公立トップ校入試の前日の夕食時、ランちゃんの肘が湯呑みに当たって、落ちて、割れた。
パリーン!
マキちゃんによるとその時のランちゃんは涙目だったらしい。
そりゃそうだ。
入試前日に「落ちて粉々になる」なんて縁起でもないバイキンくん宇宙人くんおばけくん

わたしは自分も無駄に緊張して何枚か割っているので、(またですかー?)と思ったくらいだが、ランちゃんはその時から不安が拭えなくなってしまった。

出かける直前まで、
「数学が解ける気がしないー。図形に襲われる夢を見たー」
と見たこともない弱気な顔をしてるから、こちらまで不安になってきた。

「図形で迷ったら二等辺三角形を探せ!相似を探せ!」などあれこれ話し、結局は、
「気持ちで負けるな!」
と送り出した。

ところが試験は3時に終わったはずなのに、ランちゃんは5時過ぎても帰らなかった。
テストができなくてどこかで泣いてるんじゃないかと思ったら気が気ではなくなって、バス停まで何度も往復したり、主人にメールで愚痴ったり、マキちゃんに噛みついたり、イライラと過ごした。

たった1個の湯呑み・・・
こんなことで3年間の努力が無駄になるかもしれないの・・・?

ようやく帰ってきたのは6時前。
拍子抜けするほど明るい表情をしていた。
「友だちもわたしも疲れててさ。流れに乗って歩いたら違う駅に着いちゃって。そこから電車に乗ったら乗り換えの駅で降り損ねちゃって、反対側まで行っちゃったの〜」
なんじゃそりゃアセアセアセアセ

けれど、小学校時代は苦手だった同級生が、いつの間にか「友だち」になっていることに気づいて嬉しくなる。

「でも数学が満点だったよ!」
なにが"でも"なのかわからないが、その一言で胸がすーっと軽くなった。
校門で解答速報が配られるんです、早いですよね。

数学で気力を使い果たしたのか社会は8割弱しか取れなかったけど、他が9割超えてるので希望はある。

疲れた。
でも終わりました。

さっそくその夜からランちゃんにも夕食の手伝いを頼んだら、マキちゃんがとても嬉しそうに笑っていた。
次はマキちゃんの番だよん。
週末は入塾テストですよん。


p.s.
ホントに相似の三角形から解を導き出す問題が出たらしい。言ってみるもんだゲラゲラ