宮崎県日南市沖で24日夕に漁船から転落し、自力で岸まで泳ぎ着いた地元漁師の山下善士(よしお)さん(71)。妻や友人が最悪の事態を想定するなか、どうやって岸にたどり着き、自宅まで無事に帰ることができたのか、朝日新聞記者に語った。
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妻の陽子さん(68)は福岡に住む長女を呼び出し、喪服の手配まで考え始めていた。捜索は25日未明に打ち切られ、海上保安部から「翌朝はダイバーを投入します」と告げられた。
自宅で待つ陽子さんのそばには、友人や漁師仲間が寄り添った。午前4時半、自宅にタクシーが着いた。裸足の男が降りてきて「タクシー代、払ってくれ」。
「幽霊が帰ってきた」。陽子さんは目を疑ったが、これまでの足取りを聞き、さらに驚かされた。
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24日午後4時半、海に転落した。自動操舵(そうだ)の船は港へぐんぐん進む。船に戻るのはあきらめ、遠くに見えた岸壁を目指した。冬用のチョッキ型救命胴衣を着ており、寒さと浮力の心配はなかった。空気を入れて浮き代わりにした長靴を右手に抱え、左手で水をかいた。疲れると仰向けになり、波に身を任せた。風が陸向きに吹いていたこともあり、約2時間でテトラポッドに着けた。「小潮だったから、運もよかった」
あまりの疲労にそのままその場で寝てしまった。どれくらい寝たかは覚えていないが、起きたら真っ暗。裸足で国道を歩き、車を止めようとしたが、誰も止まってくれなかった。
約3キロ離れたコンビニまで歩き、タクシーを呼んでもらった。25日午前4時すぎに帰宅した。「大変だったが、トライアスロンをしたと思えばいい。港に帰ってきた船も偉かった」
念のため病院で見てもらったら軽い肺炎だった。海を相手に50余年。大きな病気はしたことがない。「海に落ちても、慌てたらいかん。覚悟を決めんと」
確かに、海は慌てたら命に係わる。
何気に日南市南郷町だった件w
24日午後4時半ごろ、宮崎県の日南沖で漁師山下善士(よしお)さん(71)=日南市南郷町中村乙=が船から転落して、行方不明になった。宮崎海上保安部がヘリコプターで捜索する騒ぎとなったが、山下さんはすでに1時間かけて自力で岸に泳ぎ着いていた。その場で疲れて眠ってしまい、その後タクシーで帰宅したため、安否確認が遅れたという。
海保によると、山下さんは24日午前5時半ごろ、「祥陽丸」(1・3トン)に一人で乗り、目井津(めいつ)港を出港した。沖合約2・5キロでカサゴ漁をしている際、横波を受けて船から転落。連絡がとれなくなった南郷漁協が午後8時40分ごろ、海保に通報。午後10時50分ごろ、海保のヘリコプターが祥陽丸を発見したが、自動操舵で港に戻ってきた船は無人だった。
救命胴衣を着ていた山下さんは転落後、自力で海岸にたどり着き、そのまま寝てしまった。25日午前4時すぎにタクシーで帰宅し、「家に帰った」と漁協に連絡。無事が分かった。
海保は「高齢なのに自力で元気に戻ったのはすごい。みなさんも救命胴衣をつけて」と話している。(伊藤あずさ)
南郷のレジェンドですね。
