレは他の場合にも良く遭遇します。家庭の家計費の中で、通信費が占める割合が年々高まっています。そこでその状況を改善するために、「広告料で通信費を軽減するビジネスモデル」を開発し、特許申請をしました。この仕組みでは広告を出稿して貰わないと成立しないので、広告代理店の協力が不可欠です。しかし広告代理店の関係者の反応は「ユーザーは通信費が只でも、広告を見る煩わしさには我慢できないだろう。私は只でなくても早く繋がる方が良い」と、関心が薄いのです。今は広告料でコンテンツが無料になるサービスで溢れていますが、通信費が無料になるサービスはありません。通信料の問題で一般市民がいくら悩んでいても、通信料が会社負担の人や、個人で支払っていても高給取りの人たちには、広告は単に邪魔な存在になるだけなのでしょう。広告を見るくらいのことで毎月の通信料が只になるなら大歓迎と言う人たちは、学生を始めとして世の中には大勢いるのですが、彼らの常識の中にはないようです。
通信料を無料にしても、通信料は広告費で賄いますから、通信会社の収益が減ることはありません。しかし全ての通信会社に参加する訳ではないので、不参加の通信会社からは、単なる通信料金の価格破壊となってしまいます。このことが広告代理店にとっては大問題なのです。広告代理店が下手にこのようなコンソーシアムの設立に協力すると、大きな広告主である参加しない通信会社の扱いを失ってしまうことになりかねないからです。
とにかく世の中、思ったようには、中々うまくいかないものですね。
