政子さんの涙…
いつものように政子さんと、芳夫さんのお部屋の掃除に行った。
やはり、芳夫さんは具合が悪いのか、パジャマのままでベッドで寝ていた。顔色も冴えない。
私は普段通りに部屋の片付けをして、芳夫さんの池の鯉にエサをやりに外に出た。帰ってみると、芳夫さんの部屋から、政子さんのシクシクと泣き声がする。二人で何か話をされたのだろうと、私は隣の部屋でそっと見守りました。政子さんが部屋を出てきて、私の胸にすがりつき少女のように、泣きじゃくった(T_T)
「どうしたの?」訪ねると、政子さんは、「そばにいても、私は何も役に立たない(涙)」と体を震わせて泣き続けた。癌と宣告された芳夫さんのちょっとしたお手伝いもできない芳夫さんが死んでしまったらどうしようと、今までガマンしてた不安が一気に溢れ出たのです。政子さんは、足も不自由で耳も遠い。思うようにお世話をできないと心が苦しくなったようです。
普段の政子さんは、89歳と言う年齢を感じさせないほど、好奇心旺盛で明るい人柄です。だから涙を流された姿に私はとても切なかった。
二人は夫婦ではありません。
どちらも、伴侶を亡くされて昔からの知り合いだった二人が、たまたまパートナーとして暮らし始めた矢先の芳夫さんの癌の発覚でした。
普段はダンディでオシャレな芳夫さん…86歳
良家のお嬢様で(旧)◯◯省にお勤めでキャリアウーマンだった政子さん…89歳とても品のある方です。
お互い、支えあって思いやる二人を見守る私は、いつも羨ましく思ってます。
政子さんの口癖は、「芳夫さん、私より1日だけでも長生きしてね」
芳夫さんは、「政子さんが死んだら僕は、絶食して自然に死に行き君を追いかけて行くからね」と…年を重ねてもこんな愛があるんだと…

明日から芳夫さんは入院です。
これからも私のお二人の見守りが続きます。