舞台は瀬戸内海の小島での３つの物語。

「海神／わだつみ」
末期癌の老人の元を訪れた不登校のひ孫とジイの物語。
死に行くジイからひ孫の優生へと命のバトンは渡された。
ジイの思いと、それをしっかり受け止めた優生の温かな物語でした。

「夕凪／ゆうなぎ」
高齢者の月島医師と志木看護師の物語。
診療所閉院を目前に月島は姿を消し、月島を追って小島に辿り着いた志木看護師。
人生と言う長い旅を振り返る月島に年齢を重ねるとはこう言うことなのかと。
長きに渡り仕事を支えてきた３０歳下の志木とは付かず離れずで、関わりの温度差を見せられた気がします。

「波光／はこう」
瀬戸内海の小島に住む高齢者の祖父の元を訪れた孫の零二は足に怪我を負い陸上競技を危ぶまれ目標を見失う中、知られざる祖父の人生の歩みを聞かされた。
次第に零二は心の再生へと向かって行く物語。

其々が若い者への生き様のバトル渡しのお話でした。
次第に人は欲を捨て、長い命の旅の回想の中に向かって行くのかもしれないなと。

力強くも静かな物語でした。

海とジイ／藤岡陽子